Effectiveness of game-based learning of anesthetic drugs in anesthesiology residents: a pilot study
Santi Anchalee, Chanya Deekiatphaiboon, Sumidtra Prathep, Wilasinee Jitpakdee
BMC Medical Education 2026;26:1700
https://doi.org/10.1186/s12909-026-10011-5

背景
タイのPrince of Songkla大学麻酔科は、コンピテンシー基盤型の研修カリキュラムを採用している。臨床薬理や全身麻酔の基本原理は、今も1年目前半の講義で教えている。筆者らによれば、講義で得た知識を臨床に結びつけられない専攻医がいる。シリアスゲームは学習者のエンゲージメントと動機づけを高めるとされ、Happy FamilyやGridlockEDのようなカード・ボードゲームも医学教育で使われてきた。Edwardsらのスコーピングレビューは、アナログのシリアスゲームについて追加研究が必要だとしている。これを受けて筆者らはカードゲーム「Basic Pharmacology for Anesthesia」を作り、1〜3年目の専攻医で知識の向上と満足度を評価した。
方法

対象は麻酔科専攻医19名。全員から同意を取得し、倫理委員会の承認を得ている
カードは55枚で、11薬剤×5枚の構成。対象薬剤はpropofol、thiopental、ketamine、midazolam、etomidate、cisatracurium、rocuronium、succinylcholine、sevoflurane、desflurane、nitrous oxide
1薬剤の5枚は、薬剤名、用量、作用発現と持続時間、禁忌と副作用、代謝または薬理をそれぞれ扱う
薬剤は「自施設で使えること」と「タイ国内で一般的に使われること」を基準に選んだ。オピオイドと局所麻酔薬は、プレイ時間を短くするため今回は外し、第2段階で扱う予定
内容は筆頭著者が作成し、麻酔科専門医である共著者が承認した
ルール:3〜8人でプレイし、各自に5枚を配る。手札から1枚を捨てて時計回りに次の人へ渡し、山札から1枚引く。次の人は、渡された札を取るか山札から引くかを選び、1枚捨てる。1薬剤の5枚を揃えた人が勝者となり、そのセットを他の参加者に共有する。残りが2人になるまで続け、最後に勝者を1人決める
実施は2024年2月7日の1回のみ。介入の詳細はTIDieRに沿って報告されている
評価には同一の短答記述式テストを使い、ゲーム前と直後に実施した。満点は20点で、内訳は導入薬8点、揮発性麻酔薬4点、筋弛緩薬8点。作成者は麻酔科専門医3名。回答はゲームに含まれる11薬剤に限定させた
満足度は6項目の5段階リッカート尺度で測り、自由記述はテーマ別に分類した
サンプルサイズは、口唇口蓋裂治療を扱ったシリアスゲーム研究(医学生対象、17点満点で12.23→14.43、SD 1.66)を参照し、単一母平均の検定として算出した。結果はn=4.46で、必要数を5とした
解析はWilcoxon符号付順位検定、R 4.3.3を使用
結果
参加者の内訳は1年目8名(42.1%)、2年目4名(21.1%)、3年目7名(36.8%)。男性は8名(42.1%)
平均(SD)の前後比較は以下のとおりで、いずれもp<0.001
-
- 導入薬:5.00(1.18)→7.47(0.66)
- 揮発性麻酔薬:2.59(0.69)→3.92(0.25)
- 筋弛緩薬:6.67(0.79)→7.51(0.54)
- 合計:14.26(1.55)→18.91(1.05)
- 満足度の平均(SD)
- 得られた知識:4.84(0.37)
- 臨床への応用可能性:4.95(0.23)
- 形式の適切さ:4.84(0.37)
- 難易度の適切さ:4.68(0.48)
- カード枚数の適切さ:4.42(0.69)
- 全体満足度:4.84(0.37)
- 合計:28.58(1.98)/30点
- 自由記述で出た改善案と指摘
- 1回あたりの人数を制限する
- カードの内容を全員に見せる
- 絵柄とデータを対応させる
- 文字が小さい、カードが薄い、サイズが大きすぎて扱いにくい
考察・結論
知識の向上幅は他のシリアスゲーム研究と一致するとし、例として薬理カードゲームのMuthiyanらの報告を挙げている。1年目の関連講義は8月で、研究は2月だった。講義から間もないのにプレテストが低かったことから、ゲームは復習と知識の補強に役立ちうるとしている。3年目の上昇については、基礎概念を忘れていた可能性を挙げた。
プレ・ポストの得点が学年間で同程度だったことについては、従来の講義では知識が十分に定着しないことを示唆すると解釈している。理由として2つの可能性を挙げる。1つは受講講義数の差で、1年目31コマ、2年目11コマ、3年目13コマ。もう1つは、1年目が基礎中心で2・3年目は応用中心という講義内容の違いである。
- 本研究はゲーミフィケーションではなく、ゲーム自体で学ぶシリアスゲームである
- 簡便で低コストなので、資源の限られた環境で特に有用かもしれない
- デジタルゲームより開発期間が短いため、カード形式を選んだ
結論
「カードゲームによるゲーム学習は麻酔薬の知識を効果的に改善しうる」というもので、高い満足度とも関連していた。今後はエンゲージメントの測定や従来法との比較が必要としている。
限界
本文には次の記載がある。
- 対象が単施設の麻酔科専攻医に限られ、一般化可能性に制約がある
- 時間的制約があり、評価はゲーム直後のみで短期記憶しか測っておらず、長期保持は未評価
- 短答式テストでは、ゲームで得た知識を十分に捉えきれない可能性がある
- 対象薬剤を自施設で一般的な薬剤に絞り、他の導入薬、筋弛緩薬、揮発性麻酔薬は含めていない
考察では、テストの一部に別解がありうるという妥当性の問題と、講義群との比較対照がないことも挙げている。





