Effective and Engaging Active Learning in the Medical School Classroom: Lessons from Case-Based Collaborative Learning.
Besche, H. C., King, R. W., Shafer, K. M., Fleet, S. E., Charles, J. F., Kaplan, T. B., Greenzang, K. A., Hoenig, M. P., Schwartzstein, R. M., Cockrill, B. A., & Fischer, K. (2025).
Journal of Medical Education and Curricular Development, 12. https://doi.org/10.1177/23821205251317149
学部医学教育において、大人数による共同教育アプローチが急速に普及している。 Case-based collaborative Learning(CBCL)教育法は、2015年にハーバード大学医学部でプレクラークシップ教育に導入され、その後他の医学部でも実施されている。 CBCLは帰納的推論を重視し、基礎科学と臨床科学を統合し、好奇心を刺激し、チームワークを育む。 現在進行中の教育の進化を考えると、CBCLのような共同学習セッションをデザインし、促進するためのガイダンスは、教育デザインの努力において教員に有益であろう。 この展望記事では、CBCLを例として、効果的な共同学習セッションを作るための戦略について述べる。 私たちは文献をレビューし、現代の教授学習理論のレンズを通して、CBCL教授における10年間の経験を要約した。 提言は主に3つの領域に整理されている: インストラクショナル・デザイン、ファシリテーション、プロフェッショナル・トランスフォーメーションであり、それぞれがCBCLの理論的原則に沿ったものである。 この提言は、教員が魅力的で効果的な授業教材を設計し、共同学習セッションにおける学生の専門的変容を支援するための概念モデルを提供するものである。
*CBCLとは?
CBCLの基本構造:
a) 授業前(個人学習):
- 読書課題やビデオ視聴による事前学習
- 準備度評価演習(RAE)による理解度確認
- 約1-1.5時間の自己学習時間
b) 授業中(協調学習):
- 臨床症例の提示
- 個人での問題検討
- 4人程度の小グループでの討論
- 全体での討論とまとめ
- このサイクルを複数回繰り返す
c) 授業後(振り返り):
- 統合評価演習(CAE)による学習内容の定着
- 自己評価と振り返り
教育理論的基盤:
CBCLの主要な目的:
- 批判的思考力の向上
- 基礎科学と臨床科学の統合
- 学習者の好奇心喚起
- 自己主導型学習能力の育成
- チームワークスキルの向上
効果的な実施のための要件:
a) 教材設計:
- 適切な難易度設定
- 明確な学習目標
- 段階的な思考プロセスの組み込み
- 基礎と臨床の効果的な統合
b) ファシリテーション:
- 教員の適切な介入タイミング
- 議論の方向付け
- 誤概念の修正
- 重要ポイントの強調
c) 学習環境:
- 心理的安全性の確保
- 建設的な議論の促進
- 多様な意見の尊重
- 協調的な雰囲気作り
評価とフィードバック:
- 準備度評価(RAE)による事前確認
- 授業中の形成的評価
- 統合評価(CAE)による事後評価
- 継続的な学生からのフィードバック収集
期待される成果:
- 深い理解の促進
- 臨床推論能力の向上
- チームワークスキルの発達
- 生涯学習能力の獲得
- 専門職としての成長
実施における課題と対策:
- 教員の準備負担への対応
- 学生の参加度の差への対処
- 評価の公平性の確保
- セクション間での一貫性維持
*CBCLと他の学習方法との主な違い
PBL(Problem-Based Learning)との違い:
- 構造の違い:
- PBL: より自由度が高く、学生主導で学習の方向性を決定
- CBCL: より構造化されており、教員が学習の方向性を設定
- グループサイズ:
- PBL: 通常6-10人程度の小グループ
- CBCL: 3-4人の小グループと全体での討論を組み合わせる
- ファシリテーション:
- PBL: 各グループに教員が常駐
- CBCL: 教員は直接指導せず、観察とサポートに徹する
TBL(Team-Based Learning)との違い:
- 評価方法:
- TBL: 個人テストとチームテストを実施(IRAT/TRAT)
- CBCL: 準備度評価(RAE)と統合評価(CAE)を使用
- チーム構成:
- TBL: 固定チームで長期的に活動
- CBCL: より柔軟なグループ編成が可能
- 学習プロセス:
- TBL: より競争的な要素を含む
- CBCL: 協調的な学習環境を重視
従来の症例基盤型学習(Case-Based Learning)との違い:
- 学習の焦点:
- 従来のCBL: 特定の症例の解決に焦点
- CBCL: 基礎科学と臨床知識の統合を重視
- 討論の構造:
- 従来のCBL: より自由な討論形式
- CBCL: 段階的な思考プロセスを組み込んだ構造化された討論
CBCLの独自の特徴:
- 反転学習の要素:
- 事前学習と準備度評価の組み合わせ
- 授業時間の効果的活用
- 統合的アプローチ:
- 基礎科学と臨床知識の意図的な統合
- 批判的思考力の育成に焦点
- バランスの取れた構造:
- 個人学習と協調学習の効果的な組み合わせ
- 小グループと全体討論の適切な配分
*CBCLに適した課題・テーマについて、
基礎医学と臨床の統合が必要なテーマ:
複数の要因を考慮する必要がある症例:
- 例:高齢者の転倒症例
- 身体的要因:筋力低下、平衡感覚
- 環境要因:住環境、服薬状況
- 社会的要因:生活習慣、サポート体制
- 討論ポイント:「どの要因が最も重要か?」「予防戦略をどう立てるか?」
診断推論が必要なケース:
- 例:発熱と関節痛を主訴とする患者
- 鑑別診断の検討
- 検査計画の立案
- 治療方針の決定
- 討論ポイント:「なぜこの検査を選択するのか?」「検査結果をどう解釈するか?」
倫理的判断を含む事例:
- 例:終末期医療の意思決定
- 医学的側面:予後予測、緩和ケア
- 倫理的側面:患者の自律性、家族の意向
- 法的側面:事前指示、代理意思決定
- 討論ポイント:「どのような選択肢があるか?」「誰の意見を優先するべきか?」
予防医学に関するテーマ:
- 例:生活習慣病の予防戦略
- リスク要因の分析
- 介入方法の検討
- 効果評価の方法
- 討論ポイント:「どの介入が最も効果的か?」「どうすれば継続できるか?」
適切な課題の特徴:
- 複数の正解がありうる
- 批判的思考が必要
- グループでの検討が有益
- 基礎と臨床の知識を統合する機会がある
- 実臨床での意思決定プロセスを反映している
不適切な課題の例:
- 単純な知識の確認のみ
- 唯一の正解がある問題
- 個人での学習で十分な内容
- 討論の余地が少ない課題
- 基礎・臨床の統合が不要な内容