Association between residents’ work hours and patient care ownership: a nationwide cross-sectional study in Japan
Hirohisa Fujikawa, Hidetaka Tamune, Yuji Nishizaki, Kazuya Nagasaki, Hiroyuki Kobayashi, Masanori Nojima, Miwa Sekine, Taro Shimizu, Yu Yamamoto, Kiyoshi Shikino & Yasuharu Tokuda
BMC Medical Education volume 25, Article number: 385 (2025)

目的
現在、医師の労働時間規制の時代において、患者ケア・オーナーシップ(PCO)が注目されている。 本研究の目的は、労働時間とPCOの関連を調査することである。
方法
本研究は全国規模の横断研究である。 本研究では、総合内科専門医研修試験を終了した研修医を対象とした。 主要アウトカムはPCOで、日本語版PCO尺度(J-PCOS)を用いて評価した。 副次的アウトカムは、J-PCOSの4つの側面(すなわち、自己主張性、当事者意識、勤勉性、「頼れる」人であること)であった。 説明変数は週労働時間であった。 多変量線形回帰分析を用いて関連を検討した。
結果
研究対象者の特性
- GM-ITEを受けた9,106人のうち、2,050人が研究参加に同意
- データ欠損のある214人を除外し、最終的に1,836人のデータを分析
- 週間勤務時間の最も一般的な回答は「50時間未満」(カテゴリー1、21.5%)、次いで「60~70時間未満」(カテゴリー4、20.0%)
- 男性68.6%、女性31.4%
- PGY-1が49.1%、PGY-2が50.9%
- 受け持ち入院患者数は5-9人が最多(52.3%)
PCOスコアの詳細
多変量解析の結果
- 60~70時間未満(カテゴリー4)を基準とした場合:
- 下位尺度の詳細結果:
- 「積極性」:70~80時間勤務(+0.19, p<0.05)と80~90時間勤務(+0.25, p<0.01)で有意に高値
- 「頼りになる人」:70~80時間勤務(+0.27, p<0.05)と80~90時間勤務(+0.37, p<0.01)で有意に高値
- 「所有意識」と「勤勉性」では勤務時間との有意な関連は見られなかった
考察
PCOの多面的理解
- 研究者らは「シフトワーカー的メンタリティ」という懸念がPCOの感情的側面を強調する傾向があると指摘
- しかし本研究では、週間勤務時間は「所有意識」(PCOの感情的側面)とは関連がなかった
- 一方、PCOの概念は近年、認知的・行動的側面も含む多面的な概念へと拡大
- 本研究では、長時間勤務(週70~90時間)が「積極性」と「頼りになる人」という側面と関連していた
勤務時間規制への示唆
- 日本では2024年4月に医師の勤務時間規制が実施され、当初は週80時間が上限と予想
- PCOの観点からは、80時間の勤務時間制限が必ずしも最良の結果をもたらさない可能性
- PCOを育成するには一定の時間が必要で、週80~90時間の勤務が選択肢となる可能性
メンタルヘルスとのバランス
- 過度に長い勤務時間はメンタルヘルスの悪化につながる懸念
- 複数の研究が週80時間の制限がメンタルヘルスに好ましい影響を与えることを示唆
- 米国の研究では、週80時間以上の勤務はバーンアウト率が約70%、80時間未満では約40%
- 適切な勤務時間の決定には患者ケアの質や研修医教育など他の要因も考慮が必要
個別化の可能性
研究の意義
- 本研究は、医師勤務時間規制時代における週間勤務時間とPCOの関連を検証した初の仮説検証型研究
- 全国的なJAMEPネットワークのデータに基づき、外的妥当性が高い
- PCOSは確立されたPCO評価ツールであり、測定の信頼性が高い
国際的視点
- 勤務時間とPCOは文化やシステムの影響を受ける可能性があり、日本以外の国との比較研究が、両者の関係をより良く理解するために有益である可能性
結論
適切な研修医の勤務時間を決定するためには、多くの要素を総合的に考慮する必要があるが、PCO研修の観点からは、週80~90時間という勤務時間も選択肢の一つであろう。