医学教育つれづれ

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反転授業のための12のヒント

Twelve tips for “flipping” the classroom

Jennifer Moffett

Pages 331-336 | Published online: 26 Aug 2014

Cite this article https://doi.org/10.3109/0142159X.2014.943710

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.3109/0142159X.2014.943710

反転授業とは何か

反転授業は、学生が授業前に動画視聴や資料読解を通じて知識を習得し、教室では小グループでのアクティブラーニングを行う教育モデルである。このアプローチは1800年代初頭のウェストポイント陸軍士官学校での実践に遡るが、近年の教育技術の発展により再び注目を集めている。

研究によれば、反転授業には教育者と学生の対話時間の増加、個別化された教育の提供、エビデンスに基づく教育手法の統合など、多くの利点がある。一方で、教材の再構成に要する時間や、学生の自主性への依存といった課題も存在する。

12のヒント

ヒント1:教育理論とエビデンスに基づいた設計を

反転授業の強みは技術の使用にあるのではなく、教育理論に裏打ちされた設計にある。ニーズアセスメント、学習目標の設定、適切な教育・評価方法の選択といった、コース設計の基本要素を最初に検討すべきである。技術は教育を支援するものであり、それ自体が目的ではない。

ヒント2:反転授業の長所を活用する

多大な時間と労力を投資する以上、反転授業の利点を最大限に活用することが重要である。例えば、地理的制約や時間的制約により従来は参加できなかった外部専門家を授業に組み込んだり、カリキュラムに体験学習やチーム基盤学習などの革新的教育モデルを導入したりすることができる。

ヒント3:教材の構成を決定する

教材を「授業前」と「授業中」にどう分割するかを決定する必要がある。改訂版ブルームのタキソノミーを活用し、授業前活動では低次の認知作業(知識・理解)を、授業中活動では高次の認知作業(応用・分析)をサポートするように構成すると良い。

また、コンテンツの優先順位付けも重要である。オンライン環境に過剰な情報を「投棄」することは、学生の情報過多を招く危険がある。理想的には、反転授業の授業前・授業中活動に要する時間は、従来型授業の講義・宿題時間と同等かそれ以下であるべきだ。

ヒント4:授業前活動への投資

授業前活動は、エビデンスに基づく教育手法に基づいて設計されるべきである。学生がアクセス可能で、かつ取り組む意欲を持てるようなオンライン活動を設計する必要がある。

動画ベースの教材は多くの利点を持つが、唯一の、あるいは必ずしも「最良の」方法ではない。動画、論文、コンピュータ支援学習モジュールなど、複数の形式で同じ教材を提供することで、学生の異なる学習スタイルや嗜好に対応できる。

ヒント5:仮想学習環境(VLE)の効果的活用

MoodleやBlackboardなどの現代的なVLEは、単なる教材提示を超えた学習支援が可能である。学生はディスカッションボードやチャットルームを通じて、教材に能動的に関わることができる。例えば「最も理解が難しかった概念」について議論させることで、ピア・ラーニングを促進し、教育者が学生の理解のギャップを把握できる。

ヒント6:授業時間の創造的・効果的活用

反転授業では、授業時間を情報伝達から解放し、より創造的な教育・学習方法に充てることができる。学習者中心で、インタラクティブで、統合的で、省察的で、エンゲージメントを促進する教育活動を採用すべきである。

ほとんどの反転授業では、ケースベース学習や体験学習などのアクティブラーニング演習に授業時間を使用している。この増加した教育者-学生間の対話は、反転授業の最も価値ある特徴の一つとして報告されている。

ヒント7:学習者のニーズに合わせた教育の実現

教育技術を活用することで、学習者のニーズに合わせた教育が可能になる。オンラインクイズやコンピュータ支援学習モジュールから、学生のエンゲージメントや理解度に関する豊富な情報を収集できる。

例えば、クラス全体は良好な成績を示しているが、特定のトピックで多くの学生が困難を示している場合、教育者はその分野により多くの時間を割くことができる。また、繰り返し困難を示す個々の学生を特定し、追加の教育支援を提供することも可能である。

ヒント8:時間的制約の認識

反転授業への移行には時間と労力がかかる。教育者は新しい技術を学び、効果的な教材提示方法を考案する時間が必要である。しかし、初期の時間投資の多くは一度限りのものである。学習リソースが一度作成されれば、連続する学生クラスで使用できる。また、効果的に機能する反転授業は、全体的な講義時間やオフィスアワーの削減にもつながる。

ヒント9:教育者へのトレーニング提供

教育者の「準備度」は反転授業の成功に重要な要素である。教育者が能力や熱意を感じなければ、うまく機能しない可能性が高い。トレーニングやファカルティ・ディベロップメントの提供は貴重な第一歩である。

レーニングでは、新しい技術の使用方法やエビデンスに基づく教育法の組み込み方を示すべきである。また、教育者自身の専門分野内での反転授業の適用例を示すことも、自信構築のステップとして有効である。

ヒント10:学生の準備

学習者も反転授業への移行にサポートが必要である。従来の受動的な講義環境からよりアクティブな学習活動へ移行する学生は、このアプローチへの「賛同」に支援が必要かもしれない。

成人学習者は、現在の文脈で自分に関連するアイデアや課題が提示されたときに、知識とスキルを発展させる動機付けがなされる。医学教育の場で反転授業を使用する根拠を学習者に提供することが有用である。

ヒント11:評価方法の決定

反転授業を採用する教育者は、その効果をどのように測定するかを検討すべきである。例えば、カークパトリックの4段階評価モデル(意見・反応、能力・学習、パフォーマンス・行動、結果)に従って、アプローチの機能を検証できる。

反転授業に関する文献の多くは、学生の客観的なパフォーマンス評価よりも、アプローチに対する学生の認識を報告している。限られた数ではあるが、反転授業を採用した生物学やコンピュータコースで学生のパフォーマンス向上が記録されている有望な研究も存在する。

ヒント12:部分的な導入も可能

反転授業の導入は「全てか無か」の決断である必要はない。反転授業技法は、単一のトピックやモジュールに組み込むことができる。実際、学生は従来型と反転型の授業が組み合わされたコースを好む傾向があるという証拠もある。

カリキュラム内の課題が存在する部分、例えば学生のエンゲージメントが低いトピックや、批判的思考の促進が必要なモジュールで、パイロット的にアプローチを試すことができる。

結論

反転授業は医学教育における有望な教育革新である。学習者中心の教育の促進、教育者-学生間の対話の増加、教育者の時間の最適化など、多くの潜在的利点を持つが、授業の反転には時間と努力が必要である。

大規模なコース再構築は慎重に計画・実施されるべきであり、教育者はアプローチを採用するための時間と技術的サポートを必要とする可能性が高い。最後に、教育技術が反転授業への注目を高めたことは確かだが、コース設計の決定は、常に健全な教育理論とエビデンスに基づく実践に基づくべきである。