Virtual or blended laboratories for healthcare students education: a systematized review
Ruhollah Safaeipour, Maryam Aalaa, Rita Mojtahedzadeh, Aeen Mohammadi, Shadi Asadzandi & Atekeh Mousavi
BMC Medical Education volume 25, Article number: 1352 (2025)

医療系学生の教育において、実験室での実習は極めて重要な役割を果たしている。しかし、デジタル技術の進化とCOVID-19パンデミックの影響により、仮想実験室(バーチャルラボ)の導入が急速に進んでいる。今回、BMC Medical Educationに掲載された系統的レビュー論文から、仮想実験室の現状と教育効果について紹介する。
仮想実験室研究の急増
この研究では、2000年から2023年までの文献を調査し、最終的に21の論文を分析対象とした。興味深いのは、対象論文の80%以上が2018年から2023年の間に発表されている点である。特にCOVID-19パンデミック期(2020年以降)の論文が57%を占めており、感染症危機が仮想実験室の普及を大きく後押ししたことが明らかになっている。
地域的には、研究の66%が先進国で実施されており、米国、カナダ、オーストラリア、欧州諸国が中心である。これは、技術インフラやデジタルリテラシーが仮想実験室の導入に重要な要素であることを示唆している。
学生満足度は概ね良好
21の研究のうち16件で学生満足度が評価されており、その大多数で満足度の向上が報告されている。学生が仮想実験室を評価する理由として、以下の点が挙げられた:
- 実際の実験室活動への準備として有効
- 明確な学習目標の提示
- 基礎科学と臨床実践の適切な結びつき
- いつでも何度でも教材を見直せる柔軟性
- 即座のフィードバック提供
- 安全な学習環境の提供
一方で、満足度が低かった事例では、仮想実験室の設計の不適切さや、教員・学生間の対面交流の欠如が指摘されている。
教育効果:認知領域での強み
ブルームの教育目標分類学に基づいた分析では、仮想実験室は特に認知領域(知識習得、概念理解、問題解決)において効果的であることが示された。13の研究が認知能力の向上を報告している。
一方、感情領域(モチベーション、自己効力感)への影響を報告した研究は4件、精神運動領域(実技スキル)への効果を示した研究は3件にとどまっている。特に実技スキルの習得において仮想実験室の効果が限定的である点は、今後の課題といえる。
興味深いことに、7つの介入研究のうち4つで仮想実験室の教育効果が実証され、3つでは従来の対面教育と有意差がなかったものの、効果的な代替手段となりうることが示されている。
動画形式が主流
コンテンツ提供方法では、85%の研究で動画形式が採用されている。動画の人気の理由は、コスト効率の良さとアクセスの容易さにある。非同期型のアクセスにより、学生は繰り返し教材を視聴でき、学習効果の向上につながっている。
動画以外では、シミュレーション、ゲーミフィケーション、オンラインプレゼンテーションなどの手法も用いられている。
実施形態としては、完全仮想型が最も多く(14研究)、同期・非同期型(4研究)、ブレンド型(3研究)が続いている。
今後の課題と展望
このレビューから、仮想実験室は従来の実験室教育と同等、あるいは場合によってはそれを上回る効果を持つことが示された。しかし、いくつかの重要な課題も浮き彫りになっている。
課題:
- 精神運動スキル(実技能力)の習得における限界
- 低・中所得国での研究の不足
- 対面交流の欠如による学習体験への影響
- デジタルインフラへの依存
今後の方向性:
- 認知学習には仮想シミュレーションを、実技スキル習得には対面実習を組み合わせたハイブリッド型教育の開発
- 異なる仮想実験室形式(動画ベース、シミュレーションベース、ゲーム化)の比較研究
- AI技術の統合による適応学習パスやリアルタイムフィードバックの実現
研究者らは、仮想実験室を実際の実習の完全な代替ではなく、効果的な補完ツールとして位置づけるべきだと結論づけている。基礎知識の習得と実習への準備において仮想実験室が果たす役割は大きく、医療教育のアクセス性と柔軟性を高める重要なツールとなりうる。
パンデミックによって急速に普及した仮想実験室だが、今後は教育効果を最大化するための最適な設計と、従来の対面教育との効果的な統合が求められている。