Designing effective clinical education spaces: A scoping review
Megan Phelps, Pippa Yeoman, Lynn V. Monrouxe
First published: 22 August 2025 https://doi.org/10.1111/medu.70002Designing effective clinical education spaces: A scoping review
Megan Phelps, Pippa Yeoman, Lynn V. Monrouxe
First published: 22 August 2025 https://doi.org/10.1111/medu.70002
https://asmepublications.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/medu.70002?af=R

研究背景
- 臨床教育は医療専門職学生の学習において重要だが、病院設計時に学生の学習ニーズは軽視されがち
- 患者中心設計は重視されるが、臨床エリアが学習の場でもあることは見落とされている
- 病院建設には多額の投資が必要で、学習効果を高める設計は追加価値をもたらす可能性
研究方法
- 1963年から2023年の文献を対象としたスコーピングレビュー
- 8つのデータベースを検索し、最終的に40本の論文を分析
- 検索概念:医療施設、施設設計、医療専門職学生、学習・教育
主要な結果
論文の特徴
- 発表期間:1963年〜1975年(17本)と2011年以降(19本)の二極化
- 出版国:米国が最多(22本)、次いで英国(7本)、スウェーデン(6本)
- 施設タイプ:教育病院(21本)、アカデミック医療センター(10本)が主
- 学生タイプ:医学生が最多(12本)、複数職種対象(18本)
論文タイプ
- 査読論文(16本)だが、独創的研究は4本のみ
- 一般論評(15本)、プロジェクト記述(5本)、雑誌記事(4本)
ステークホルダーの関与
- 27論文でステークホルダーに言及
- しかし学生が実際に相談されたのは3論文のみ
- 近年は協働設計の重要性が強調される傾向
学習支援に関する原理・理論
- 学習哲学について30論文で言及
- 建築環境との関連は18論文で議論
- 構成主義理論や能動的教育法を参照(6論文)
- 専門職間教育・実践への言及(15論文)
設計要素
- 空間: 床面積、適切なスペース(9論文で言及)
- 建築要素: 臨床エリア、外来エリア、実習室、図書館、社交エリアなど
- 環境特性: 騒音、照明、色彩、可視性への配慮
- 家具・設備: 個人学習から小グループ学習支援への変化
結果の詳細分析
時代的変遷の二極化パターン
第一期(1963-1975年): 17論文
- 医学教育改革期と重なる
- 学習理論と施設設計の整合性への関心が高い
- 教育哲学と建築の関係を重視
空白期(1976-2010年): わずか4論文
- この35年間の沈黙は何を意味するのか
第二期(2011年以降): 19論文
- 専門職間教育への注目
- 協働設計の概念導入
- しかし実証研究は依然として少ない
地理的分布の意味
施設タイプ別分析
Teaching Hospital(21論文) vs Academic Medical Center(10論文)
- 前者は既存病院の教育機能追加
- 後者は教育を前提とした統合設計
- この違いが設計アプローチに与える影響
理論的枠組みの分析
学習理論の適用状況
構成主義理論(6論文):
- 能動的学習の重要性を認識
- しかし物理環境との具体的関連は薄い
Actor Network Theory:
- Nordquist et al.が唯一言及
- 「物質的空間性」の概念を導入
- しかし実際の評価データなし
専門職間教育の位置づけ
15論文で言及されるが、WHO定義(「2つ以上の専門職が互いについて、互いから、互いと学習する」)との整合性に問題。実際の施設評価では意図された効果の検証が皆無。
設計要素の詳細分類
空間の概念化
Floor Area(床面積):
- 4論文のみで言及
- 建築家にとって最重要指標なのに軽視
- 予算制約と「価値工学」による削減圧力
Contested Spaces(競合空間):
- 所有権が曖昧な空間
- 学習用途からの転用問題
- 5論文で「appropriation of space」として言及
建築要素の優先順位
- Traditional education spaces(19論文): 講義室、教室
- Libraries(12論文): 知識の拠点
- Social areas(12論文): 非公式学習の場
- Technology(12論文): WiFi、電子健康記録
- Simulation areas(9論文): 安全な学習環境
環境属性の進化
「当然の」属性: 騒音(2論文)、照明(3論文)、色彩(4論文)
- 設計者が既に考慮済みと仮定
- 学習への具体的影響は未検証
新しい属性:
- 24時間アクセス: 1963年、1965年の古い論文で言及
- 現在のセキュリティ重視とは対照的
- External connections: 外部環境との接続性
評価の根本的欠如
Post-Occupancy Evaluation(使用後評価)の問題
22論文で必要性を認識するが、実際のデータを提供する論文は0。これは医療施設設計における最大の問題点。
既存評価ツールの限界
Johns Hopkins Learning Environment Scale:
- 28項目中、物理空間に関するのは2項目のみ
- 「人間中心」評価の限界を露呈
- 物理環境の積極的影響を測定できない
ステークホルダー参加の実態
言及される頻度 vs 実際の参加
- 学生: 22論文で言及、実際の相談は3論文のみ
- 大学関係者: 15論文で言及
- 建築家・設計者: 11論文で言及
- 患者・地域: 6論文で言及
この数字が示すのは、理想と現実の大きな乖離です。
建築基準・規格の軽視
- イタリア政府プロジェクトガイドライン
- 英国Building Notes
- オーストラリアHealth Facilities Guidelinesへの言及なし
これは政策レベルでの統合不足を示しています。
技術革新への対応
WiFiから電子健康記録まで
12論文で技術について言及するが、多くはハードウェア中心。学習への統合的影響の検討は不十分。
AI・アンビエント技術への言及
論文中で将来的課題として触れられるが、具体的検討なし。
研究の限界と偏見
方法論的限界
- 英語論文のみ: 非英語圏の知見を排除
- 検索語の課題: 「architecture」の多義性
- 出版バイアス: 成功事例の過大報告の可能性
学問分野間のギャップ
建築学と医学教育学の言語的・概念的隔たりが明確。同じ「space」でも意味が異なる。
政策的含意
認定機関の役割
- 医学校認定機関: 物理環境基準への言及なし
- 建築規制当局: 教育機能への配慮なし
- 相互の認識不足が制度的欠陥を生む
投資効果の視点
病院建設の巨額投資に対し、教育付加価値の定量化なし。ROI(投資収益率)計算に教育効果が含まれていない。
今後の研究課題
緊急度の高い課題
- 統一評価指標の開発: 学習効果を測定する標準ツール
- 多職種協働研究: 建築家-教育者-学生の三者協働
- 縦断的追跡調査: 施設使用の長期的影響
- コスト効果分析: 教育投資の経済的価値測定
今後の方向性
- 学際的協力の推進: 教育者、建築家、設計者、学生の連携強化
- 学生中心設計: 定期的フィードバック、協働設計ワークショップの実施
- 研究の充実: 使用後評価を含む体系的研究の必要性
- 規範・基準の整備: 学習支援を考慮した建築基準の策定
- 継続的評価: 施設の学習効果を測定・改善するシステム構築