医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

日本における医師の服装が患者の共感知覚に及ぼす影響:プライマリーケアにおける準無作為化対照試験

Effect of physician attire on patient perceptions of empathy in Japan: a quasi-randomized controlled trial in primary care

Takaharu Matsuhisa, Noriyuki Takahashi, Kunihiko Takahashi, Yuki Yoshikawa, Muneyoshi Aomatsu, Juichi Sato, Stewart W. Mercer & Nobutaro Ban
BMC Family Practice volume 22, Article number: 59 (2021)

bmcfampract.biomedcentral.com

 

どんな研究

 日本の家庭医の服装が患者が感じる関係性の共感という観点から影響を測定する

 

先行研究

 患者は、医師の服装は重要であり、ケアに対する満足度と関連していると報告

 日本での先行研究によると,ほとんどの患者はプライマリ・ケアの場で医師が白衣を着ることを好む

 家庭医療専門医の中には,カジュアルな服装の方が患者との共感を得られると考え,白衣以外の服装を好む者がいる

 

手法

CARE Measureは、有効性と信頼性が実証されている、患者が報告する共感性の指標として広く用いられている

 

背景
医師の服装が患者と医師の関係に与える影響についての定量的な研究は限られている。本研究では、日本の家庭医の服装が医療の「人間的」側面に与える影響を、患者が感じる関係性の共感という観点から測定することを目的とした。

 

研究方法
本研究は、日本のプライマリークリニックで実施された多施設共同の前向き対照試験である。家庭医の服装(白衣とカジュアル)が、患者が感じる共感性に与える影響を検討した。家庭医は、診察時に白衣を着用する週とカジュアルな服装を着用する週を交互に割り当てられた。患者の医師に対する共感は、自己評価式のCARE(Japanese Consultation and Relational Empathy)測定法を用いて評価した。線形混合モデルを用いて、医師の中に入れ子になった患者のクラスター効果、患者の年齢と性別、医師の性別と臨床経験年数を調整して、CARE Measureのスコアを分析した。また、共感度の患者の性差についても、同様の方法でボンフェローニ調整を行って分析した。

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結果
7人の家庭医の計632人の患者が、白衣を着て受診した場合(n=328)と、カジュアルな服装で受診した場合(n=304)に振り分けられた。白衣を着て受診した場合とカジュアルな服装で受診した場合では、全体的にCARE Measureのスコアに差はなかった(p = 0.162)。患者の性別によるサブグループ分析では、男性患者のCARE Measureスコアは、白衣着用群よりもカジュアル群の方が有意に高かった(調整後のp値=0.044)。女性患者のスコアは、白衣群とカジュアル群で差がなかった(調整後のp値=1.000)。

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結論
本研究では、プライマリ・ケア環境における医師の服装(白衣またはカジュアルな服装)は、患者が感じる関係性の共感に全体的には影響しないことが示された。しかし、カジュアルな服装をしている医師の男性患者は、医師の共感度が高いと報告した。共感性を服装のような単純な変数に還元することはできないが、白衣は文脈によっては患者にマイナスの影響を与える可能性がある。家庭医は服装を慎重に選ぶべきである。