Access to Medical Residency: A Qualitative Study of Medical Graduates’ Experiences in Georgia.
Kirvalidze, M., Kasrashvili, M., Tskitishvili, A., Aladashvili, G., Chelidze, N., Tvildiani, N., Lunze, K., & Nadareishvili, I. (2025).
Journal of Medical Education and Curricular Development, 12. https://doi.org/10.1177/23821205251342050 (Original work published 2025)

研究の背景と文脈
ジョージアの医療制度概要
医学教育システム
研修医制度の構造
統一卒後資格試験
- 問題数: 200問の多肢選択問題
- 構成比:
- 「公開」問題:75-80%(問題と正答が公開)
- 「非公開」問題:20-25%(試験ごとに変更)
入学プロセス
国立プログラム
- 電子プラットフォームでの「入札」システム
- 試験スコアに基づく透明な選考
- 全ての入札が表示される
私立プログラム
- 各認定施設が独自に募集要項を発表
- 内部試験と面接を実施
- より低いスコア要件(合格点のみで可の場合も)
- より大きな裁量権
経済的側面
- 授業料制: 国立・私立とも授業料必要
- 給与: 研修医への給与支払いなし
- 費用差: 私立プログラムの方が一般的に高額
- 具体的金額: 月額1,000ラリ(約360ドル、2024年)
調査方法
参加者募集
- 募集方法: Facebook上の医学研修支援グループ
- 選定基準:
- 統一卒後資格試験を最低1回受験
- 現在研修中またはジョージアでの研修希望者
- 多様性確保: 性別、居住地(首都内外)、卒業年、大学種別を考慮
データ収集
- 実施時期: 2024年春
- 手法: Zoom個別インタビュー
- 研究者: 2名の女性研究者(MKi、MKa)
- 背景: 両者ともジョージア国籍の医学博士(MD、MPH / MD、MSc)
- 中立性: 研究者はジョージアでの研修経験なし
参加者のプロフィール
基本属性
- 平均年齢: 28歳
- 性別: 男性40%、女性60%
- 居住地: 9名がトビリシ、1名がバトゥミ
- 研修状況:
- 現在研修中:7名(国立5名、私立2名)
- 未研修:3名
調査結果の分析
テーマ1: 統一卒後資格試験の質
暗記中心の問題構造
- 参加者の証言: 「コンピューターの前に毎日1時間座って公開データベースを暗記するだけ。この試験に備える他の方法はない」
- 教育効果: 「この試験は知識を実証するものではない。教科書を知っている卒業したばかりの学生でも、知識に関するものではないため高得点は取れない」
問題の質に関する懸念
- 8名が指摘: 間違いや時代遅れの問題
- 具体的証言: 「一部の問題には明らかに間違った答えがある。私たちは皆、間違った答えを暗記しなければならないことを知っている」
不正行為の問題
- 5名が言及: 不正行為と異議申し立て
- 目撃証言: 「隣の人が露骨に携帯電話を使っていた。不正により高得点を取った人を個人的に知っている」
- 私的指導: 「一部の指導グループが盗まれた『非公開』問題にアクセスし、時には売買している」
テーマ2: 入学プロセスナビゲーション
定員配分の問題
- 8名が指摘: 利用可能ポジションの分布
- 証言: 「希望する専門分野の定員は散発的。例えば、ある年は特定の分野で40のポジションがあっても、別の年は0という場合がある」
- 代替選択: 「肺病学を学びたかったが、国立プログラムにしかなく、毎年募集があるわけではないので待たなければならない」
国立 vs 私立プログラムの比較
国立プログラムの利点:
- 低い授業料
- 出席要件の柔軟性
- 他での勤務可能
- 透明な入学プロセス
- 証言: 「国立での入学プロセスは100%透明。オンライン入札で、全員のスコアが見える」
国立プログラムの欠点:
- 極度に限られた定員
- 高い競争率
- 証言: 「内科の国立研修では年間2-3枠しか募集されないため、満点でない限り入学は不可能」
私立プログラムの問題:
- 中央プラットフォームの不在
- 高額授業料
- 厳格な出席要件
- 不透明な選考プロセス
- 証言: 「基本的に施設で働くことになり、他のことは何もできない」
- 証言: 「内部試験の見直しや異議申し立てができず、自分の試験結果を見ることも許されなかった」
テーマ3: 経済的負担と就職
研修前の就職困難
- 4名が言及: 研修前の就職
- 証言: 「研修医でなければ、新人医師として就職するのは非常に困難。看護師になる方が簡単で、給料も良い」
研修中の経済問題
- 6名強調: 経済的負担が主要な課題
- 証言: 「彼らは私たちに働けと言い、同時にお金を払えという。これは非常に異常な奴隷制度の形態だ」
- 国際比較: 「アメリカやヨーロッパなど先進国で行われているように、私たちの労働に対して報酬を得るのが公平だろう」
私立施設の制約
- 証言: 「私立施設の料金を払って30代まで家族の負担であり続けることはできない」
研修外での労働
- 6名言及: 研修中の他での就労
- 証言: 「働いている場所では、研修プログラムよりもはるかに多くのことを教えてくれる。プログラムの時間をスキップして、収入を得てより多くを学ぶ方が良い」
テーマ4: 感情的ストレス
無力感と失望
- 4名報告: 制度への失望
- 証言: 「本当に医師になりたい。このようなことすべてを経験しなければならないのは本当に不公平で失望的だ」
不安とストレス
- 4名報告: 心配と不安
- 証言: 「春の試験をスキップした。経験に感情的に影響され、非常にストレスが多すぎた」
テーマ5: 研修プログラムに対するその他の認識
縁故主義
- 7名言及: ジョージア全体の問題
- 証言: 「ジョージアではどこにでも縁故主義がある。適切な場所に適切な親戚がいる限り」
- 医療への影響: 「病院は影響力のある医師の無能な親戚でいっぱいで、その結果患者に害を与える」
指導・訓練の質
- 3名言及: 訓練と指導の質の低さ
- 証言: 「どこでも訓練の質が良いとは期待していなかった...良い指導者を見つけることは unlikely」
- 証言: 「本当に宝くじのようなもので、誰が指導者になるかによる」
テーマ6: 代替選択肢
海外移住の検討
ジョージアとの結びつき
- 3名言及: 祖国・コミュニティとのつながり
- 証言: 「海外で友人や家族なしでいたくない」
- 経済的制約: 「USMLEを受験することは考えたことがない。経済的理由もあるが、家族や友人を離れたくないから」
アメリカへの関心
政府監査報告書の知見
2024年国家監査庁報告書
- 報告義務違反: 認定研修プログラムを持つ施設の65%が品質保証に必要な年次報告書を提出せず
- 研修医の満足度: 監査官がインタビューした現役研修医の50%が訓練の質に不満
- 経済的負担: インタビューした研修医の69%が研修授業料を賄うため外部就労が必要
- 試験の更新: 多数の研修試験が10年以上更新されていない
2018-2022年のデータ
- 医学部卒業生: 7,051名
- 研修登録者: 1,595名(37%)
- 政府補助: 2019年開始の4つの優先研修プログラム(精神科、結核科、小児結核科、検査医学)
- 補助利用率: 全授業料の0.8%のみ(極めて低い)
国際比較と文脈
医師密度
- ジョージア: 1万人あたり75.6人(2018年、世界最高レベル)
- 課題: 医師過剰供給による臨床部門の飽和
専門分野の分類問題
- ジョージアの特徴: 欧米では内科のサブスペシャリティとされる分野(循環器、呼吸器、感染症、腎臓、内分泌)が独立した専門分野として分類
- 影響: 研修医の実践が単一部門に厳しく制限される
- 例: 感染症研修医は感染症部門でのみ勤務可能、一般内科サービスの提供は不可
他の旧ソ連諸国との比較
アルメニア
- 類似の課題:専門分野別研修医数決定の戦略的監督不足、研修中の報酬なし
タジキスタン
バルト諸国(より公平なアプローチ)
ラトビア:
- 保健省が年次で専門分野別の政府補助(有給)研修ポジション数を決定
- 病院需要、人口健康ニーズ、各専門分野の既存分布に基づく
- 全研修医が月給を受給
- 正式な職員として扱われる
政策提言
国家保健戦略2022-2030との整合
- WFME連携: 世界医学教育連盟との協力強化
- 目標: 2030年までに全研修プログラムをWFME基準に適合
- 具体的タスク: 研修入学手続きの改善、需要に基づく専門分野の優先順位付け、適切な訓練ポジション数の決定
3つの主要改革領域
1. 需要に基づく透明な専門分野定員決定プロセス
- 関係者: 保健省、専門職協会、私立研修施設、雇用者、開発パートナー
- 方法: 反復的戦略計画プロセス
- 成果: 長期戦略計画の策定と公開
2. 試験・入学プロセス改革
- 試験データベース: 最新で検証済みの機密(非公開)データベース
- 選択肢: 国内開発(大学入試統一試験と同様)または国際的ソースからの適応・翻訳
- 私立施設規制: 透明性ルールの適用
- 中央プラットフォーム: 全私立施設の募集要項公開義務化
3. 研修医の職員統合
- 法的地位: 「ジュニア医師」としての雇用
- 報酬: 他の医療従事者と同等の雇用福利厚生
- 根拠: 「余剰」職員として未定義の役割・責任・無報酬で扱うことは非倫理的かつ非効率
研究の限界と強み
強み
- ジョージアでの医学研修希望者体験を探索した初の研究
- 政策・意思決定に有用な新しい洞察
- オープンエンド質問と検証済み方法論の使用
- NVivoソフトウェアによる信頼性の高いデータ統合
- 多様性確保の募集戦略
限界
- サンプルサイズ: データ飽和は達成したが、全体的に限定的
- 私立プログラム: 参加者数が少なく、機関間の変動を包括的に把握できず
- 地理的偏重: トビリシ以外の参加者が1名のみ
- データの限界: 医学部卒業生数と利用可能研修ポジション数の不一致に関する最新国家データの不足
- バイアス: 海外移住検討者の高い割合は、インターネットに精通し、研修情報を積極的に求める人々のサンプル偏重の可能性
結論と将来への示唆
主要課題の総括
- 試験制度: 質の低い配置試験
- 調整不足: 訓練機会分配の調整不足
- 質の問題: 訓練の質の低さと構造化された指導の欠如
- 経済問題: 無給研修による経済的困難
- 不公正: 縁故主義と不公正な慣行
改革の緊急性
- 多くの研修医への大きな感情的負担
- 「頭脳流出」の懸念すべき傾向
- 現制度への幻滅による海外研修機会の模索
戦略的改革の必要性
- 透明で需要に基づく長期研修定員計画
- 改革された試験・入学プロセス
- 医療システムへの研修医の法的・経済的統合の改善
- 国家保健戦略2022-2030、WFME基準との整合
- ジョージア人口の医療ニーズにより良く対応する国際基準を満たす研修プログラムの確保