医学教育つれづれ

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尺度を用いた医学生の病歴聴取の臨床推論の評価

Assessing clinical reasoning in undergraduate medical students during history taking with an empirically derived scale for clinical reasoning indicators

Sophie Fürstenberg, Tillmann Helm, Sarah Prediger, Martina Kadmon, Pascal O. Berberat & Sigrid Harendza
BMC Medical Education volume 20, Article number: 368 (2020) Cite this article

 

bmcmededuc.biomedcentral.com

 

背景
臨床推論プロセスは、生物医学的知識、問題解決戦略に関する知識、診断理由に関する知識を必要とし、医師の日常診療の重要な要素であるが、評価することは困難である。本研究の目的は、CRI-HT-S(Clinical Reasoning Indicators-History Taking-Scale)を実証的に開発し、医学生の臨床推論能力を病歴聴取を伴うシミュレーションで評価することである。

方法
2017年の質的研究で同定された臨床推論能力の指標から、評価用の5点リッカート尺度を含むClinical Reasoning Indictors-History Taking-Scale(CRI-HT-S)を設計した。臨床推論能力の指標を評価するために、3つの医学部から65名の医学生が、病院での最初の勤務日を模擬した初期研修医の役割で360度評価に参加した。

評価は3つの段階から構成されている。1)5人の模擬患者との診察時間、2)患者の次の診断ステップを整理し、他の医療従事者と交流するための管理段階(2.5時間)、3)患者を研修医に引き渡す段階(30分)である。動悸を伴う42歳女性(患者1)、倦怠感と喀血を伴う53歳男性(患者2)、腹痛を伴う58歳女性(患者3)、脇腹痛を伴う54歳男性(患者4)、関節リウマチと発熱を伴う36歳女性(患者5)という5つの異なるコンテクストの患者を模擬した診察時間とハンドオーバーの様子をビデオに記録した。

325人の患者の診察のビデオがCRI-HT-Sを用いて評価されました。因子分析を行い、学生の成績を学部医学研修の進度に応じて比較した。

・CRI-HT-Sの内容

1.会話の主導権を握る

2.関連情報の認識と応答

3.症状の特定

4.病態生理学的思考を示す具体的な質問をする

5.論理的な順序で質問をする

6.患者との確認

7.要約

8. データ収集と効率化。

各項目は、5段階のリッカート尺度で評価された。

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結果
CRI-HT-Sの臨床推論指標は,臨床推論に関連する3つの因子(1)質問の焦点化,2)文脈の作成,3)情報の確保)に負荷をかけていた.これら3つの因子(因子1:4.07±0.47、因子2:3.72±0.43、因子3:2.79±0.83)について、学生の得点は有意に異なっていた(p<0.001)。

 

結論
新しく開発されたCRI-HT-Sは、病歴撮影時の臨床推論指標の定量的評価に有効であった。その3要素構造は、臨床推論のさまざまな側面を探るのに役立った。CRI-HT-SがOSCEや職場ベースの臨床推論評価の尺度として使用される可能性があるかどうかは、より大規模な学生コホートを用いた更なる研究で調査されなければならない。