医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

臨床医はOSTEでどのようなフィードバック内容を扱うか?

What Feedback Content Do Clinical Teachers Address During OSTEs?

Published 7 December 2023 Volume 2023:14 Pages 1357—1367
Authors Lüchinger R , Coen M, Bréchet Bachmann AC, de Oliveira S, Richard-Lepouriel H, Junod Perron N

DOI https://doi.org/10.2147/AMEP.S423586

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DALL·Eによって生成された
 
 

要旨
目的

フィードバックの方法は、FDプログラムの中で広く教えられ、評価されている。このようなプログラムの一環として、臨床教員は客観的構造化教育セッション(OSTE)に参加することができ、その中で模擬研修医にさまざまなタスクについてフィードバックを行うよう求められる。研究の目的-これらのOSTEで提供されるフィードバックの内容を分析すること、-研修段階、医療分野、観察されるタスクの影響を評価すること、-臨床教員が扱うフィードバックの内容と、専門家が必須と認めた内容との整合性を評価すること。

方法

多方法による研究を実施した。5つの診療科の臨床医(N=89)が、6ヵ月間の研修プログラムで研修医にフィードバックを行うための研修を受けた。研修の前後に、コミュニケーション、専門職間、身体診察、手技を含む3つのOSTEステーションを実施した。フィードバックの内容を記述的に分析した。フィードバック内容の影響因子(すなわち、参加者のトレーニング段階、医療分野、扱った課題のタイプ)を評価するためにANOVA検定を適用した。それぞれのOSTEについて、3人の専門家によって必須とされた項目のうち、フィードバック中に臨床医が取り上げた項目の割合を分析した。
結果

317のフィードバックセッションを分析し、5388の項目をコード化した。フィードバックの内容分布は、目標内容(73%)、その他の臨床内容(20%)、学習方略(4%)、自己管理・その他(3%)であった。フィードバックは否定的なものが多かった(73%)。トレーニングの段階は扱う内容に影響を与えなかったが、観察された課題のトピックと臨床教師の専門性はわずかに影響を与えた。専門家が特定した内容とOSTE中に臨床教員が取り上げた内容との整合性は低かった(3~38%)。
結論

臨床医は、課題に応じて、否定的で的を絞ったフィードバックを行うことがほとんどである。取り組むべき主要な内容の選択における整合性の低さは顕著であり、臨床医が研修医のニーズや状況の優先順位よりも個人的な好みに応じて能力の要素を取り上げている可能性があるため、さらに調査する必要がある。

 

研究の背景
本研究は、研修医プログラムにおいてコンピテンシーに基づくカリキュラムの採用が増加し、強固な評価の枠組みとしてEPA(Entrustable Professional Activities)が使用されるようになったことを背景としている。フィードバック、特に形成的フィードバックは、臨床専門知識の学習と発達を促すために極めて重要であると認識されている。本書では、臨床教育におけるフィードバックの重要性と、この分野における研究の必要性について詳述する。

 

方法
様々な診療科の臨床教員が参加する多方法研究が実施された。各教員は、コミュニケーション、専門職間、身体検査、手技のいずれかに関わる課題に焦点を当てた3つのOSTEステーションを修了した。フィードバック内容を記述的に分析し、影響因子を評価するためにANOVA検定を適用した。また、フィードバックの内容と、専門家によって必須とされた項目を比較した。

 

分析結果
・フィードバックの内容分析

合計317のフィードバックセッションが分析され、5388のフィードバックがコード化された。フィードバックは主に「的を絞った内容」(73%)であり、タスクの特定の側面に焦点を当てたものであった。
否定的なフィードバックフィードバックの大部分(73%)は否定的な内容で、改善点や不足点を強調していた。

・トレーニング段階の影響

指導医のトレーニングの段階は、フィードバックの内容に大きな影響を与えないことがわかった。

・タスクと専門性の影響

観察された課題の種類と教師の医学的専門性は、フィードバック内容にわずかな影響を与えた。しかし、この影響は大きくない。
専門家が特定した内容との整合性:フィードバックの内容と、専門家パネルが必須と認定した項目との整合性は低かった(3%~38%)。これは、専門家が必須と考える内容と、フィードバック・セッションで実際に伝えられる内容にギャップがあることを示している。

 

考察
・否定的で課題指向のフィードバックへの注目

ほとんどのフィードバックが否定的で、的を絞ったものであったことから、臨床教師は、より広い教育目標や積極的な強化よりも、エラーの訂正や特定の課題遂行に重点を置いている可能性が示唆される。

・トレーニングの影響の欠如

フィードバックの内容に対するトレーニング段階からの有意な影響の欠如は、トレーニングがフィードバックを与えるための教師のアプローチを効果的に変化させなかったかもしれないことを示唆している。

・課題と専門性のわずかな影響

タスクと教師の専門性に基づくフィードバックのわずかな変化は、これらの要因が、フィードバックにおいて何が重要であるかについての教師の認識に影響を与える可能性があることを示唆している。

・必須内容との低い一致

専門家が特定した必須フィードバック項目との整合性が低いことが気になる。これは、臨床医が、より標準化された、ニーズに基づいたフィードバックへのアプローチよりも、個人的な好みや偏見を優先し、研修医が発達すべき重要な領域を見落としている可能性があることを示している。

・トレーニングとフィードバックの実践への示唆

これらの知見は、フィードバックを確立されたコンピテンシーと必須スキルに合わせることに焦点を当てた、臨床医のためのトレーニング改善の必要性を示唆している。これには、効果的なフィードバック技術に関するより包括的なトレーニングや、研修医の発達のニーズに対するより深い理解が含まれる。

限界
本研究は、さまざまな臨床作業や分野にわたるフィードバック内容を分析するための有効なグリッドがないなどの限界に直面した。OSTEにおける模擬研修医のパフォーマンスレベルは、フィードバック内容に影響を及ぼし、より否定的な側面に焦点を当てた可能性がある。本研究では、フィードバック内容の質を評価したり、選択された内容の背景にある理由を探ったりしていない。

可能な応用
この研究は、フィードバック内容と必須コンピテンシーとの間の整合性の必要性を強調し、臨床教師のためのトレーニングプログラムの開発に役立てることができる。また、フィードバック提供における背景と研修医のニーズを考慮することの重要性を強調している。