医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

臨床指導医の視点から見た、研修医の失敗を許容することの複雑さ

‘It depends’: The complexity of allowing residents to fail from the perspective of clinical supervisors
Jennifer M. KlasenORCID Icon, Pim W. TeunissenORCID Icon, Erik W. DriessenORCID Icon & Lorelei A. LingardORCID Icon
Published online: 11 Oct 2021
Download citation  https://doi.org/10.1080/0142159X.2021.1984408   

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/0142159X.2021.1984408?af=R

 

目的

臨床指導者は、教育目的で研修生の失敗を許容することがあることを認めている。しかし、どのようにして指導医が特定のケースで失敗を認めるかどうかを決定しているのかは不明である。このような判断は、教育的には強力であるが臨床的にはデリケートな現象であるため、会話に反映させるためにも必要である。

*失敗の許容

研修生の臨床パフォーマンスを監督しているときに、監督者は直感とさまざまな要因の非線形な相互作用の両方に影響されて、研修生の差し迫ったミスを検出し、介入する機会があったが、研修生の教育上の利益が患者への(潜在的な)影響を上回ると考えられたため、そうしないことを選択することなど。

 

材料と方法

19名の指導医が半構造化インタビューに参加し、臨床研修において失敗を許容するかどうかの判断をどのように見ているかを探った。構成主義的なグラウンデッド・セオリーの方法論に基づき、反復的に収集されたデータと分析は、理論的なサンプリングに基づいて行われた。

 

結果

教育目的のために研修医の失敗を認めることを検討した事例を思い出し、監督者はこれらを直感的で瞬間的な決定とした。事後的な考察では、これらの決定に影響を与えたと思われる4つの要因を明確にすることができた

患者要因:失敗が患者に許容できないリスクをもたらす場合には失敗を認めない

上司要因:不確実性に対する安心感が重要

研修生要因:自信過剰な研修生は失敗を許されないが、「妥当な」レベルの自信を持つ研修生は失敗を許されるかもしれない。

環境要因:経験豊富な看護師がいることや、処置に十分な時間があることなど、環境要因が判断に影響する。

患者要因が第一の要因であると報告されたが、これらの要因は動的かつ非線形な方法で相互に影響し合っているようであり、失敗を許すかどうかの監督者の判断は、ある状況から次の状況へと予測できない可能性がある。

 

結論

指導医は、その場その場で多くの判断を下すが、研修医の失敗を許容することもその一つであると思われる。よく考えてみると、指導医は自分の判断が臨床研修環境の繰り返し起こる要因によって形成されていることを理解している。これらの要因が複雑に絡み合っているため、このような決定を予測することは不可能ではないにしても難しい。しかし、これらのダイナミックな要因を表現する言葉を持つことは、臨床教育者がこのハイステークスな教育戦略について意味のある議論をするためのサポートとなるでしょう。

 

ポイント

指導医は、教育目的で研修生が臨床活動に失敗することを許容し、必要であれば、患者に危害を加えないように介入する。

失敗を許す指導医の判断は、患者、研修生、監督者、環境という4つの主な要因に影響される直感的なものであり、それらは複雑で非線形な方法で相互に作用する。

このような指導医の判断はリスクが高く、ある状況から次の状況まで予測できないことがあります。

この現象の定義と言語を開発することは、臨床指導医がこの教育戦略について意味のある議論をすることをサポートします。