医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

効果的なクリティカルケアシミュレーションプログラムを開発・実施するための12のヒント

Twelve tips for developing and implementing an effective critical care simulation programme
Aidan T. O’Dowd,Natalie L. McEvoy,Christopher Read,Dara O’KeeffeORCID Icon &Gerard F. Curley
Received 17 Jul 2023, Accepted 12 Mar 2024, Published online: 08 Apr 2024
Cite this article https://doi.org/10.1080/0142159X.2024.2331055

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/0142159X.2024.2331055?af=R

医療現場におけるシミュレーショントレーニングは、貴重なトレーニングツールとなっている。シミュレーションは学際的教育に理想的な形成的評価を提供する。シミュレーショントレーニングは、医療スタッフや学生が安全かつ管理された方法でスキルを向上させる練習ができる、忠実かつ没入感の高い環境を提供する。シミュレーショントレーニングにより、スタッフは臨床的緊急事態に備えるスキルを練習することができ、その結果、臨床ケアが最適化される可能性がある。シミュレーション教育の利点はよく理解されているが、クリティカルケアスタッフが使用するプログラムを確立するのは複雑である。その複雑さには、高度なモニタリング機器や換気装置などの必要性に加え、クリティカルケア以外の領域では通常遭遇しない高度に専門化されたシナリオが含まれる。この12のヒントは、医療教育者が救命救急シミュレーションプログラムを確立する際の複雑さを乗り越えるための支援を目的としたものであり、対象者の選択、学習成果、救命救急シミュレーション環境の構築、プログラムの評価と開発に関する推奨事項についてのアドバイスを提供するものである。

 

はじめに
この記事では、クリティカルケアにおけるシミュレーショントレーニングの重要性を強調し、高忠実度の没入型学習環境を通じて知識とスキルの習得を強化する役割を強調している。

計画

1.対象者の選択とスタッフ管理者とのプログラム計画
専門分野やスキルレベル別に対象者を特定し、シナリオを調整し、参加者の専門的範囲に合うようにする。シミュレーションプログラムを効果的に企画・実施するために、スタッフ管理職の支援を得る。

2.クリティカルケアシミュレーションプログラムの開発と実施のためのシミュレーションチームの結成
シミュレーションシナリオの作成と実施に経験豊富なチームを編成し、効果的な学習成果を確保するための教員育成に重点を置く。

3.確立されたシミュレーションプログラムの検討
確立されたシミュレーションのテンプレートやシナリオを検討し、クリティカルケア特有のニーズに適合させる。

4.対象者のコンピテンシーにおけるギャップを特定し、明確な学習目的とともに現場に特化したシナリオを作成する。
実際のクリティカル・インシデントや一般的な合併症に基づいた測定可能な学習目標を盛り込み、対象者の特定のコンピテンシー・ギャップに対応するシナリオを作成する。

プログラムの設計と実施

5.実生活に即した一般的なクリティカルケアシナリオを用いて、対象者に適したシナリオを作成する。
実際のクリティカルケアの課題を再現したシナリオを作成し、参加者にとって有意義な学習と実践の機会を提供できるようにする。

6.利用可能な機器をすべて集め、シミュレーションICU設定の課題を検討する
実際のクリティカルケア環境の複雑さを反映させるために、シミュレーション環境に現実的なICUの機器や技術を装備する。

7.シナリオ開始時に参加者にシミュレーション環境について説明する。
参加者にシミュレーション環境と手順を紹介し、機器の使用とシナリオの目的について明確な

ガイダンスを提供する。

8.主要なテクニカルスキルおよびノンテクニカルスキルの開発に集中するためのツールを参加者に提供する。
換気管理のようなテクニカルスキルと、コミュニケーションやチームワークのようなノンテクニカルスキルの両方を高めることに重点を置く。

9.地域のICUで提唱されている標準治療を実施する。
レーニングの一貫性と適用性を確保するために、シミュレーションシナリオのベンチマークとして地域のプロトコルや基準を使用する。

10.各シナリオの後に、構造化されたインタラクティブな報告セッションを実施する。
学習を強化し、知識のギャップに対処し、パフォーマンスを振り返りやすくするために、徹底的な報告会を実施する。

継続的改善

11.構造化されたフィードバックを得て、シミュレーションプログラムを評価し、継続的に改善する。
フィードバックを継続的に収集し、取り入れてシミュレーションプログラムを改良・強化し、適切かつ効果的なものに維持する。

12.シミュレーションプログラムがICUにおける患者の転帰に及ぼす影響の評価
シミュレーショントレーニングがICUにおける実際の患者の転帰とスタッフの能力に及ぼす影響を測定する。

まとめ/結論
本論文は、クリティカルケアチームのコンピテンシーを向上させ、最終的に患者ケアの転帰を向上させるためには、構造化された綿密な計画によるシミュレーショントレーニングが有効であることを強調することで締めくくられている。