医学教育つれづれ

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インフォグラフィックスを用いた臨床サマリーが医学生のパフォーマンスに与える影響

Infographics with Clinical Summaries Improve Medical Student Performance: A Within-Subject Intervention Study with Gender-Based Analysis.

Corral-Gudino, L., Simón-Pérez, C., Pérez-Castrillón, J.L. et al. 

Med.Sci.Educ. (2025). https://doi.org/10.1007/s40670-025-02384-x

link.springer.com

研究背景と理論的基盤

インフォグラフィックスは、テキスト、画像、デザイン要素を組み合わせた視覚表現で、複雑な概念の理解と記憶を促進するツールです。その効果は以下の理論に裏付けられています:

  • 視覚記憶の優位性:視覚記憶は聴覚記憶より堅牢で、学習者の情報保持を効果的に向上させる
  • 二重符号化理論:視覚的・言語的情報が独立して処理され、長期記憶に保存されることで理解と保持が向上
  • 認知負荷の軽減:情報を視覚的に提示することで、処理と解釈に必要な精神的労力が軽減され、複雑な内容がより理解しやすくなる
  • 能動的な関与:学習者が視覚要素と対話し解釈することで理解が深まる

研究手法の詳細

研究デザイン

  • 被験者内教育介入研究:同一の学生が異なる条件下でのパフォーマンスを比較
  • 3学年度(2022-2023, 2023-2024, 2024-2025)にわたる縦断的分析
  • 対象:スペイン・バリャドリッド大学医学部5年生459名

介入内容

  1. リウマチ学セクション(介入群):
  2. 整形外科学セクション(対照群):
    • 追加の教育ツールなし(通常の講義のみ)

評価方法

  • 最終試験:リウマチ学25問、整形外科学75問の多肢選択問題
  • 調査:ツールの使用頻度と有用性に関する学生の認識評価
  • Z-スコアによる標準化分析:各学年間の難易度や採点基準の違いを調整

結果分析

インフォグラフィックスの効果

  • リウマチ学セクションの標準化スコアでは有意な向上(p=0.035)
  • 男子学生では特に顕著な効果(p=0.046)、女子学生では統計的有意差なし
  • 対照群(整形外科学セクション)では効果なし
  • 使用頻度による差:「ほとんど常に使用」と「常に使用」のグループが「使用しない」グループより高得点

ソーシャルメディアスレッドの効果

  • リウマチ学セクションで限定的な効果(KWt p=0.023)
  • 「常に使用」グループのみが他グループと比較して差を示した
  • 女子学生のみで統計的有意差あり(男子学生では効果なし)

学生の認識評価

  • 教育ツールの評価(5点満点):
    1. 実際の患者参加:4.8
    2. インフォグラフィックス:4.4
    3. 対面講義:4.4
    4. ライブポーリング:4.0
    5. ソーシャルメディアスレッド:3.6
  • インフォグラフィックスの評価:
    • 86%が学習に「かなり役立つ」または「非常に役立つ」と評価
    • 72%が科目への興味を「かなり」または「非常に」高めたと回答
    • 85%が他の学生に「おそらく」または「間違いなく」推奨すると回答
  • ソーシャルメディアスレッドの評価:
    • 44%のみが学習に「かなり役立つ」または「非常に役立つ」と評価
    • 44%が科目への興味を「かなり」または「非常に」高めたと回答
    • 56%が他の学生に「おそらく」または「間違いなく」推奨すると回答

性別による差異の分析

  • 男子学生インフォグラフィックスによる成績向上が有意(p=0.046)
    • マルチモーダル学習アプローチへの好みが要因の可能性
    • インフォグラフィックスに対する高いモチベーションが示されている先行研究あり
  • 女子学生:成績向上の有意差なし(p=0.228)
    • 運動感覚的または聴覚的関与を好む傾向があるとの先行研究
    • ただし、インフォグラフィックスの評価は男子学生より若干高い(4.5 vs 4.3)
    • 86%が学習に役立つと評価、測定可能な学業成績以外の教育的価値も示唆

研究の限界と今後の方向性

  1. 無作為化の欠如:選択バイアスの可能性
  2. 調査未回答者(15.9%)の特性分析なし:無回答バイアスの可能性
  3. 文脈依存性:臨床科目向けに調整された介入が基礎科学には適用できない可能性
  4. 交絡変数:事前の学業成績や補助リソースの影響を完全に制御していない
  5. MCQのみの評価:より深い理解や臨床応用スキルを捉えていない可能性

将来の研究方向

  • デジタルツールの異なる教育環境での有効性検証
  • AI技術を活用したパーソナライズされた学習体験の開発
  • OSCEやケースベースディスカッションなど代替評価ツールの活用
  • 基礎科学コースや理論主体の専門分野におけるインフォグラフィックスの有効性検証

実践的含意

  1. インフォグラフィックスは学生の学習ツールとして価値があり、特に複雑な臨床概念の理解を助ける
  2. 性別による学習スタイルの違いを考慮した教育戦略の開発が重要
  3. ソーシャルメディアを教育目的に活用する際は、学生の認識とのギャップを考慮する必要がある
  4. 多様な学習支援ツールの組み合わせが、様々な学習スタイルを持つ学生に効果的