医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

診断チェックリストは診断エラーを減少させる。

Differential diagnosis checklists reduce diagnostic error differentially: A randomised experiment
Juliane E. Kämmer, Stefan K. Schauber, Stefanie C. Hautz, Fabian Stroben, Wolf E. Hautz
First published: 21 July 2021 https://doi.org/10.1111/medu.14596

 

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/medu.14596?af=R

 

はじめに

誤った診断や見逃しは、医療ミスの大きな原因となっている。代替診断を促すプロンプト(prompt)や鑑別診断チェックリスト(DDXC)は、診断精度を高めることができるのか?また、これらの介入は、診断プロセスやセルフモニタリングにどのような影響を与えるのでしょうか?

 

方法

上級医学生(N = 90)を4つの条件のいずれかに無作為に割り当て、コンピュータを使った6つの患者事例を完成させた。グループ1(プロンプト)は、診断テストの結果を得る際に検討したすべての診断を書き出し、最終的に順位をつけるよう指示された。グループ2と3は、同じ指示に加えて、患者の主訴に対する17の鑑別診断のリストを受け取った。半分の症例では、DDXCに正しい診断が含まれており(DDXC+)、残りの半分の症例では、DDXCが含まれていませんでした(DDXC-;カウンターバランス)。グループ4(コントロール)は、最終診断を示すように指示されただけでした。結果の分析には混合効果モデルを用いた。

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結果

正しい診断名を記載したDDXCを使用した学生は、チェックリストを使用しなかった対照群と比較して、診断精度が高く、平均(標準偏差)0.75(0.44)、0.49(0.50)、P < 0.001であったが、正しい診断名を記載しなかったDDXCを使用した学生は、0.43(0.50)、P = 0.602とわずかに悪かった。取得した診断テストの数と関連性は条件によって影響を受けず、セルフモニタリングも同様であった。しかし、DDXC-条件では4分20秒(2分36秒)、P≦0.001、DDXC+条件では3分52秒(2分9秒)と、対照条件の2分59秒(1分44秒)に比べて、1つの症例にかける時間が長かった。

 

考察

可能性のある診断のリストを提示されると、提示されたリストに正しい診断が含まれている場合、鑑別診断リストの作成を促される場合に比べて診断精度が向上する。しかし、正しい診断が含まれていない診断リストを提供されても、診断精度は向上せず、わずかに低下した可能性がある。介入は情報収集やセルフモニタリングには影響しなかった。

 

最後に、診断プロセスにおいて症状別鑑別診断チェックリストを使用することで、データ収集行動を変えることなく診断精度を高めることができるという潜在的なメリットを示す証拠を示しました。同時に、正しい診断がチェックリストに記載されている必要があるという我々の発見は、この種の介入の潜在的な有益性を制限し、最も効果的なチェックリストをどのように設計するか、また診断プロセスにどのように統合するかは、まだ答えを出すべき重要な問題であることを示唆している。