医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

地域密着・救急診療のための自己評価尺度

Self-assessment scale for the community-based and emergency practice
Takao Wakabayashi, Yoshihisa Tsuji, Takeshi Yamamoto, Hitoshi Sohma & Wari Yamamoto 
BMC Medical Education volume 22, Article number: 799 (2022)

bmcmededuc.biomedcentral.com

 

背景
現在の医学教育において、地域に根ざした高齢者のプライマリケアは不可欠なテーマである。本研究では、地域住民を対象とした臨床・救急実習のための評価尺度(C-CEP)を確立することを目的とした。

方法
C-CEPの自己評価尺度を4つのステップで作成した。まず、日米英の学会から教育目標に関する論文をレビューした。また、態度、技能、知識に関する教育目標についてMEDLINEを検索した。これらを総合して、23項目をC-CEPの教育目標として設定した。次に,この23項目について,医学部5年生(n=195)から回答を得た。そして、その回答を用いて探索的因子分析(EFA)を行い、自己評価尺度の基本構造を決定した。最後に,EFAを発展させた自己評価尺度の適合性を確認するため,確証的因子分析(CFA)を行い,項目の修正を行った。

姿勢 

1 ER における患者とのコミュニケーション
2 ERでの医療チーム間のコミュニケーション¥
3 他病院のスタッフとのコミュニケーション

技能 
4 医療面接
5 身体診察 
6 ER での検査計画 
7 患者に説明し、検査の同意を得る
8 生命維持のための処置の方法と適応の説明 
9 基本的処置の方法と適応 
10 ERにおけるバイタルサインの意味

知識 

11 ERにおける専門家支援の役割
12 ER における公文書の取扱い
13 診療記録の申請・守秘・開示のルール
14 救命救急センターにおける医療チームの構成
15 救命救急センターにおける医療チームの連携
16 救命救急センターにおける医療保険の役割 
17 地域における実習機関の役割
18 救急現場におけるプライマリケア医の役割 
19 地域によるプライマリ・ケア医の役割の違い
20 施設におけるプライマリケア医の役割【
21 地域の健康問題の特徴
22 臨床上の問題を解決するために、エビデンスを参照する
23 一般的な疾患の管理について、エビデンスを用いて説明できる

 

結果
EFA および CFA の結果、C-CEP スケールは 4 因子 15 項目で構成されていた。救急医療に対する姿勢とコミュニケーション」「基本的な臨床能力」「地域医療に関する知識」「根拠に基づく医療に関する知識」「忍耐力」の4因子15項目から構成されていた。モデルの適合指標は許容範囲内であった(Goodness of Fix Index = 0.928, Adjusted Goodness of Fit Index = 0.900, Comparative Fit Index = 0.979, Root Mean Square Error of Approximation = 0.045).尺度の信頼性の推定値であるMcDonaldのωの値は、4因子すべてで0.7以上であった。テスト・リテスト信頼性については,すべての因子でクラス内相関係数≧0.58であった。C-CEP スケールの 4 因子はすべて医療従事者評価スケールの下位尺度と正の相関を示した。

 

救急医療における態度・コミュニケーション

 ER での医療チーム間のコミュニケーション
 ER 内での患者とのコミュニケーション
 他病院のスタッフへのコミュニケーション

基本的臨床能力

 生命維持処置の方法と適応を説明すること
 患者に説明し、検査の同意を得ることができる 
 基本的処置の方法と適応 
 ERにおけるバイタルサインの意味 
 ERにおける検査計画 
 身体診察 

地域医療に関する知識

 施設における主治医の役割 
 地域が抱える健康問題の特徴 
 地域による主治医の役割の違い
 地域における実地機関の役割 
 救急現場における主治医の役割 
  救急現場における医療保険の役割

エビデンスに基づく医療に関する知識

 臨床上の問題を解決するために、エビデンスを参照すること 
 一般的な疾患に対する管理について、エビデンスを用いて説明できる 
 カルテの運用、守秘、開示のルール
 救急外来における医療用語の構成
 ERにおける専門家支援の役割 

 

結論
我々は、学生の能力を評価するための有効かつ信頼性の高い自己評価尺度を開発した。