医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。最近はyoutubeも

オタワ大学医学部学生における学業上のストレス要因と社会人口統計学的脆弱性

Academic Stressors and Sociodemographic Vulnerabilities Among Medical Students at the University of Ottawa

Land SA, Land HC, Linders JN, Julien A, Haykal KA、MedEdPublish 2026, 16:4、https://doi.org/10.12688/mep.21466.2

https://mededpublish.org/articles/16-4/v2?src=rss


研究の概要

デザインと対象

2024年5〜8月にSurveyMonkeyを用いたオンライン調査を実施し、MD学生およびMD/PhD学生を対象とした。有効回答は60名(完答率85.7%)。回答率は約10.4%と低く、解釈には注意が必要である。

測定尺度

MSSQは40項目からなり、以下の6領域を測定する。

  • ARS(学習内容・試験・ワークロードなど学業関連ストレス)
  • IRS(対人・個人内ストレス)
  • TLRS(教授・学習関連ストレス)
  • SRS(社会的ストレス)
  • DRS(意欲・目標関連ストレス)
  • GARS(グループ活動関連ストレス)

各項目は0〜4点の5件法で評定し、本研究でのCronbach's α = 0.951と内的一貫性は高かった。


主な結果

全体的なストレスレベル

MSSQ総合スコアの平均は2.63±0.79であり、「中等度」のストレスに相当した。

最も高いストレス源(上位項目)

「学習すべき内容量の多さ」(平均2.62)、「高い自己期待・成績へのプレッシャー」(平均2.60)、「ワークロード」「試験・テスト」(いずれも平均2.43)が上位を占め、学業関連ストレス(ARS)が最も顕著であった。また「家族・友人と過ごす時間の不足」「臨床スキル練習の不足」も高く評定された。

領域別の最高スコアを示した社会人口学的グループ

領域 全体平均 最高スコアグループ p値
ARS 1.99 男性学生 0.006
TLRS 1.39 家族と同居 0.005
GARS 1.28 障害のある学生 0.034

主要な知見

臨床前期(Pre-clerkship)学生は臨床期(Clerkship)学生より多くの領域でストレスが高かった(「成績への不安」p=0.03、「スキル練習不足」p<0.01、「期待される内容への不確かさ」p<0.01など)。

男性学生が女性学生よりもARSスコアが有意に高く(p=0.006)、試験関連ストレスや復習時間不足のストレスも高かった(p=0.002)。これは女性に高いストレスを示す既存のエビデンスと相反する結果であり、著者らは本研究での男性の過剰代表(83.3%)がサンプリングバイアスを反映している可能性を指摘している。

家族と同居している学生はTLRS(教授・学習関連ストレス)が有意に高く(p=0.005)、家庭からの学業プレッシャーや学習環境の問題が背景として考えられる。

障害のある学生はグループ活動関連ストレス(GARS)が有意に高く(p=0.034)、合理的配慮取得の負担や他者からの評価への不安が影響していると推察される。

一方、民族的背景・LGBTQ2S+・経済的要因・地理的出身については有意差は認められなかった。


医学教育への示唆

この研究が示すのは、ストレスの根源が個人の「弱さ」にあるのではなく、カリキュラム構造そのものにあるという点である。以下のような教育制度・カリキュラムレベルの対応が提言されている。

ストレスが高い全学生を対象とした普遍的支援として、時間管理・試験対策ワークショップ、評価基準の透明化、学習コーチングへのアクセス拡充、カリキュラムにおける学習量・評価頻度の見直し、縦断的ウェルビーイング教育の組み込みが有効と考えられる。

脆弱なグループへの的を絞った支援として、臨床前期学生向けのピアメンタリングプログラム、障害学生へのプロアクティブなアクセシビリティ支援とスティグマのない相談窓口、家族同居学生への学習環境整備が挙げられる。

また、MSSQが捉えきれないマイクロアグレッション・言語的ストレス・隠れたカリキュラムの影響については、混合研究法による追加検討が必要である。


研究の限界

単一大学・横断研究・小サンプル(n=60)・低回答率(10.4%)・男性の過剰代表・自己報告バイアスなど、解釈上の限界は多い。ただし、カナダの二言語医学教育環境においてMSSQを用いた初めての研究として、その先駆的意義は大きい。

EPAが研修医の基本的心理欲求を阻害するとき:自己決定理論からみた質的事例研究

When using entrustable professional activities thwarts basic psychological needs: A case study of residents' experience.

Phaneuf JC, Sehlbach C, Gauvin-Morin A, Slimani O, Walsh CM, Heeneman S. 

Medical Teacher. 2026. DOI: 10.1080/0142159X.2026.2649217

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/0142159X.2026.2649217?af=R#abstract

 

背景と目的

EPA(Entrustable Professional Activities/信頼可能な専門的活動)は、コンピテンシーを日常臨床と結びつけ、研修医の専門職としての成長を支えることを意図して導入された。しかし実装の現場では、文書化の負担や教育的価値の乏しさが繰り返し指摘されてきた。本研究は自己決定理論(Self-Determination Theory: SDT)を枠組みとし、研修医がEPAを「自律性(autonomy)」「有能感(competence)」「関係性(relatedness)」という3つの基本的心理欲求との関係でどう経験しているかを検討したものである。これらの欲求は、満たされれば内発的動機づけと成長を促すが、阻害されれば動機づけが外発的になり、ウェルビーイングが損なわれるとされる。

方法

カナダのフランス語圏大学の内科レジデンシープログラム(RCPSCのCompetence by Design下、専門特化型のRC-EPAを運用)を対象とした器具的事例研究(instrumental case study)である。14名の研修医に半構造化面接を実施し、Braun & Clarkeの6段階テーマ分析を用いた。SDTを解釈の枠組みとして、コードからテーマを構築した。研究チームはプログラム内部者(競合委員会メンバー・現役研修医)と外部研究者を組み合わせ、リフレクシビティに配慮している。

結果:4つのテーマ

分析から、現行のRC-EPA運用が研修医の自律性を主に制約し、有能感の発達への支援は限定的で、関係性には複雑な影響を及ぼしていることが示された。

文書化の至上命令(A Documentation Imperative)

観察記録を規定数集めることへの外的圧力が自律性を制約し、形成的フィードバックを遠ざけた。ある研修医は「達成すべきは20のRC-EPA」ではなく「やるべき200のEPA」があると語った(内科では20のRC-EPAに対し計162の観察記録が要求される)。臨床能力が高くても記録数が足りなければ「進捗が遅れている」と評価される。結果として研修医は、学習ニーズではなく「カウントされる記録を確保する」ことを基準に、評価を依頼する相手やタイミングを戦略的に選ぶようになった。

束の間の収束(Fleeting Convergences)

RC-EPAの手続きと実際の能力発達は概ね別々の軌道を走り、両者の一致は限定的で文脈依存的であった。研修医はEPAを「埋めなくても自分は同じ場所にいた」「時を記録する証人ではあっても、何かを達成させる道具ではない」と評した。真の成長は、症例の振り返りや患者との対話など別の場で生じていた。手技系EPAは観察点が明確で評価しやすい一方、認知的・縦断的なEPA(複雑な急性病態の評価・診断・管理など)は同じ「観察と記入」モデルに馴染まなかった。

電子的障壁(Electronic Barriers)

電子文書化のプロセスが、教育的パートナーシップであるべき指導関係を事務的取引へと変質させた。研修医は観察を依頼することで指導医に「余計な仕事を増やす」負担になっていると感じ、評価への疑問があっても電子プラットフォーム上では対話の余地がなかった。これは関係性を最も強く阻害し、同時に自律性も制約していた。

つなぐ重荷(A Binding Burden)

共有された事務的苦労が、逆説的に研修医間の連帯を生んだ。ただしそれは協働学習ではなく「共に切り抜ける」ことを中心としたものだった。「あの指導医には頼むな」といった情報が回り、効率よく記録を集められる相手に依頼が集中する。先輩研修医による記入の手伝いも、時に「友人が好意で埋めた中身の薄いもの」となり、本来のフィードバックを迂回させた。仲間との関係は支えにはなったが、自律性と有能感への制約をむしろ強化していた。

考察と結論

著者らはVansteenkisteとRyanの比喩を引き、能力支援の「受動的な失敗」と、自律性・関係性の「能動的な阻害」を区別する。水を与えられない植物は枯れるが、塩水を与えられた植物はより早く萎れる—現行のEPA運用は後者に近い側面を持つ。総じて、RC-EPAは「信頼を委ねるべき専門的活動」から「戦略的に集めるべき評価フォーム」へとドリフト(drift)しており、これが基本的心理欲求を阻害していた。

実践への示唆として、課題は同一レベルに発生しているわけではない点が重要である。観察数の多さや達成志向の言語、多様な活動への画一的な「観察・記入」モデルは国家レベルの枠組みに埋め込まれている一方、電子プラットフォームや進捗メッセージ、非同期フィードバックは地域の運用上の選択を反映している。したがって両レベルでの対応が必要となる。文書化偏重からの脱却、研修医が主体性を持つ学習ポートフォリオの共同構築、そして能力委員会の議論を「記録の追跡」から「信頼に真に重要な資質(能力・誠実さ・信頼性・謙虚さ・主体性)の探究」へ転換することが提案されている。

限界として、単一施設・カナダ内科の事例であること、要求観察数が国際的実装と異なりうること、フランス語面接の翻訳に伴うニュアンスの問題などが挙げられている。

医学教育におけるラーニングコミュニティ:帰属意識・メンターシップ・専門職アイデンティティを育む縦断的構造

Learning Communities in Medical Education: Impact, Integration, and Best Practices

Calvin L. Gruss, William B. Cutrer, Amy E. Fleming, Kendra Parekh, Elizabeth Ann Yakes、Medical Science Educator、https://doi.org/10.1007/s40670-026-02776-7

link.springer.com

 

はじめに

医学部教育において、学生のウェルビーイング・専門職アイデンティティ形成(PIF)・臨床スキル発達をいかに支援するかは、世界共通の課題である。そのひとつの解として注目されているのがラーニングコミュニティ(Learning Communities: LCs)だ。

本論文は、LCの構造・エビデンス・実装戦略を包括的にまとめたモノグラフであり、ヴァンダービルト大学医学部(VUSM)の「Colleges」プログラムを実例として提示している。


ラーニングコミュニティとは何か

LCとは、少人数の学生コホートと専任教員を縦断的に組み合わせた、意図的に設計された学習・支援構造である。米国の医学部の約半数がすでに公式なLC構造を持ち、その数は増加傾向にある。

LCはLave & Wengerの「実践共同体(Communities of Practice)」理論を基盤とし、Cruessらによって医学教育に応用されたフレームワークに沿って機能する。学習者は共通の目的(domain)を持ち、仲間・教員とともにコミュニティ(community)を形成し、医師として必要なスキルと態度(practice)を習得していく。


3つのモデルと共通設計要素

国内調査によれば、LCには主に3つのモデルが存在する(しばしば重複する)。

専門職能開発モデルはアドバイジング・メンタリング・コーチングを中心とし、臨床スキルや医師像の縦断的カリキュラムと連動する。

ウェルビーイング・統合モデルはウェルネスプログラムや移行期支援、ヘルプシーキングの正常化に焦点を当てる。

コミュニティ・アイデンティティモデルは大学のハウス制度に類似し、帰属意識・垂直統合・課外活動を重視する。

高機能なLCに共通する設計要素として、定期的な接触と継続性、多面的なプログラム編成、ファカルティ・ディベロップメント(FD)と正当な評価、アセスメントシステムとの統合、ピアメンタリングを含む垂直統合、そしてデータに基づく継続的改善が挙げられる。


LCの効果:何が変わるのか

学習環境・アドバイジング・メンタリング

LCへの参加は、学習環境評価やアドバイジングへのアクセスを有意に改善することが複数機関研究で示されている。教員との緊密な関係は、いわゆる「隠れたカリキュラム」—日常的なやりとりを通じて伝わる専門職的価値観と行動規範—を通じたPIFを支援する。

ウェルビーイングとコミュニティ感覚

LCへの参加度が高い学生は、バーンアウトが低く、生活の質と共感性が高いことが報告されている。また、Pass/Fail評価への移行や接触時間の最適化といったカリキュラム改革と組み合わせることで、学生のメンタルヘルスが改善することも示されている。

LC参加はファカルティ側にも恩恵をもたらす。縦断的なLC参加に携わった教員は、職業的満足度の向上・学生や同僚とのつながりの強化・教育への意義感の再生が報告されており、教員の定着とバイタリティにも貢献しうる。

学業・臨床スキル発達

臨床スキル教育の早期導入はクラークシップ開始時の学生の自信を高め、LCに基づく前臨床期臨床スキルプログラムはクラークシップ成績の改善とも関連する。継続的なコーチングとフィードバックというLCの特徴が、コンピテンシー習得を長期的に強化するという見方と一致している。


ケーススタディ:ヴァンダービルト大学医学部(VUSM)の「Colleges」

VUSMは2007年にCollegeプログラムを導入した。4つのCollegeが縦断的なメンターシップ・コミュニティ・省察の場を提供し、全4年間にわたって学生の成長を支える。

入学時に全学生はソーティングセレモニーで4つのCollegeのいずれかに配属され、約25名の安定したコホートと2名の専任College Mentorを持つ。このメンターペアは同コホートと4年間継続して関わり、1年次学生には同じCollegeの2年次学生がピアメンターとして配置される。コホートサイズの25名は、多様な視点を維持しながらも心理的安全性を確保できる規模として意図的に設計されたものである。

1年次のCollege科目は、サーバントリーダーシップ・医療の人文的側面・臨床倫理・メタ認知という4つのテーマを軸に構成され、週次のグループセッションでは専門家の30分レクチャーに続き90分のスモールグループ討議が行われる。

縦断的な評価データ(AY2016-17〜AY2023-24)では、1年次コースの総合評価は概ね3.75〜4.07/5で安定しており、AY2023-24では88%の学生がクラークシップでCollegeで培ったスキルを「ときどき」または「しばしば」活用したと回答した。

ファカルティ・ディベロップメント

College MentorsはFTE(専任換算)による保護時間を有し、年間を通じた体系的なFDカリキュラムに参加する。内容は小グループファシリテーション・コーチングスキル・レースとアイデンティティに関する討議ファシリテーションなど多岐にわたる。

ポートフォリオコーチングプログラムとの補完関係

Collegeプログラムとは別に、2013年に導入されたPortfolio Coaching Programがコンピテンシーに基づく個別反省・目標設定を担う。College Mentorsはアセスメントデータへのアクセスを持たず、評価から独立した関係性の中で帰属意識とPIFを育てる。一方、Portfolio CoachesはアセスメントデータをもとにフィードバックとLCMEスタンダード9.7(形成的評価)への対応を担う。この役割の明確な分離が両プログラムの質と信頼性を支えている。


実装ガイド:8ステップと落とし穴

著者らは新規・既存プログラムを対象に以下の段階的ガイドを提示している。

  1. 目的とアウトカムの定義:目標があいまいだと評価が困難になる
  2. 構造モデルの選択:制度的文脈に合わない硬直したモデルは機能しない
  3. 教員の確保と準備:役割が評価されず過重になると離職・バーンアウトが生じる
  4. アセスメントとの統合:付け足し的な位置づけではLCの価値が失われる
  5. LCカリキュラムの設計:目標が不明確だと社会的イベント化または過度の講義形式に陥る
  6. ウェルネス支援の組み込み:任意扱いにするとインパクトが薄れる
  7. 時間と空間の確保:スケジュールの不一致は継続性を損なう
  8. 評価と継続的改善:データを収集しても活用しなければ信頼性と勢いが失われる

今後の研究課題

今後は学生の主観的評価を超え、臨床パフォーマンス・進級・プロフェッショナリズムマイルストーン・専攻医マッチングといったアウトカムへの効果検証が求められる。複数機関研究による一般化可能なエビデンスの蓄積、コーチング・帰属感・構造的省察の作用機序の解明、多様な学習者への包括的メンタリングのベストプラクティス探索、そして卒業生への追跡調査が優先課題として挙げられている。


まとめ

よく設計されたLCは、帰属意識・メンターシップ・PIFを、全教育フェーズにわたる一貫した関係性・省察的対話・カリキュラムスレッドを通じて育む。VUSMのCollegesとPortfolio Coaching Programの統合モデルは、関係中心のメンタリングとデータ駆動型コーチングを補完的に組み合わせた好例である。

全コホート型縦断統合クラークシップ(LIC)の導入──ニューカッスル大学の6つの実践的教訓

How to Implement a Full Cohort Longitudinal Integrated Clerkship.

Sudlow M, Alberti H, Paes P. 

The Clinical Teacher. 2026;23:e70422.

https://asmepublications.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/tct.70422?af=R

背景

縦断統合クラークシップ(LIC)は、複数の専門領域を長期間にわたり同時並行で交互に学ぶ設計であり、順次配置型の従来型ブロックローテーション(TBR)とは対照的である。指導医や患者との関係が継続することで、個別支援と患者中心の診療が促進される。LICは学生の学業成績、職業的アイデンティティ、指導医の教育経験、患者ケアのいずれにも好影響を与えることが示されている。しかし多くの医学部はLICを一部の学生にしか提供しておらず、より公平に恩恵を広げるには全コホートへの拡大が必要である。

ニューカッスル大学は5年制MBBSの4学年(従来は臨床実習が乏しく臨床技能の停滞が見られた学年)に、約350名全員を対象とする並行ストリーム型LICを2020–2021年に導入した。期間は8か月で、急性・集中治療、内科、待機手術、総合診療を網羅する。以下は5年間の運用から得た主要な教訓である。

6つの教訓

1. 新たな実習機会を最大限活用する

LIC設計により、TBRでは大集団に対応できなかった外来・デイケア・地域などの個別実習を多数活用できる。飽和した病棟以外に実習の場が広がり、慢性疾患の地域管理という従来欠けていた経験を提供できる。一方で、英国では研修医が手薄なこうした場での指導には、より上級で長期的なスタッフの新規確保が必要となる。

2. 上級指導医を増やし研修する

LICはTBRより多くの指導医を要する。継続性を担保するため、短期ローテーションの研修医ではなく長期勤務の上級スタッフが配置監督者となる。総合診療医にとっては自然な形だが、病院勤務の指導医には説得と研修が必要であった。「自分の専門外を教えられるか」「学生が専門固有の能力を取りこぼすのでは」という不安に対し、学部教育の核は全専門に共通する診察・推論・意思決定の技能と態度であると説明する場を設けた。各病院の教育リーダーを起点にした重点的研修と、広く薄い対象向けのオンライン・短時間研修を組み合わせて対応した。

3. コミュニティを構築する

個々の学生が個々の上級医のもとで外来・地域実習を行うため、逆説的に多くの学生が孤立を感じた。大集団で動くTBRより、他の学生と会う機会も共有体験も少ないためである。対策として、指導医に学生を診療チームへ積極的に統合してもらい、隔週で8〜10名のチュートリアルグループを設けて経験の共有と振り返り、異なる現場間の共通点の抽出を促した。

4. 評価を整合させる

全コホート型LICでは、並行するTBRコホートに合わせる必要がないため評価を再設計できる。専門ごとのブロック末試験は小規模LICの学生には不利になりがちだが、全コホートではその制約から解放され、専門非依存の診察・推論・意思決定の技能へ評価の軸を移せる。患者との診察観察に基づく頻回のプログラム評価を年間を通じて実施し、累積的に総括的でありながら形成的フィードバックも与える。想起型の筆記試験は全員が経験を終えるLIC末にのみ行う。

5. 事務・支援体制を強化する

指導医の確保と学生の時間割編成は毎年の大きな事務的課題である。均質な大集団の移動が、個別の時間割を持つ個々の学生に置き換わるため複雑性が増す。ブロック制では各科内で調整できたが、LICでは一部門の変更が他のすべてに波及するため中央調整が不可欠となる。指導医の予定変更や休暇、相性の悪いペアの調整、実習に不慣れな学生への支援など、年間を通じた負担が続く。技術的解決が有効な部分もあるが、関係維持と妥協の調整には人的介入がしばしば必要である。

6. 「望ましい困難」を見越す

複数科目を同時に学ぶことはブロック制より難しく、学生には効果が低く感じられる。この「望ましい困難(desirable difficulty)」こそが交互学習が優れた学習を生む仕組みであり、LICに本質的なものである。「望ましい」とは最終的な学習成果を指すのであって、困難を経験している学生にとって心地よいわけではない。学生が選抜されていない全コホートでは、不安を感じる割合が大きくなりやすい。導入時の丁寧なオリエンテーションと年間を通じた継続的な周知で期待値を調整した。評価アンケートにもこの困難が反映されるため、コホート・個人の両レベルで慎重な対応が要る。学生の困難を軽んじることなく、しかし困難から生じる長期的利益を損なわない形で否定的フィードバックに応じる準備が必要である。なお、支援が必要な学生と、「支援」がかえって長期目標を損なう学生とを見分ける難しさにも留意したい。

結論

著者らは小規模LICではなく全コホートへ直接移行した。faculty確保・研修、複雑なスケジューリング、コミュニティ構築といった既知の課題に加え、未活用だった臨床領域への実習拡大と評価の再整合が全コホートで特に有益であった。一方、選抜されていない学生からの否定的反応への対応は、全コホート実装で増幅された予期せぬ課題であった。LICの恩恵をより広く公平に実現するには、全コホートへの拡大が不可欠だと結論づけている。

外科ローテーションにおける「描く」という行為の教育的意義

Colouring Inside the Lines: Why Medical Students Should Be Encouraged to Draw More in Surgical Rotations

Syed Abbas Moazzam Kazmi, Saulat Hasnain Fatimi, Hamdan Ahmed Pasha, The Clinical Teacher, 2026, https://doi.org/10.1111/tct.70451

https://asmepublications.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/tct.70451?af=R

 

はじめに

外科系のローテーションでは、解剖学的知識を「見る」ことと「理解する」ことの間に大きなギャップが存在する。アトラスや手術ビデオ、シミュレーションといった視覚教材は充実してきたが、それらはしばしば受動的な学習に終始してしまう。今回紹介する論文は、こうした受動的学習の限界に対して、医学生自身が術後に短時間のスケッチを描くという、極めてシンプルかつ低コストな方法を提案するViewpoint articleである。

筆者(第一著者)は、心臓胸部外科および一般外科のローテーション中に、執刀後に2分程度の「サムネイル」スケッチを描く習慣を始めた。最初は単に集中力を維持するための工夫だったが、これが術野の解剖をどう見るかを根本的に変えることになったという。教科書の図譜のように整然とした構造ではなく、層状で動的かつ「乱雑」な実際の術野を、自分の目で再構成する経験そのものが学習だったと振り返っている。

なぜ描くことが学習に寄与するのか

解剖学を芸術的に描くという伝統は、VesaliusやDa Vinciから、Cheselden、Bell、Cushingに至るまで、長い歴史を持つ。しかし現代の外科教育においては、この手法は驚くほど活用されていない。

スケッチが有効である理由は、それが「出力(アウトプット)」のステップとして機能する点にある。動画を視聴したり、術野を観察したり、アトラスを確認したりした後に、簡略化された術野マップを自分の手で再現できるかどうかは、その知識が本当に「定着」しているのか、それとも単に「見覚えがある」だけなのかを明らかにする。筆者自身、その日の手術を終えた夜に同じ術野を記憶から描き直すと、紙の上で再現できなかった部分が、翌朝のラウンドで質問すべき箇所と正確に一致したという経験を述べている。

エビデンスとしては以下のような知見が紹介されている。

学習者自身による描画・彫刻に関する系統的レビューでは、解剖や手術手順を描いたり、立体構造をモデリングしたりすることが、解剖学的知識の保持や試験成績の向上と一貫して関連していることが示された。また、手技の手順を描く経験とシミュレーション課題の遂行能力との間には正の相関も認められている。

別の系統的レビューでは、視覚芸術を用いた教育プログラムが、観察力、共感性、不確実性への耐性、臨床的観察力の向上に寄与することが報告されている。つまり、スケッチの効果は解剖学的知識の獲得だけでなく、対人的・態度的なコンピテンシーにも及ぶ可能性がある。

学生が描くことを避ける理由

医学生が術中・術後にスケッチをしない理由について、評価対象でも必修でもないため「価値が低い」と見なされがちであること、下手な絵を批判されることへの不安、臨床業務の中で時間が取れないという感覚、そしてスケッチブックを持参すること自体が現場の雰囲気に合わないと感じられることなどが挙げられている。

さらに根本的な誤解として、「描く能力=技術的能力」という連想がある。完璧主義がかえって学生を行動から遠ざけてしまうという指摘は、教育現場で見覚えのある構図ではないだろうか。論文は、この点を明確に否定している。スケッチの目的は芸術性ではなく、構造的関係を正確に捉えることであり、簡単な図で十分だという前提を、教育者が明示的に伝えることが重要だと述べている。

描く文化を取り戻すための具体的な方法

論文が提案する実装上のポイントは、いずれも特別な設備投資を必要としない点が特徴的である。

ローテーション中に、主要な解剖学的ランドマークや手術手順、術野の構図を、手技直後にログブックへ短時間でスケッチする課程を組み込むこと。初学者や低年次の学生に対しては、テンプレートやデジタル描画ツールを用いることで、修正のしやすさから心理的なハードルを下げられること。教員によるデモンストレーションやフィードバックは時間を要するが、「上手さ」ではなく「理解」が目的であることを伝える上で有効であること。手技開始前の数分間にスケッチを行うことで、それが外科的思考の一部として価値づけられること。

メンターシップの役割についても触れられており、指導医がスケッチを一瞥して解剖に関する数の質問を投げかけるという、ごく小さな関わりが、この習慣を正当化し、焦点を「正確さ」に保つ上で重要だったと述べられている。

また、外科医とアーティストの実践に共通する基盤を探った研究も紹介され、両者がいずれも手指の精密さ、空間認識、創造性を中心的なスキルとして共有しているという枠組みが示されている。さらに、芸術療法が喘息やがん、統合失調症、トラウマを抱える患者に対して効果を示してきたことを踏まえ、同様の原理を医学教育における「マインドフルな対抗手段」として活用できる可能性にも言及している。

学習者・教育者・機関への示唆

学習者にとって、構造化されたスケッチは、受動的観察を能動的な再構成へと転換させ、誤った理解を可視化し、重要な構造や手順の記憶を強化する。また、「この症例で本当に重要な構造・関係性は何か」を絞り込む作業として、認知的負荷の軽減にも寄与する。

教育者にとっては、2分程度のスケッチが形成的評価として機能し、追加の指導時間を大きく割くことなく、学習者の理解度を効率的に把握する手段となる。

機関にとっては、術後のデブリーフィングや術前カンファレンス、クリニカルクラークシップのグループワークといった既存のワークフローに低コストで組み込むことが可能であり、高度なシミュレーション設備へのアクセスが限られた環境においても実施可能な点が利点として挙げられている。

まとめ

本論文は、「描くこと」を芸術的な営みではなく、能動的学習と長期記憶定着のためのツールとして再定義している。外科教育において、解剖・精密さ・三次元的思考が重視される一方で、その理解を確認する手段は限られている。数分間のスケッチという極めてシンプルな介入が、学生の「見る」経験を「学ぶ」経験へと変える可能性を持つという主張は、忙しい臨床現場における教育的介入のあり方を考える上で示唆に富む。

EquityRx Tank:Shark Tank形式のゲームベース学習で説得的コミュニケーションと多職種連携を育む

EquityRx Tank: A Shark Tank-Inspired, Game-Based Workshop to Build Persuasive Communication and Collaboration Skills in Health Professions Education

Kristina Kaljo, Abbey Kruper

Medical Science Educator, 2026; 36:795–801

https://doi.org/10.1007/s40670-026-02685-9

 

pmc.ncbi.nlm.nih.gov

 

はじめに

医学・保健医療職教育において、知識習得に偏ったカリキュラムの中で、コミュニケーション能力・アドボカシー・多職種連携といったプロフェッショナルコンピテンシーを意図的に育む機会は慢性的に不足している。本研究は、テレビ番組「Shark Tank」にヒントを得たゲームベース・ワークショップ「EquityRx Tank」の開発と実践を報告するものである。


背景と問題意識

医学教育における従来の講義形式は、説得的コミュニケーション・対人スキルの涵養には不十分であるとされてきた。学習者自身も、本物のコミュニケーションや意思決定を練習する機会が「意図的」ではなく「偶発的」に提供されがちだと感じており、構造化された実践の場が求められていた。


ワークショップの概要

設計の枠組み

本ワークショップは2つの教育理論を基盤としている。

  • Understanding by Design(UbD):目標から逆算した設計アプローチ
  • 経験学習理論(Kolb):体験→省察→概念化→実験という学習サイクル

経験学習の各段階は以下のように具体化された。

段階 活動内容
具体的経験 小グループでのテーマ選択・ピッチ開発
省察的観察 模範動画視聴・全体デブリーフ
抽象的概念化 観察した戦略をピッチ要件に落とし込む
能動的実験 ピッチ発表・リアルタイム質疑応答

実施形式

90分の単独セッションとして、6週間のサマーエンリッチメントプログラム(SEP)内に組み込まれた。2019〜2023年にかけて5コホート(n=71)に実施され、対面(86%)・オンライン(14%)の双方で展開された。参加者の70%が米国の生物医学・医療分野においてアンダーリプレゼンテッドな人種・民族グループに属する学部生であった。

ワークショップの流れ(90分)

1. アイスブレイクと内省 (10分)
セッションは「Think-Pair-Share(考えて、ペアで話し、全体で共有する)」演習から始まります。
内容: 印象に残る効果的なスピーカーの資質についてブレインストーミングを行います。
目的: 聴衆の引き込み方、信頼性、説得力に関する共通の戦略を浮き彫りにし、その後の活動の土台を作ります。


2. 手本(エグゼンプラー)の提示と報告 (15分)
説得力のあるコミュニケーションの実例をビデオで学びます。
使用されるビデオ: TEDトークの「TED’s Secret to Great Public Speaking」と、フォルクスワーゲンの「Fun Theory Piano Stairs」が使用されます。
デブリーフィング: 講師の指導のもと、ビデオで示された説得の原則やメッセージの構成が、どのように行動変容を促し、聴衆を動かすのかを議論します。


3. グループ共同課題とピッチの開発 (35〜40分)
4〜5人の小グループに分かれ、具体的な提案書を作成します。
テーマの選択: 地域の健康ニーズを報じる新聞記事に基づき、提示された3つの健康優先事項から1つをグループで選択します。
ピッチの作成: 選択した課題を解決するためのプロジェクト案を、資金調達を目指す5分間の「マネーの虎」形式のピッチ(プレゼン)としてまとめます。
役割分担: 最終的なプレゼンテーションでは、グループ全員が必ず何らかの発言を行う役割を持つことが求められます。


4. ピッチの発表と審査 (25〜30分)
全グループが自分たちの提案を聴衆の前で発表します。
審査: 講師や招待された審査員が、明確さ、説得力、実現可能性、およびコラボレーション(連携)の4項目を評価基準(ルーブリック)に沿って審査します。
リアルタイムのフィードバック: 発表後、審査員からの質問にその場で回答します
。この「心地よい緊張感(productive discomfort)」を伴う質疑応答を通じて、意思決定能力や批判的思考力を養います。


ワークショップの特徴的な要素
対象者: 主に医学やバイオ医学研究の分野で過小評価されている人種・民族的グループの学部生が参加しており、多様な視点が尊重される環境です。
継続的な改善: 5年間の実施過程で、全員の発言機会を増やすためにグループ人数を削減(6人から4人へ)したり、革新的思考を促すためにビデオ教材を追加したりといった改善が重ねられています。
学習の成果: 参加者は「助成金(グラント)申請の際に考慮すべき事項を学んだ」「限られた時間内での効率的なスキルの磨き方を習得した」といった感想を寄せています。

 

結果

量的評価

43名(60%)が事後評価を完了し、ワークショップの総合評価平均は10点満点中9.44点と非常に高い結果であった。ファシリテーター評価も全項目で5点満点中4.7〜4.8点を獲得した。

質的テーマ分析(Braun & Clarkeの反射的テーマ分析)

36名の自由記述から5つのテーマが抽出された。

  1. 満足度:ワークショップへの高い満足感
  2. エンゲージメント:能動的・楽しい学習体験(「もっと時間が欲しかった」という声も多数)
  3. 生産的不快感:人前で話すことへの緊張を専門的成長の機会として肯定的に捉える
  4. 協働:多職種・多背景の仲間との意味ある協働体験
  5. スキル発達:助成金申請や意思決定など将来の職場文脈に応用可能な具体的スキルの習得感

迭代的改善

フィードバックに基づき、グループサイズを6名から4名に縮小(発言機会の増加)、Volkswagen動画の追加(行動変容原理の強調)などの改善が行われた。


考察と限界

本ワークショップは、Shark Tank型アプローチを知識強化ではなくコンピテンシー開発に焦点化した点で先行研究を拡張している。理論駆動型の設計・複数年にわたる実施・多様な学習者への適用可能性が強みである。

一方で限界も明確に認識されている。事後の自己報告のみによる評価(ベースライン測定なし)、客観的コンピテンシー習得の検証不足、単一セッションによる長期効果の不明確さなどが挙げられる。今後は、自己効力感の事前事後測定の追加、医学部クリニカル・クラークシップや教員開発への展開が提案されている。


医学教育への示唆

EquityRx Tankは低リソース・再現可能・理論的根拠のある設計であり、以下の場面への応用が期待される。

  • サマーエンリッチメントプログラム
  • 多職種連携教育(IPE)カリキュラム
  • 基礎科学・研究系プログラムへの統合
  • 教員開発(Faculty Development)ワークショップ

90分という限られた時間で説得的コミュニケーション・チームワーク・アドボカシーを同時に経験させる本モデルは、FDワークショップの設計においても示唆に富む。

 

OSCEのコストを下げながら質を保つには?──費用最小化と試験精度の検討

How can we reduce the cost of OSCEs? A cost-minimization and test accuracy study

Angelina Lim, Daniel Thomas Malone, Zanfina Ademi, Margaret Wu & Jonathan Foo

Medical Teacher, Published online: 26 May 2026

https://doi.org/10.1080/0142159X.2026.2671439

 

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/0142159X.2026.2671439?af=R

はじめに

OSCEは臨床能力評価の標準的手法として広く普及しているが、そのコストの高さは多くの教育機関にとって長年の課題である。では、試験の精度を損なわずにコストを削減できる設計上の工夫はあるのか。本論文はその問いに、実データを用いて正面から答えようとした意欲的な研究である。


研究の概要

モナッシュ大学薬学部の学部生OSCEデータ(2020〜2023年、4年分)を用いた後ろ向き研究である。**試験精度分析(第1段階)費用最小化分析(第2段階)**の二段階設計を採用している。

検討された変数は以下の2点:

  • 実施形態:対面(F2F)かオンライン(Zoom)か
  • 模擬患者の使用:人間の模擬患者(SP)を使うか、試験官が採点と患者役を兼任(デュアルロール)するか

この組み合わせによる4つのOSCEバリエーションを比較した。


主な結果

第1段階:試験精度

信頼性(Cronbach's α)と精度(測定の標準誤差:SEM)を指標として分析した結果、実施形態(対面 vs. オンライン)も模擬患者の使用有無も、試験精度に有意な差をもたらさなかった。ステーション数は精度に影響したが、それ以外の設計要素は影響しなかった。

第2段階:費用最小化

1学生あたりのコストは以下の通りであった(2024年オーストラリアドル):

実施形態 患者役 1学生あたり費用
オンライン デュアルロール $241(最安)
対面 デュアルロール $339
オンライン 模擬患者(SP) $345
対面 模擬患者(SP) $448(最高)

最も安価な組み合わせと最も高価な組み合わせの間には、約2倍のコスト差が生じた。

コスト差の主な要因は:

  • 模擬患者の不使用が最も大きく費用を下げた(SP報酬が不要になるため)
  • オンライン実施は会場費・大学貸与端末・ケータリングが不要になり、運営スタッフ数も削減できた
  • ただしオンラインでは学生の隔離ができないため、回路ごとにケースを更新する必要があり、ケース更新コストが増加した。それでも差し引き節約になった

考察と実践的示唆

オンライン実施について

  • 口頭問診・臨床推論・薬物管理など「対面を必要としない技能」の評価にはオンラインをデフォルトとして検討してよい
  • 身体診察や手技評価など物理的接触が必要な場面は対面が引き続き必要
  • AIを用いた不正行為のリスクはあるが、試験官による同期監視(ライブプロクタリング)は一定の担保となる

デュアルロール(試験官が患者役を兼任)について

  • 複雑な身体症状の再現や忠実性の高い演出が不要な場合には有効
  • 試験官の認知負荷増加・偏見・フィードバック質の低下といったリスクには注意が必要
  • 追加準備時間を要する場合でも、SPを雇用するより費用を抑えられる可能性が高い

日本のOSCE文脈への示唆

日本では医学部・薬学部・看護学部等において共用試験OSCEが広く実施されており、コスト問題は各校の共通課題である。本研究の知見は直接適用できるわけではないが、以下の点は参考になる:

  • コスト分析に「成分法(ingredients method)」を用いるという手法の枠組みは導入可能である
  • 試験精度を維持したままオンライン実施に移行できる可能性は、地方大学や遠隔実施を検討している機関にとって特に有益な視点である
  • SPを採用しない設計オプションの検討は、SP養成・確保に課題を抱える機関での議論に活用できる

研究の限界

  • 薬学部データに基づいており、身体診察や手技評価の多い医学部OSCEへの一般化は慎重に行う必要がある
  • Kane妥当性フレームワークの「採点」・「一般化」推論は評価したが、「外挿」・「含意」は未評価
  • COVID-19の影響を受けた年度を含むため、コホートの学習経験に差異が生じている可能性がある