A novel resident physician examination using clinical simulation video to assess clinical competence in Japan: a cross-sectional study
Kiyoshi Shikino, Yuji Nishizaki, Koshi Kataoka, Sho Fukui, Daiki Yokokawa, Taro Shimizu, Yu Yamamoto, Kazuya Nagasaki, Hiroyuki Kobayashi & Yasuharu Tokuda
BMC Medical Education volume 24, Article number: 1402 (2024)
背景
総合内科専門医試験(GM-ITE)は医師の臨床知識を評価する試験である。 本研究では、これまでのパイロット研究で得られた知見を発展させ、革新的な臨床シミュレーションビデオ(CSV-IE)を用いて、日本における総合内科専門医研修試験(GM-ITE)のスコアと研修医の診断スキルとの関係を評価した。
方法
この多施設横断研究では、2023年1月17日から30日の間にGMITEを受験した4,677名の研修医を対象とした。 参加者は、救急治療室のシナリオを描いたCSV-IEを視聴し、診断を行った。 CSV-IEは救急症例を描写し、診断を提供する。 また、多段階ロジスティック回帰を用いて、正しい診断に関連する医師および病院レベルの因子を分析した。
試験の具体的内容
- 試験構成
- 約5分間の臨床シミュレーション動画を視聴
- 救急室での症例を再現
- プロの俳優が患者と家族を演じ、医療監督者の指導のもと撮影
- 実際の心音など、専門的な効果も追加
- 症例設定
- 主訴:失神
- 患者の症状:
- 頻呼吸
- 頸静脈怒張
- 右下肢骨折
- 最終的な診断:急性肺血栓塞栓症
結果
- 診断能力の詳細な分析
- 総参加者4,677名中の正診率10.0%は、症例の複雑さと求められる高度な臨床推論能力を反映
- 正解群は全ての評価領域でより高いスコアを示し、特に基礎的臨床知識での差が顕著(DI=0.44)
- 判別指数(DI)の分析結果:
- 症候学と臨床推論:0.31
- 身体診察と臨床手技:0.35
- 疾患知識:0.25 これらは全て高い判別力を示す0.20以上の値
- 病院特性との関連
- 市中病院と大学病院の比較:
- 市中病院の研修医:正解率が高い(調整オッズ比:基準値)
- 大学病院の研修医:正解率が低い(調整オッズ比:0.624)
- 救急外来患者数との関連:
- 患者数が多い病院ほど正解率が向上
- 毎年の救急患者数1単位増加につき正解確率が1.025倍に
- 研修医特性との関連
- 経験年数の影響:
- 2年目研修医は1年目と比べて1.387倍の正解率
- 内科研修期間11-15ヶ月の群で最も高いパフォーマンス
- 勤務形態の影響:
- 月間夜勤回数が多い群でより良好な成績
- 週間勤務時間60-79時間の群が最も効果的
詳細な考察:
- 教育システムへの示唆
- 実践的経験の重要性:
- 救急症例への直接的な曝露が診断能力向上に寄与
- シミュレーション教育の有効性を裏付け
- 研修プログラムの最適化:
- 適切な症例数の確保が重要
- 夜間診療を含む実践的な研修機会の提供が効果的
- 統合的な臨床能力評価:
- 知識、技能、態度の総合的評価が可能
- リアルタイムの意思決定能力の評価に有効
- 従来の評価方法との相補性:
- マークシート試験では評価困難な実践的スキルの測定
- より包括的な能力評価システムの構築に貢献
- 研修環境の影響
- 市中病院vs大学病院:
- 市中病院での高いパフォーマンスは、より直接的な患者ケアの機会を反映
- 大学病院での課題として、実践的研修機会の確保の必要性を示唆
- 最適な研修期間:
- 11-15ヶ月の内科研修期間が最も効果的
- 経験の質と量のバランスの重要性を示唆
- 将来への課題と展望
- 評価システムの改善:
- より多様なシナリオの開発
- 評価基準の標準化
- 採点方法の効率化
- 教育プログラムの最適化:
- 実践的研修機会の確保
- 研修内容の標準化
- 効果的なフィードバックシステムの構築
結論
CSV-IEモジュールは、動的な意思決定と診断推論を必要とする文脈化された実世界のシナリオを提供することにより、従来のMCQベースの評価の限界に対処し、臨床能力の統合的かつ現実的な評価を提供することができる。