医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

臨床医・教育者のキャリアを豊かにする職務特性:理論に基づく探索的調査

Job characteristics that enrich clinician-educators’ career: a theory-informed exploratory survey
M. Hossein TcharmtchiORCID Icon, Shelley Kumar, Jennifer Rama, Brian Rissmiller, Danny Castro & Satid Thammasitboon
Article: 2158528 | Received 28 Jul 2022, Accepted 10 Dec 2022, Published online: 22 Dec 2022
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https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/10872981.2022.2158528?af=R

 

臨床教育者(CE)は、学術機関が患者ケア、教育、研究という使命を達成するために重要な役割を担っている。しかし、小児科医のCEが専門家として成長し、個人的に満足するための原動力は、まだ解明されていない。CEが専門的な成長と個人的な満足を追求する動機となる職務特性と要因を調査するための探索的調査研究である。

JCMは、1)仕事の意義、2)仕事の結果に対する責任、3)仕事の結果に関する知識という「3つの重要な心理状態」をすべて経験したときにのみ、個人と仕事の満足な結果が得られると仮定している。これらの心理状態は、5つの中核的な職務の次元に対応しています。仕事の意義は、最初の3つの中核的職務の次元が存在することによって高まります。

技能の多様性:異なる技能や才能の使用を伴う多様な活動を業務が必要とする度合い

仕事の同一性:「全体的かつ識別可能な」仕事の完了を必要とし、仕事を最初から最後までやり通すこと

仕事の意義:他人の生活や幸福に対する仕事の重要性と影響力、です。

もう一つの次元である「自律性」は、仕事の結果に対して実質的な自由と裁量を実現することを誘導するものです。

最後の「フィードバック」は、仕事そのものからの内部フィードバックと、パフォーマンスの有効性と実際の仕事の結果に関する知識について直接的かつ明確な情報を受け取る他者からの外部フィードバックを指します。

これらの次元を分析することで、CEの動機付けを理解することができます。JDS(Job Diagnostics Survey)は、JCMに基づくツールである。JDSは、以下の式に従って、「動機付けポテンシャルスコア」(MPS)を生成する。
MPS=(Skill Variety+Task Identity+Task Significance)3x Autonomy x Feedback (スキルの多様性+タスクの同一性+タスクの重要性)

Job Characteristics Model(JCM)をフレームワークとして、JCMから導き出したJob Diagnostic Survey、Global Job Satisfaction尺度、背景からなる22項目の調査票を作成した。2020年1月から3月にかけて、アンケート募集サービスを通じて、自称小児科CE(教育指導的役割の有無)を対象にデータを収集した。調査対象CE総数のデータがないため、回答率は不明である。意義、自律性、業績フィードバックといった中核的な職務の次元における職務特性、および動機付けポテンシャルスコア(MPS)を、記述統計学と回帰モデルを用いて分析した。

回答者201名(うち教育リーダー55名)のうち、70%以上が患者ケア、教育、指導に満足しており、40%以下が管理・学術的活動に満足していた。仕事への満足度には,「有意義さ」(一部の領域),「自律性」(患者ケア/教育),「内部フィードバック」(すべての領域)が有意に影響していた.回帰分析では、スキルの多様性、フィードバック、経験年数が高い仕事満足度と関連し、MPSは仕事満足度全体の予測因子であった。JCMは、CEの職場における動機とニーズを理解し、職務の充実を通じた専門的な能力開発を導くために活用することが可能である。

CEを動機づける職務特性を明らかにすることは、CEの専門的な開発を促進し、ひいては教育機関のミッションに影響を与える重要なステップである。今回の探索的調査の結果、JCMは、CEが個人的な満足を得ながら専門的な成長を追求する動機となる職務の特徴を通じて、職務の充実に焦点を当てるという結果となった。その結果、JCMの中核的な職務の次元から計算される動機づけポテンシャルスコアは、患者ケア、教育、指導、管理業務、学術活動など、すべての職務に関連する仕事の総合満足度と関連があることがわかった。個々の中核的職務の次元は、程度の差こそあれ、報告された職務満足度や様々な職務に関連する業務に注目すべき影響を及ぼしていた。管理業務と学術活動は、本研究のCEたちの大部分にとって、最も満足度の低い2つの領域であった。教育あるいはその他の分野で指導的な役割を担っていることは、特に教育や学術的な活動において、仕事の満足度と関連していた。