Aligning physical learning spaces with the curriculum: AMEE Guide No. 107.
Nordquist, J., Sundberg, K., & Laing, A. (2016).
Medical Teacher, 38(8), 755–768. https://doi.org/10.3109/0142159X.2016.1147541

背景:なぜ学習空間が重要なのか
1. テクノロジーの発展
学生は時間や場所の制約なく、オンライン講義、図書館資源、多様なコミュニケーションプラットフォームにアクセスできるようになった。地理的距離は、かつてのような学習の障壁ではなくなっている。
2. カリキュラムの変化
過去30-40年間で、学習者を能動化し、問題解決を重視し、相互作用と議論を強調する新しい教授・学習方法が導入されてきた。協働学習、ピアツーピア学習など、より非形式的で対話的な学習スタイルが一般的になっている。
3. 高等教育への重点拡大
多くの国で学生数の大規模な増加が政策的に推進され、これが物理的学習空間に直接的な影響を与えている。
4. グローバル競争の激化
物理的学習空間は、単なる伝統的な教育空間以上のものとして認識されるようになっている。競争的な学術環境において、「カリキュラム体験」全体と「大学体験」がより重要になっており、空間デザインは教育機関の使命、目標、目的を表現する特別な役割を担っている。
現状の問題:整合性のギャップ
物理的学習空間の設計・再設計は、カリキュラム開発の実施において見過ごされがちな側面である。グローバルな視点から見ると、物理的学習空間とカリキュラムの整合をどのように図るかについて、一般的な戦略が欠如している。
特に問題なのは、物理的学習空間が主に学術部門の管轄下で開発されるのではなく、施設管理・不動産部門によって作られ管理されることが多く、これらの部門は学術的リーダーシップやタスクフォースから距離を置いていることである。
多くの医学教育プログラムは、いまだに「モノローグ中心の学習空間」に収容されている。こうした空間は情報伝達のためだけに設計されており、講師と学生が適切に見聞きしてノートを取ることだけを目的としている。著者らは、これを「博物館」のメタファーで表現している。
カリキュラム整合の概念
BiggとTang(2011)によれば、カリキュラム整合とは、教育プログラムのすべての目標・目的、教授・学習活動、評価の間の接続を意味する。本ガイドでは、学習者にとっての「全体験」を含む包括的なカリキュラム定義を採用している。
カリキュラム整合には以下の要素が含まれる:
- 目標と目的
- 教授・学習活動
- 評価
- 物理的空間
多くの場合、新しい教授・学習活動がカリキュラムに統合されると、学習目標と評価方法は修正される必要がある。しかし、一般的に欠如しているのは、これらの新しい学習・評価方法が物理的空間の設計と使用に与える影響を認識した、物理的学習空間とカリキュラム間の整合性に関する拡張された分析である。
ネットワーク型学習ランドスケープの概念
著者らは「ネットワーク型学習ランドスケープ」という概念を提案している。これは、学習が行われるすべてのフォーマル・インフォーマル、キャンパス内外、バーチャル・物理的な施設、サイト、サービスの相互接続性を示す全体論的視点である。
4つのスケール
- 教室(Classroom)
教室は依然として基本的な教育実践の場であるが、教訓的スタイルからより能動的な協働学習、ピアツーピア学習、チームベース学習へと急速に変化している。 - 建物(Building)
教室は、多様な学習と社会的経験を提供する相互接続された空間のネットワークの一部として認識されるべきである。インフォーマル学習のための中間空間、ラーニングコモンズ、図書館などのハブ型環境が含まれる。 - キャンパス(Campus)
学習空間のネットワークは建物内だけに完全に収まるものではなく、より広いキャンパスに拡張される。キャンパスは大学コミュニティ全体を集め、その使命を建築形態で表現する。 - 都市(City)
キャンパスを超えて、学習が行われるより広い「エコシステム」の一部として都市規模の学習環境を考慮する必要がある。
ネットワーク型学習ランドスケープの図式
このコンセプトは二次元の図式で表現される:
縦軸: カリキュラムの性質の変化
- 伝統的講義 → 能動的学習 → ハイブリッド(物理的・バーチャル)体験
横軸: 学習環境の性質と提供の変化
この図式上に、講義ホール、協働(フォーマル/インフォーマル)空間、多目的・多スケール空間、サービス提供型学習空間が位置づけられる。
ブリーフィングプロセスの重要性
ブリーフィングとは、将来のカリキュラムと教育法のビジョンや概念を、プロジェクトの設計・建設要件のプログラムに変換するプロセスである。
ブリーフィングの段階
- プロジェクト前段階: ニーズの特定、選択肢の評価、戦略的ブリーフの準備
- プロジェクト段階: デザインチームによる戦略的ブリーフの検証と翻訳
- プロジェクト後段階: プロセスとプロジェクトの評価、フィードバック
ブリーフの種類
- ビジョンブリーフ: プロジェクトの目標、使命、目的を定義
- 戦略的ブリーフ: 組織のニーズに基づいてプロジェクトの目的を設定
- 詳細設計のためのブリーフ: 空間の詳細な要件プログラムを定義
- テクノロジーブリーフ: カリキュラムをサポートする情報技術要件
- ユーザーガイド: プロジェクトの使用とパターンのためのブリーフ
- 居住後ブリーフ: 居住後の性能評価
重要な原則
- デザイン解決策に早急に飛びつく前に、プロジェクトのニーズを適切に探索・特定することが重要
- 学術的リーダーシップがブリーフィングプロセスで主導的役割を果たすべき
- ブリーフィングには、構造化された探索プロセスのための十分な時間が必要
ケーススタディからの学び
ケース1: カロリンスカ研究所(スウェーデン)
約100の教室と15のインフォーマル学習環境の再利用プロジェクト。
主要な学び:
- 教育理論に基づいたビジョンを最初に開発する
- 建築家の関与は、カリキュラム整合と主要な性能要件が医学部内で対処された後に行う
ケース2: アルバート・アインシュタイン医科大学(米国)
図書館スペースと未使用の講堂を能動的学習スタジオに転換。
主要な学び:
ケース3: 新カロリンスカ大学病院(スウェーデン)
臨床・非臨床学習空間の新規開発。
主要原則:
- 対話を可能にする
- 学生の既存知識と経験の活性化を可能にする
- ピアツーピア学習と「学習者コミュニティ」への帰属意識を育む
- 専門職間交流を設計に概念化する
- 省察とフィードバックのためのプライベート学習空間を提供する
測定と評価の課題
学習成果に対するデザインの影響を測定することは、歴史的に成功が限られてきた。これは、評価測定の定義と実施が困難であることだけでなく、ブリーフィングプロセスの初期段階でプロジェクトの意図が測定可能な学習成果や影響として明確に定義されていなかったためである。
ネットワーク型学習環境における学習成果は、教室、中間の社会的・共有空間、フォーマル・インフォーマルな相互作用のための空間、建物内外の空間、キャンパス全体、さらにはコミュニティや都市での学習が起こる混合型・ハイブリッド型空間など、多くのタイプの空間の貢献という観点から概念化される必要がある。