Academic Stressors and Sociodemographic Vulnerabilities Among Medical Students at the University of Ottawa
Land SA, Land HC, Linders JN, Julien A, Haykal KA、MedEdPublish 2026, 16:4、https://doi.org/10.12688/mep.21466.2
https://mededpublish.org/articles/16-4/v2?src=rss

研究の概要
デザインと対象
2024年5〜8月にSurveyMonkeyを用いたオンライン調査を実施し、MD学生およびMD/PhD学生を対象とした。有効回答は60名(完答率85.7%)。回答率は約10.4%と低く、解釈には注意が必要である。
測定尺度
MSSQは40項目からなり、以下の6領域を測定する。
- ARS(学習内容・試験・ワークロードなど学業関連ストレス)
- IRS(対人・個人内ストレス)
- TLRS(教授・学習関連ストレス)
- SRS(社会的ストレス)
- DRS(意欲・目標関連ストレス)
- GARS(グループ活動関連ストレス)
各項目は0〜4点の5件法で評定し、本研究でのCronbach's α = 0.951と内的一貫性は高かった。
主な結果
全体的なストレスレベル
MSSQ総合スコアの平均は2.63±0.79であり、「中等度」のストレスに相当した。
最も高いストレス源(上位項目)
「学習すべき内容量の多さ」(平均2.62)、「高い自己期待・成績へのプレッシャー」(平均2.60)、「ワークロード」「試験・テスト」(いずれも平均2.43)が上位を占め、学業関連ストレス(ARS)が最も顕著であった。また「家族・友人と過ごす時間の不足」「臨床スキル練習の不足」も高く評定された。
領域別の最高スコアを示した社会人口学的グループ
| 領域 | 全体平均 | 最高スコアグループ | p値 |
|---|---|---|---|
| ARS | 1.99 | 男性学生 | 0.006 |
| TLRS | 1.39 | 家族と同居 | 0.005 |
| GARS | 1.28 | 障害のある学生 | 0.034 |
主要な知見
臨床前期(Pre-clerkship)学生は臨床期(Clerkship)学生より多くの領域でストレスが高かった(「成績への不安」p=0.03、「スキル練習不足」p<0.01、「期待される内容への不確かさ」p<0.01など)。
男性学生が女性学生よりもARSスコアが有意に高く(p=0.006)、試験関連ストレスや復習時間不足のストレスも高かった(p=0.002)。これは女性に高いストレスを示す既存のエビデンスと相反する結果であり、著者らは本研究での男性の過剰代表(83.3%)がサンプリングバイアスを反映している可能性を指摘している。
家族と同居している学生はTLRS(教授・学習関連ストレス)が有意に高く(p=0.005)、家庭からの学業プレッシャーや学習環境の問題が背景として考えられる。
障害のある学生はグループ活動関連ストレス(GARS)が有意に高く(p=0.034)、合理的配慮取得の負担や他者からの評価への不安が影響していると推察される。
一方、民族的背景・LGBTQ2S+・経済的要因・地理的出身については有意差は認められなかった。
医学教育への示唆
この研究が示すのは、ストレスの根源が個人の「弱さ」にあるのではなく、カリキュラム構造そのものにあるという点である。以下のような教育制度・カリキュラムレベルの対応が提言されている。
ストレスが高い全学生を対象とした普遍的支援として、時間管理・試験対策ワークショップ、評価基準の透明化、学習コーチングへのアクセス拡充、カリキュラムにおける学習量・評価頻度の見直し、縦断的ウェルビーイング教育の組み込みが有効と考えられる。
脆弱なグループへの的を絞った支援として、臨床前期学生向けのピアメンタリングプログラム、障害学生へのプロアクティブなアクセシビリティ支援とスティグマのない相談窓口、家族同居学生への学習環境整備が挙げられる。
また、MSSQが捉えきれないマイクロアグレッション・言語的ストレス・隠れたカリキュラムの影響については、混合研究法による追加検討が必要である。
研究の限界
単一大学・横断研究・小サンプル(n=60)・低回答率(10.4%)・男性の過剰代表・自己報告バイアスなど、解釈上の限界は多い。ただし、カナダの二言語医学教育環境においてMSSQを用いた初めての研究として、その先駆的意義は大きい。




