Educational board game for training dental and dental hygiene students in patient safety issues.
Wu, JH., Su, PH., Wu, HY. et al.
BMC Med Educ 25, 518 (2025). https://doi.org/10.1186/s12909-025-07115-9

研究背景と目的
- 台湾では2003年に病院認定システムが大幅に改革されたが、歯科医療が病院認定基準に含まれたのは2015年が初めて
- 歯科治療の複雑化や患者ケースの高度化に伴い、患者安全の重要性が高まっている
- 歯科学生は患者安全目標に対する理解が限られており、歯科カリキュラムにおける患者安全教育に関する研究は不足している
- 本研究では「DentSafe」という自作のボードゲームを用いた患者安全教育の効果を検証した
ゲーム開発と教育目標
- ゲームは共著者のJHWによって設計され、完全な歯科治療プロセスに基づいている
- ゲームの教育目標は台湾厚生福利省の「病院患者安全年次目標」に対応:
- 医療専門家と患者間の効果的なコミュニケーション促進
- 患者安全文化の醸成とインシデント管理の実施
- 手術安全の向上
- 患者の転倒防止と傷害重症度の軽減
- 薬物安全の向上
- 感染制御の実施
- チューブ安全の向上
- 患者と介護者の患者安全への参加促進
ゲームの基本情報
- 対象:4~6人のプレイヤー
- 目的:歯科と歯科治療の安全性について学ぶ
- プレイ方法:「ケースカード」を集めて自分の「デンタルチェアユニット」を完成させ、「経験ポイント」を獲得する
- 勝利条件:最初に100経験ポイントを獲得したプレイヤーが「歯科安全エキスパート」の称号を得て勝利
ゲームの構成要素
- デンタルチェアユニットカード:18枚
- ケースカード:48枚
- 患者面接カード:11枚
- 状態説明カード:9枚
- 治療・健康教育カード:14枚
- 健康保険申告カード:9枚
- マスターからのヒントカード:5枚
- イベントカード:33枚
- 患者からの感謝状
- 感染制御監査賞
- 停電
- 停電時の対処法
- 情報システムクラッシュ
- 情報システムクラッシュ対応
- 火災対応
- 有害薬物反応通知/インシデントレポートの作成方法
- など
- 経験カード:36枚
- 10ポイントカード:12枚
- 20ポイントカード:24枚
ゲームの準備
- 各プレイヤーは3枚の「デンタルチェアユニットカード」と1枚の20ポイント「経験カード」を受け取り、自分の前に置く
ゲームの進行方法
- ラウンド開始:各プレイヤーは3枚の「ケースカード」と1枚の「イベントカード」を引く
- ケースカード処理:
- プレイヤーは「ケースカード」を「デンタルチェアユニット」の横に置く
- 治療を完了するには、各「デンタルチェアユニット」にステップ1~4のカードをそれぞれ1枚ずつ集める必要がある
- ステップ:①患者面接 ②状態説明 ③治療と健康教育 ④健康保険申告
- すでに埋まっているステップのカードを引いた場合、そのカードを手元に保持して将来のラウンドで使用
- ケースカードのポイント獲得:
- 「デンタルチェアユニット」で治療が完了すると、プレイヤーは患者の治療手順を朗読し、20経験ポイントを獲得
- その後、全てのステップカード(1~4)を取り除き、次の患者のために「デンタルチェアユニット」を解放
- イベントカード:
- 「攻撃カード」と「得点チャンスカード」の2種類がある
- カードを使用する際は、カードの指示を読み上げるか、歯科で起こり得る現実的な状況の例を示す
- 「即時使用カード」は引いた直後に使用する必要がある
- イベントカードによるポイント獲得/喪失:イベントカードに基づいてポイントを獲得または喪失
- ターン終了:
- プレイヤーは最大3枚の「ケースカード」と2枚の「イベントカード」を手元に持てる
- カード数が制限を超える場合、余分なカードを捨てる
- プレイは時計回りに次のプレイヤーに移る
研究方法
- 準実験的プレテスト-ポストテスト設計
- 対象者:
- 歯科衛生士学生2019年クラス(4年生)23名
- 歯科学生(5年生)27名
- 歯科衛生士学生2020年クラス(3年生)25名
- 介入時期と指導者が異なる3グループで実施:
- DH2019:臨床前訓練、歯科衛生士が指導
- 歯科学生:クラークシップ研修中、DH2020の学生が指導
- DH2020:行動歯科学クラス、DH2020の学生が指導
- 評価方法:
- 知識評価:再生、理解、応用の3レベル(計28点満点)
- ゲーム後の質問票:患者安全に対する態度、ゲームの教育的価値、能力向上の自己評価
研究結果
1. 参加者特性
- 男女比:歯科衛生士学生は女性が多く(60.42%)、歯科学生は男性が多い(70.37%)
- 平均年齢:歯科学生(23.41歳)、歯科衛生士学生より有意に高い
2. 知識の向上
- ベースライン:3グループ間で知識スコアに有意差なし
- ベースラインの正答率:理解スコア(75.0-80.4%)>総合スコア(62.82-63.86%)>再生スコア(44.00-59.25%)>応用スコア(1.00-5.50%)
- 介入後:全グループで全スコアが有意に向上
- 効果量(Hedges' g):
- 再生スコア:0.866-1.198(大〜非常に大きい効果)
- 理解スコア:0.390-0.802(小〜大きい効果)
- 応用スコア:DH2019で7.828(極めて大きい効果)
- 総合スコア:DH2019で2.338(極めて大きい効果)
3. 患者安全に対する態度
- 全グループが患者安全問題に対して肯定的な態度を示した
- 「ボードゲームが患者安全問題の理解を向上させた」という項目でのみDH2020が他グループより低い評価
4. 教育的価値
5. 能力向上の自己評価
- 最も向上したと報告された能力:
- 「患者安全文化の醸成とインシデント管理の実施」(88.00%)
- 「患者の転倒防止と傷害重症度の軽減」(73.3%)
- 「感染制御の実施」(62.7%)
- 最も向上が少なかった能力:「チューブ安全の向上」(18.7%)
6. 質的分析
- 学生からのフィードバック:
- 最も満足した点:ゲームプロセスが面白く、教育的で楽しい
- 最も難しかった点:ルールに慣れるのに時間がかかる
- 改善が必要な点:ゲームルールと進行カードの数と明確さ
考察のポイント
- 指導者の能力が重要:臨床経験豊富な歯科衛生士の指導を受けたDH2019グループが最も高い知識向上を示した
- 学習レベルの違い:Bloomのタクソノミーにおける知識、理解、応用の各レベルで効果が異なる
- 非認知的スキルへの影響:態度面での向上も見られたが、主に知識獲得に焦点
- 臨床経験の影響:学生の臨床経験が少ないグループでは、特定の能力向上の自己評価が低い
研究の限界
- 単一大学での実施のため一般化可能性が限られる
- 患者安全は認知的・非認知的側面を含むが、DentSafeは主に知識獲得に焦点を当てている
- 臨床経験の異なる学生への一律の内容提供
- 臨床経験の違いがゲームへの取り組みや学習効果に影響する可能性
今後の展望
- より大きなサンプルサイズと複数機関での研究の必要性
- 役割特有のコンピテンシーと臨床経験レベルに合わせたカスタマイズ学習体験の開発
- 学生の臨床経験に基づく層別化と分析