医学教育つれづれ

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米国の医学部教員に対する有給育児休暇の推奨は制定されているか?

Are medical associations’ paid parental leave recommendations instituted for United States medical school faculty?
Hannah Gurley,Rebecca S. Lufler,Brian J. Goldberg,Christopher Ferrigno &Adam B. Wilson
Article: 2487656 | Received 03 Jun 2024, Accepted 27 Mar 2025, Published online: 02 Apr 2025
Cite this article https://doi.org/10.1080/10872981.2025.2487656

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/10872981.2025.2487656?af=R

研究の背景と目的

この研究は、米国の医学部で提供されている教員向け育児休暇制度を包括的に分析し、米国の主要医学協会が推奨する基準との整合性を評価したものです。特に注目すべき点として、これは現在までで最も包括的な米国医学部の育児休暇制度の分析となっています。

研究方法

  • 2022年に米国内の156校の医学部(MD付与校)のうち134校(85.9%)の公開されている育児休暇制度を分析
  • 各医学部のウェブサイトや人事部ウェブサイトから情報収集
  • 不明確な点は人事担当者に直接問い合わせて確認
  • 各制度について:
    1. 独自の育児休暇制度があるか、またはFMLA(家族医療休暇法)に依存しているか
    2. 誰が受給資格を持つか
    3. 有給か無給か
    4. 提供される有給休暇の週数
    5. 制度名の用語
    6. 家族形成方法(出産、養子縁組、里親など)による違い

主な調査結果

有給・無給育児休暇の状況

  • 平均6.72週間(中央値6週間)の有給出産休暇が提供されている
  • 平均5.82週間(中央値6週間)の有給非出産親休暇が提供されている
  • 134校中42校(31.3%)が何らかの給与支給を伴う12週間以上の出産休暇を提供
  • しかし完全有給の12週間出産休暇を提供しているのは29校(21.6%)のみ
  • 非出産親向けに何らかの給与支給を伴う12週間以上の休暇を提供するのは35校(26.1%)
  • 完全有給の12週間非出産親休暇を提供しているのは21校(15.7%)のみ
  • 有給育児休暇に加えて、43校(32.1%)が無給出産休暇を、39校(29.1%)が無給非出産親休暇を提供(有給休暇消化後に使用可能)

FMLA(家族医療休暇法)の利用状況の詳細

  • 79校(59.0%)がFMLAを明示的に育児休暇制度に組み込んでいる
  • 25校(18.7%)はFMLAのみを育児休暇オプションとして提供(最大12週間の無給休暇)
  • 54校(40.3%)はFMLAと並行して独自の育児休暇制度を提供
  • 8校(6.0%)はFMLA利用時に有給休暇や病気休暇の消化を義務付け
  • 45校(33.6%)はFMLA利用時の有給休暇消化を任意としている

州法による有給家族休暇の影響

  • 調査時点で9州とコロンビア特別区が有給家族休暇法を制定済み
  • 追加4州が2026年に類似法を制定予定
  • 調査対象の134校中43校(32.33%)が州法による有給家族休暇がある州に所在
  • カリフォルニア州(16校所在)は給与の60~70%の部分的補償で8週間の育児休暇を法的に要求
  • ロードアイランド州(1校所在)は6週間の有給育児休暇を提供

地域・学校種別による差異の詳細分析

  • 私立学校は公立学校よりも多くの有給出産休暇を提供(p < 0.001、効果量大)
  • 北東部の医学部は平均9.5週間の有給出産休暇を提供し、南部の3.9週間と比較して有意に長い(p < 0.001、効果量大)
  • 中部と西部の学校はその中間
  • カーネギー分類(研究活動の度合いによる大学分類)による有意差は見られなかった(p = 0.287)

育児休暇制度の用語と包括性

  • 最も一般的な制度名:
    • 「育児休暇」(Parental Leave):59校(44.36%)
    • 「家族休暇」(Family Leave):23校(17.29%)
    • 「出産休暇」(Maternity Leave):12校(9.02%)
    • その他「子育て休暇」「出産養育休暇」「主養育者休暇」など様々
  • 87校(64.9%)が生物学的出産、養子縁組、里親などの家族形成方法による違いを明示的に設けていない
  • 違いを設けている26校のうち、最も一般的な違いは出産する親に追加の休暇時間を提供すること(17校)

現状の問題点と影響

医学協会の推奨との不一致

  • 米国小児科学会(AAP)と米国医師会(AMA)は12週間の有給育児休暇を推奨
  • 米国産婦人科学会(ACOG)は最低8週間の完全有給育児休暇を必須としている
  • しかし調査対象校の約78.4%は12週間の完全有給出産休暇を提供していない
  • 84.3%は12週間の完全有給非出産親休暇を提供していない

有給育児休暇の利点

  • 出産後のケアが12週間の「継続的なプロセス」であることが健康上の利点につながる
  • 有給育児休暇は以下と関連している:
    • 授乳率の向上
    • 予防接種率の向上
    • 乳児死亡率の低下
    • 産後うつ病発症率の低下
    • 子どもの認知テストスコアの向上
    • 新生児と出産親の再入院率の47~51%減少

ジェンダー平等への影響

  • 女性医師は男性パートナーよりも多くの家事・育児責任を負う傾向がある
  • 不十分な育児休暇は女性教員のキャリア不満、バーンアウト率上昇、離職率上昇と関連
  • 男女間の育児休暇の平等は、子育て責任の男性の貢献増加につながる
  • 無給休暇のみの場合、男性教員の最大86%が育児休暇を取らないまたは制限する
  • これにより女性教員は無給休暇を取らざるを得ず、収入減少を招く一方、男性教員は収入損失を避けるために仕事を継続
  • 結果として、リーダーシップポジションにおける男性の割合が高くなる一因となる

包括性と家族形成方法の考慮

  • 女性医師は一般人口の2倍の不妊率(約25%)に直面している
  • 女性医師は平均7年間出産を遅らせる傾向がある
  • 睡眠不足、食事の質低下、運動機会の制限、ストレス増加などが医師の不妊リスク上昇に寄与
  • 様々な家族形成方法(養子縁組、里親、代理出産など)を明示的に認める育児休暇制度の重要性が高まっている

研究者の提言

  1. 医学協会の推奨との整合性向上
    • 育児休暇制度を医学的根拠と現行の医学協会推奨に合わせて再評価する
    • 完全給与補償と福利厚生(健康保険など)の継続を含める
  2. 包括的かつ明確な制度設計
    • 出産・非出産を問わず、すべての親に一貫して適用される制度にする
    • 養子縁組や里親などの様々な家族形成方法を平等に扱う
    • ジェンダー中立的な言語を使用する
  3. 透明性と明確性の確保
    • 育児休暇制度を独立した文書として用意し、容易にアクセス可能にする
    • 明確に定義された用語と具体的な言語を使用する
    • 定期的に見直し・改訂を行う
    • 個人が家族計画の決定を事前に行う際に情報を活用できるようにする
  4. 公平性の促進
    • 育児休暇に対するペナルティを排除する
    • 出産親と非出産親の両方に十分かつ公平な休暇を提供する