医学教育つれづれ

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専門医キャリア選択動機調査票(MMSCCQ)の作成と検証-方法論的研究

Development and validation of motivators for medical specialist career choice questionnaire (MMSCCQ) - a methodological study

Anuradha Nadarajah, Shamala Ramasamy, Pathiyil Ravi Shankar & Chandrashekhar T. Sreeramareddy 
BMC Medical Education volume 22, Article number: 474 (2022) 

 

bmcmededuc.biomedcentral.com

 

はじめに
若手医師の専門医キャリア選択に影響を与える動機づけ要因を評価する有効な尺度は存在しない。本研究では、専門医のキャリア選択に影響を与える動機づけ要因を評価するための有効な尺度を開発し、MMSCCQを作成した。

 

研究方法
三次医療圏の病院のハウスオフィサー(HO)を対象に探索的逐次混合型調査を行った。文献調査によりインタビューガイドを作成した。7人のハウスオフィサーがオンライン、1対1の音声録音によるデプスインタビュー(IDI)に参加した。主題分析により特定された7つのサブテーマと33のコードを用いて、MMSCCQを作成した。各モチベーションの重要度は、5段階のリッカート尺度で評価された。MMSCCQは事前テストされ、262名のハウスオフィサーから無作為抽出されたサンプルが、オンライン調査に参加した。信頼性統計、探索的因子分析、確認的因子分析を用いて、心理測定評価を行った。

 

結果
主題分析によって特定された7つの主要テーマは、「仕事のスケジュールと私生活」、「研修の機会」、「過去の仕事経験」、「専門分野の特徴」、「キャリア展望」、「患者ケアの特徴」、「社会的要因」に関連する因子とラベル付けされた。最も評価が高かったのは、「過去の職務経験」と「患者ケアの特徴」であった。回答率は71%、185名のHOの平均年齢は26.7歳(SD=1.6)であった。女性が63.8%を占めた。Cronbachのアルファで測定した質問紙全体の内部一貫性は0.85であった。各構成要素は許容可能な内的一貫性を示した。33項目のうち26項目は探索的因子分析の結果も維持され,7構成要素,64.9%の分散が得られた。確認的因子分析の結果、構成概念の妥当性が確認された。

 

結論
詳細なインタビューにより、専門医のキャリア選択の動機となるいくつかの広範な構成要素について、より深い洞察が得られた。その結果、MMSCCQの構成要素や項目のインプットとなる主要テーマと下位テーマが同定された。MMSCCQは、信頼性、構成概念および内容の妥当性を十分に備えている。MMSCCQは、信頼性、構成要素妥当性、内容妥当性ともに十分であり、今後の研究において、類似の文脈や環境での適用を検討する前に、さらなる研究が必要であると思われる。

 

MMSCCQの項目

A. 仕事のスケジュール(項目1-3) 
A1. オンコールがない、またはあまり忙しくない  
A2. シフト制勤務  
A3. 勤務時間が決まっている 
B. 患者ケアの特徴(項目4~8)
B4. 多職種または多様な疾患・症例 
B5. 急性期患者への対応 
B6. 患者との交流が少ない  
B7. 介入・治療後の早い結果・回復  
B8. 継続的な患者ケア  
C. 専門性(項目9~15) 
C9. やりがいのある分野であること
C10. 医療ベースであること  
C11. 外科系  
C12. 医療法上の問題が少ない専門分野 
C13. より実践的な技術や手技を必要とする
C14. 柔軟な労働条件 
C15. 専門分野の名声または評判  
D. 個人的要因(項目16-21) 
D16. 家族・親戚の影響・助言  
D18. 専門分野への個人的な興味  
D19. 仕事のやりがい  
D20. 医学部での経験 
D21. ソーシャルメディアや一般人の影響力  
E. 過去の仕事経験(項目22~25) 
E22. 部署内のチームワークの良さ 
E23. 学生時代の出来事・決定的瞬間 
E24. 学科での指導・教育活動 
E25. 専門家・先輩のロールモデル・影響 
F. 研修要因(項目 26-29) 
F26. 並行方法の利用可能性 
F27. 準備・訓練コースの有無 
F28. 研修の長さ(短さ) 
F29. 研修の費用(安価)
G. 進路の見通し(項目30〜33)
G30. 民間企業や個人事業主での将来の可能性
G31. 経済的なやりがい 
G32. 将来的に参入できる様々なサブスペシャリティの分野
G33. 将来的に教える機会があること