医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

医学生の問題解決型学習への取り組みに対するチューターの介入とグループプロセスの影響

Influence of tutor interventions and group process on medical students' engagement in problem-based learning

Salah Eldin Kassab, Hossam Hamdy, Silvia Mamede, Henk Schmidt

First published: 02 April 2024 https://doi.org/10.1111/medu.15387

https://asmepublications.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/medu.15387?af=R

はじめに
学生の学習意欲はいくつかの変数に影響されるが、そのうちの1つに教員の指導スタイルがある。問題解決型学習(PBL)において、教員の役割は、臨床的な問題に取り組む個別指導グループの学習を促進することである。しかし、チューターの介入スタイルやグループプロセスがPBLのチュートリアルにおける学生の学習意欲に与える影響は不明である。

研究方法
本研究は、統合PBLコースの最後にPBLチュートリアルグループに参加した医学部2年生および3年生(n = 176)を対象に実施された。学生は、事前に検証した11項目の質問票を用いて、PBLチュートリアルにおける行動的、認知的、感情的エンゲージメントを評価した。学生はまた、以前に発表されたチューター介入プロフィール(TIP)質問票の修正版にも記入した。修正版TIP質問票は、3つの構成要素(1)学習プロセスの舵取り(6項目)、(2)学生の自律性の刺激(4項目)、(3)学生との関係性の確立(3項目)を表している。さらに、PBLのグループ・プロセスは、5項目の名目尺度を用いて評価された:(1)チュートリアルの雰囲気、(2)傾聴と情報共有、(3)グループ・パフォーマンス、(4)意思決定、(5)リーダーシップに対する反応。

結果
PBLチューターによるグループ内の関係性の確立は、感情的関与の最も重要な予測因子であった(F = 41.213, ΔR2 = 0.191, β = 0.438, P = 0.000)。一方、学習プロセスの舵取りは、行動的関与の有意な予測因子であった(F = 19.0, ΔR2=0.098, β = 0.314, P = 0.000)。しかし、学生の自主性を刺激することは、PBL個別指導における学生のエンゲージメントの有意な予測因子ではなかった。一方、PBL個別指導におけるグループプロセスの強化は、学生の感情的および認知的エンゲージメントに強い影響を与え、学生のエンゲージメントを有意に予測した。

 

考察

関連性の確立の重要性: 学生とチューター、学生同士の関連性を確立することが、PBLチュートリアルでの学生の感情的エンゲージメントを高める上で非常に重要であることが強調されました。これは自己決定理論に基づいており、学生が属するコミュニティ内での関連性の感覚が、学習へのモチベーションとエンゲージメントを促進すると考えられます。

学習プロセスの指導: 学習プロセスを効果的に指導するチューターは、学生が行動的にエンゲージメントを示すことを促します。これは学生が課題に取り組む際のガイダンスとサポートの重要性を示唆しています。

自律性の刺激の限界: 学生の自律性を刺激する介入がエンゲージメントに影響を与えなかったことは、自律性がPBL環境内での学生のエンゲージメントに直接的に影響するわけではない可能性を示唆しています。これは、学生の自律性に対する準備度や、教育的・文化的背景に依存する可能性があります。

グループプロセスの役割: 効果的なグループプロセスは、学生の感情的および認知的エンゲージメントを高める重要な要素であることが確認されました。これは、学生が安全で支援的な学習環境の中でより良く学習し、参加することを示しています。

結論
PBLグループプロセスの改善だけでなく、PBLチューターによるグループ内の関連性の確立と学習プロセスの舵取りは、PBL個別指導における学生のエンゲージメントの有意な予測因子であり、感情的エンゲージメントと認知的エンゲージメントが最も影響を受けやすい変数である。