The evaluation of synchronous and asynchronous online learning: student experience, learning outcomes, and cognitive load
Chih-Tsung Hung, Shou-En Wu, Yi-Hsien Chen, Chen-Yeu Soong, Chien‑Ping Chiang & Wei‑Ming Wang
BMC Medical Education volume 24, Article number: 326 (2024)

研究背景の詳細
COVID-19とオンライン教育への移行
COVID-19パンデミックにより、190カ国の数十億人の学生が緊急リモート教育(ERT: Emergency Remote Teaching)に移行することを余儀なくされました。この状況下で、時間的側面からオンライン学習は主に以下の2つに分類されます:
- 非同期型オンライン学習:
- 学生が自分の都合の良い時間に独立してカリキュラム教材にアクセス
- 教師と学生のインタラクションによる時間的・空間的制約から解放
- 時間的柔軟性を提供する一方で、指導者との限られた相互作用により自己規律への要求が高い
- 同期型オンライン学習:
- 教師と学生がリアルタイムコミュニケーションのためのスケジュールを同期
- 地理的分離にもかかわらず、物理的に出席する教室環境をシミュレート
- 一部の学者によれば、非同期型は「個人ベース」とみなされるのに対し、同期型は「従来の教室指導に類似」と認識
オンライン教育の利点と課題
オンライン教育には以下のような利点がある一方で、いくつかの欠点も報告されています:
利点:
- 利便性
- 強化された相互作用
- 学習効果の向上
欠点:
- 技術的課題(特に社会経済的背景の低い個人の場合、個人用コンピュータや安定したインターネット接続の欠如)
- 学業成績の低下
- 実践的知識習得の制限
自己効力感の重要性
約40年前、アルバート・バンデューラが「自己効力感」の概念を導入しました:
- 自己効力感:特定の目標を達成するために必要な行動を効果的に組織し実行する能力への信念
- 学習に不可欠なパフォーマンス側面(努力の発揮やタスク完了における粘り強さなど)に大きな影響
- オンライン学習における学習者のパフォーマンスと持続性に影響を与える重要な要因
- 学業成績の信頼できる予測因子であり、限られたオンライン学習経験でも適応性、忍耐力、効果的対処に貢献
認知負荷の概念
効果的な医学教育の設計において、認知負荷(CL: Cognitive Load)の概念を考慮することが不可欠です:
- CL:タスクパフォーマンス、学習、問題解決に使用される個人の認知容量
- 構成要素:
- 因果的次元:個人とタスク特性の相互作用
- 評価的次元:精神的負荷(ML: Mental Load)、精神的努力(ME: Mental Effort)、パフォーマンスなどの定量化可能な要素
- ML:タスク関連の認知容量、ME:タスク遂行中の個人の認知容量
- Swellerらによれば、MLとMEは通常正の相関関係にある異なる構成概念
- パフォーマンスはCLの一側面、またはCLの指標として考えられることもある
研究方法の詳細
研究設計と対象
- 台湾の国防医学センターでの第4学年医学生(6年制医学教育課程)
- 皮膚科の講義(18の異なるセッションから成る皮膚系統の講義の一部)
- 講義内容:アトピー性皮膚炎、貨幣状湿疹、限局性単純性苔癬、結節性痒疹、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、乾燥性皮膚炎など
- 学生は自分の好みに応じて同期型または非同期型の講義参加方法を選択
教育方法の詳細
- 同期型モジュール:
- 非同期型モジュール:
- 学生応答システム(SRS)であるZuvio APPを通じてビデオリンク、事前テスト、事後テスト、アンケートを提供
- Zuvio APPはインタラクションとフィードバックを促進するオンラインプラットフォーム
- 学生が質問でき、教師が迅速に対応
評価方法
- 学習成果評価:
- 事前テスト(講義開始時)
- 事後テスト(講義直後)
- 保持テスト(1週間後)
- 各テストは5つの異なる質問で構成(6人の皮膚科医によるレビュー済み)
- 事前テストと事後テストは同じ問題、保持テストは異なる問題
- 自己効力感評価:
- 講義前後に5段階リッカート尺度(1:強く反対、5:強く同意)のアンケート実施
- 学習とパフォーマンスに関する自己効力感を測定
- 認知負荷評価:
- 講義後に7段階リッカート尺度(1:強く反対、7:強く同意)のアンケート実施
- 学生の精神的負荷(ML)と精神的努力(ME)を制御変数として測定
- 満足度評価:
- 講義後に5段階リッカート尺度(1:強く反対、5:強く同意)のアンケート実施
- 各オンライン教育モジュールでの学生の経験を評価
詳細な結果分析
研究参加者の内訳
- 初期参加者175名のうち、不完全なデータの5名を除外(同期型モジュール2名、非同期型モジュール3名)
- 最終分析対象:170名(初期コホートの97.14%)
- 同期型オンライン講義:70名
- 非同期型オンライン講義:100名
学習成果の詳細分析
- 同期型と非同期型の内部比較:
- 同期型:事前テスト67.43点→事後テスト88.86点→保持テスト92.57点(p<.0001)
- 非同期型:事前テスト69.4点→事後テスト91点→保持テスト91.4点(p<.0001)
- 効果量(Cohen's d):
- 同期型:事前→事後 0.755、事前→保持 0.994
- 非同期型:事前→事後 0.827、事前→保持 0.926
- 両教育方法間の比較:
- 事前テスト:同期型67.43点 vs 非同期型69.4点(p=.7785、d=0.06)
- 事後テスト:同期型88.86点 vs 非同期型91点(p=.5559、d=0.103)
- 保持テスト:同期型92.57点 vs 非同期型91.4点(p=.4435、d=0.099)
- いずれも統計的有意差なし
自己効力感の詳細分析
- 同期型と非同期型の内部比較:
- 同期型:講義前3.91→講義後4.29(p<.0001)
- 非同期型:講義前3.88→講義後4.26(p<.0001)
- 両方の教育方法で講義後に有意な向上
- 両教育方法間の比較:
- 講義前:同期型3.91 vs 非同期型3.88(p=.5004、d=0.03)
- 講義後:同期型4.29 vs 非同期型4.26(p=.6388、d=0.036)
- いずれも統計的有意差なし
認知負荷の詳細分析
- 全体的な認知負荷:
- 同期型2.53 vs 非同期型2.84(p=.0001、d=0.218)
- 同期型オンライン教育での認知負荷が有意に低い(効果量は小さい)
- サブグループ分析:
- 精神的負荷(ML):同期型2.52 vs 非同期型2.86(p=.0005、d=0.244)
- 精神的努力(ME):同期型2.548 vs 非同期型2.79(p=.0662、d=0.173)
- MLは同期型で有意に低いが、MEには統計的有意差なし
満足度の詳細分析
- 同期型:平均4.6(SD=0.55)
- 非同期型:平均4.53(SD=0.54)
- 両方の教育方法で高い満足度スコア
- 両教育方法間に統計的有意差なし(p=.350、d=0.129)
考察の詳細
学習成果に関する考察
- 両方の教育方法で有意な学習向上が見られたことは、オンライン教育の効果を示す
- 同期型方法が非同期型よりも高いスコアの傾向を示したが、統計的有意差には至らなかった
- この結果は、同期型と非同期型の教育方法間で学生のパフォーマンススコアに有意差がないことを示した先行メタ分析と一致
- オーストラリアのSouthern Cross Universityでの研究でも、同期型バーチャルクラスへの出席と録画クラスの視聴の間に最終成績の統計的有意差がないという同様の結論
自己効力感に関する考察
- 自己効力感は学業成功の重要な予測因子であり、学習への取り組みを促進し学習成果を向上
- 両方の教育方法で講義後に自己効力感の有意な向上
- 同期型オンライン方法が非同期型方法よりも高いスコアの傾向を示したが、統計的有意差には至らなかった
- 両方のオンライン教育方法が学生の自己効力感向上に効果的であることを示唆
- 高い自己効力感を持つ学生はオンラインコースに積極的に参加し、学期を通じて忍耐する可能性が高いという以前の研究と一致
認知負荷に関する考察
- 認知負荷モデルは二つの次元を考慮:
- 学習者の特性とタスクの相互作用を考慮する因果的次元
- 精神的負荷、精神的努力、パフォーマンスの測定可能な側面に焦点を当てる評価的次元
- オンライン学習での認知理論を使用して学生の学習効果を向上させる研究は行われてきたが、同期型と非同期型のオンラインモジュールで学生が経験する認知負荷を検討・比較する研究は限られていた
- 本研究では、同期型オンライン方法での認知負荷が非同期型方法よりも有意に低いことが明らかに(特にML)
- 同期ミーティングにより、指導者は学生の自己調整行動開発をサポートできた可能性
- 先行研究でも、主に同期型設定の学生は基本的な心理的ニーズ(特に能力と関連性)のサポート増加を報告
- ただし、効果量は小さかったため、この発見に関するさらなる調査が将来的に必要
教育的示唆
- 両方のオンライン教育方法の価値:
- 両方の方法が学習成果向上と高い学生満足度を示した
- 教育者は学習目標に応じて柔軟に方法を選択できる
- 認知負荷の考慮:
- オンラインカリキュラム設計では学生の認知負荷を考慮することが重要
- 同期型方法は認知負荷、特に精神的負荷を減少させる可能性
- 自己調整行動のサポート:
- 同期ミーティングは、学習管理システムとオンライン教科書のナビゲーション、技術的問題への対応、時間管理の支援など、学生の自己調整行動開発をサポートする機会を提供
- 心理的ニーズのサポート:
- 同期型設定は、学生の基本的な心理的ニーズ(特に能力と関連性)をサポート
研究の限界と今後の方向性
研究の主な限界
- データの一般化の制限:
- 選択バイアスの可能性:
- 学生が自分の好みのオンライン講義アクセス方法を選択できる研究設計
- 自己決定理論に従い、自律性のニーズを満たすことは内発的動機付けを高め、学業パフォーマンスと正の相関があると予想
- 非同期型ビデオ視聴の確認不足:
- 学生が非同期型オンラインビデオに費やした個々の時間や、完全な講義を修了したかどうかを確認できなかった
- ビデオコンテンツへのアクセス制限なく、同期型講義に出席した学生も非同期型コンテンツを閲覧できた可能性
- テスト設計の制限:
- 事前テストと事後テストで同一の問題を使用、保持テストでは異なる問題
- 直接比較可能性の阻害
- 各テストでの問題数が5問のみで測定の妥当性が制限
- 一度限りの研究設計:
- 単一講義を特徴とする一度限りの設計
- 相関的範囲の制約と因果関係の確立の妨げ
- これらの制限は、ランダム化研究の実施や追加の前臨床講義の包含など、将来の研究戦略の必要性を示唆
将来の研究方向
- ビデオ速度と学習成果の関係分析:
- 認知負荷の詳細な検討:
- 同期型と非同期型環境での認知負荷の違いをより詳細に検討
- 教室環境をシミュレートする同期型オンライン教育と、時間的制約のない非同期型オンライン教育の認知プロセスの差異を探求
- 長期的学習成果の評価:
- より長期間の研究設計で、両方の教育方法の持続的効果を評価
- 複数の講義や科目にわたる学生の学習パターンと成果を追跡
結論
この研究は、医学教育におけるオンライン教育方法の選択に関する貴重な洞察を提供しています。同期型と非同期型の両方の教育方法が学習成果の向上と高い学生満足度を示す一方で、認知負荷に関しては同期型方法が利点を持つ可能性が示されました。COVID-19パンデミックによる緊急リモート教育の状況下で、これらの知見は効果的なオンライン教育環境の設計に貢献し、将来の医学教育の改善に役立つでしょう。