医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

表面下を掻く。組織文化がカリキュラムの改革に与える影響

Scratching beneath the surface: How organisational culture influences curricular reform
Adarsh P. Shah, Kim A. Walker, Lorraine Hawick, Kenneth G. Walker, Jennifer Cleland
First published: 02 December 2022 https://doi.org/10.1111/medu.14994

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/medu.14994?af=R

はじめに
医学教育・訓練を改善する手段として,カリキュラムの改革がしばしば提案される.しかし,組織文化が変化に与える影響に十分な注意が払われていないためか,改革そのものが顕著な変化につながらないことがある.我々は、外科系教育における組織文化と変化の相互作用を調べるために、外科系初期研修の全国的な改革を自然な機会として利用した。具体的な研究課題は、「組織文化は、Improving Surgical Training(IST)の実施にどのような形で影響を及ぼしたか」というものである。

研究方法
本研究は、社会構成主義に基づく質的研究である。2020年から2021年にかけて、スコットランド全域の中核的な外科研修生(n=46)とその指導にあたるコンサルタント(n=25)に対してインタビューを実施した。データのコーディングと分析は、当初は帰納的に行われた。テーマは、IST導入の障壁または実現要因として、多くの文化的要因の重要性を示していた。そこで、ジョンソン(1988)の文化的ウェブモデルを用いて演繹的な二次データ分析を行い、組織文化のさまざまな要素とそれらがISTに及ぼす影響を特定・検討した。

結果
ジョンソンの6つの要素、儀式とルーチン(例:部門ローテーション)、物語(例:歴史的なトレーニング規範と文化)、象徴(例:フィードバックの仕組み、可視性と教育に置かれた価値)、権力構造(例:ローカルな文脈で誰が権力を持っているか)、組織構造(例:関係と説明責任)、統制システム(例:コンサルタントの職務計画やサービス目標)、そしてこれらがどう相互に影響を及ぼすかを文化ウェブによって詳細に理解することができた。しかし、外生的な事象が変化に及ぼす影響については明らかにできなかった。

結論
今回のデータから、このカリキュラム改革が病院によって成功の度合いが異なる文化的理由が明らかになり、カリキュラム改革は単に推奨事項を実践することではないことが補強された。医学教育やトレーニングにおける変化を計画し、評価する際には、さまざまな背景を考慮する必要がある。