医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

19項目の「臨床実習における患者フィードバック」(PFCP)質問票

Let’s ask the patient – composition and validation of a questionnaire for patients’ feedback to medical students

Karin Björklund, Terese Stenfors, Gunnar H. Nilsson, Hassan Alinaghizadeh & Charlotte Leanderson
BMC Medical Education volume 21, Article number: 269 (2021)

 

bmcmededuc.biomedcentral.com

 

背景

医学生にとって、患者との出会いの中で適切なコミュニケーションをとり、患者中心のアプローチを維持することは重要なスキルである。このようなスキルを身につけるためには、臨床の先生からのフィードバックが必要となります。しかし、患者との出会いにおけるコミュニケーションや患者中心の対応に関する知識や技能を体系的に学生にフィードバックすることを、患者に求めることはあまりない。患者が学生にフィードバックする方法の一つとして、アンケートがあるが、そのような有効なフィードバックアンケートはない。本研究では,医学生の臨床現場におけるコミュニケーション能力や患者中心主義に関する患者からのフィードバックを行うための質問票を作成し,その有効性を検証することを目的とした。

 

研究方法

本研究は、(a)質問票の作成と(b)質問票の検証からなる。質問票の作成は,(1)文献調査,(2)項目の選択と構成,項目プールの構築,(3)項目内容の検証,(4)質問票の適用性の検証からなる。項目は、Calgary-Cambridge Guide(Kurtz S, Silverman J, Benson J and Draper J, Acad Med 78:802-809, 2003)、「Swedish National Patient Survey」(National Patient Survey, Primary Health Care, 2020)、Braendらによる患者評価フォーム(Tidsskr Nor Laegeforen 126:2122-5, 2006)、および追加開発した項目に由来する。項目は、65人の患者、22人の学生、8人の臨床指導者、6人の臨床教師からのフィードバックを経て、さらに発展させた。検証プロセスでは、246名の患者が80名の学生にフィードバックを行いました。質的内容分析と心理測定法を用い、探索的因子分析により内部妥当性を評価した。Cronbach's alphaを用いて項目の信頼性を検証した。

 

結果

このプロセスにより、19項目の「臨床実習における患者フィードバック」(PFCP)質問票が作成された。構成的妥当性により、相談的アプローチと情報の伝達という2つの次元が明らかになった。内部一貫性は高かった。テーマ分析の結果,次の3つのテーマが得られた:相談の個人的なアジェンダを捉える能力,相談との整合性,構成要素と特徴。学生は,PFCP質問票が,臨床現場での学習を促進する有用なフィードバックを提供すると報告した。

 

結論
本研究の結果から,この質問票は,医学生に対する患者のフィードバックのための,有効で信頼性が高く,内部的に一貫した手段であることが示された。参加者はこの質問票が臨床実習でのフィードバックの提供に有用であると考えた。しかし,職場での学習におけるフィードバックツールとしてのPFCP質問票の適用性については,さらなる研究が必要である。

 

19項目の「臨床実習における患者フィードバック」(PFCP)質問票

1. 受診の理由や前回受診してからのことを説明する機会がありましたか?(F1)

2. あなたの問題に関するあなた自身の考えを説明する機会がありましたか?(F1)

3. 自分の問題について悩んでいることがあれば、説明する機会がありましたか?(F1)

4. 診察中に何かしてほしいことや始めてほしいことがあったかどうか、説明する機会がありましたか?(F1)

5. 学生は、あなたが話した内容を要約して、あなたの悩みの原因を正しく理解したことをあなたに確認しましたか?(F1)

6. 医療上の質問について、その理由を理解できるように説明してくれましたか?(F2)

7. 臨床検査の際、なぜそのような検査をするのか説明がありましたか?(F1)

8. フォローアッププラン/治療について話し合う際、学生はあなたの問題に対するあなた自身の考えを考慮してくれましたか?(F2)

9.あなたが治療計画に参加できるような情報や説明を学生から受けましたか?(F2)

10.学生は提案されたケア/治療に関する情報を、あなたが理解できるように提供しましたか?(F2)

11. 学生は薬に関する情報をあなたが理解できるように提供しましたか?(F2)

12. 医療機関への連絡が必要な症状について、理解できるような情報を提供していたか。(F2)

13. 学生は与えられた情報が解釈可能かどうか尋ねましたか?(F2)

14. 心配の原因について、訪問前に抱いていた疑問を持ち出す機会はありましたか?(F2)

15. 学生は、あなたのケア/治療に関する意思決定プロセスにあなたを参加させましたか?(F2)

16. あなたは自分の治療に関する意思決定に、自分の望む範囲で参加しましたか?(F2)

17. 学生と一緒に決めた初期プランに満足していますか?(F2)

18. 学生があなたに思いやりと配慮をもって接してくれたと感じましたか?(F1)

19.学生があなたに敬意と尊厳をもって接してくれたと感じましたか?(F1)

項目が相談アプローチ(F1)と情報伝達(F2)の2つの次元に分かれていることを示す