医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

専門家としてのアイデンティティを育むピアティーチングの隠れたカリキュラム: 医学生と若手医師の視点

The hidden curriculum of peer teaching in developing a professional identity: Perspectives of medical students and junior doctors
Victoria Lu, Koshila Kumar
First published: 02 November 2023 https://doi.org/10.1111/tct.13680

https://asmepublications.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/tct.13680?af=R

DALL·Eによって生成された
 
 


はじめに
ピアティーチングは、臨床前と臨床の両方の文脈でカリキュラムの学習を支援するために医学教育の分野で活用されてきた。文献によると、ピアティーチング特有の隠れたカリキュラムが存在することが示されているが、ピア学習者の視点から見たこのカリキュラムについてはほとんど知られていない。本研究では、ピアティーチングの隠れたカリキュラムについて、医学生と若手医師の視点から調査した。

方法

デザイン 参加者の経験をより深く掘り下げるため、探索的質的デザインを用いた。
参加者と募集: オーストラリア、ニューサウスウェールズ州の地方の病院から、10名の大学院生と若手医師をEメールと無作為抽出で募集した。
データ収集: 半構造化個人面接は、2022年にビデオ会議を通じて行われた。
データ分析: BraunとClarkの主題分析法が採用され、コーディングとテーマ同定のために複数回にわたって記録文書が見直された。

結果
ピアティーチングの隠れたカリキュラムに関連して、5つのテーマが特定された。


1. プロフェッショナルであることの意味を学ぶ
ピアティーチングが医療現場で求められる専門的な行動や態度を理解する上でどのように役立つかを探るものである。
主な側面
専門家としての行動: 参加者は、仲間の中で観察された専門家としての行動を模倣することを学んだ。
対人スキル: コミュニケーションと共感の重要性が強調され、これは患者ケアと専門家としての交流に不可欠である。
役割モデル: 上級の同僚が模範となり、専門職としての責任とのバランスの取り方を示した。
2. 学び方の習得
ピアティーチングがどのように学習環境を促進するかに焦点を当てている。
主な側面
積極的な参加: 堅苦しくない環境は、学生が積極的に参加し、恐れずに質問することを促した。
ピアサポート: 仲間同士で学習することで、協力的な学習が促進される。
適応性: ピアティーチングにより、個々のニーズに合わせた、より適応性の高い学習アプローチが可能になった。
3. セルフケアと他者ケアについての学習
医療職におけるメンタルヘルスワークライフバランスの重要性を強調するものである。
重要な側面
メンタルヘルスに対する認識: ピアティーチングセッションでのインフォーマルな交流では、ストレスの管理やメンタルヘルスについての考察がしばしば見られた。
ワークライフバランス: 仕事と私生活のバランスに関する洞察がピア間で共有された。
協力的な文化: ピア・ティーチングでは、プレッシャーのかかる環境でのウェルビーイングに不可欠な、相互支援とケアの文化が育まれた。
4. キャリア経路をナビゲートする方法を学ぶ
ピアティーチングが進路決定や専門研修のガイダンスをどのように提供しているかについて考察する。
重要な側面
キャリアの洞察: ピアセッションでの考察では、様々な専門分野やキャリアパスに関する実践的なアドバイスが提供された。
ネットワーキング: 先輩医師とのネットワーキングが促進され、さまざまな医療分野を探求する機会が提供された。
メンターシップ: 先輩同輩が非公式なメンターとなり、後輩のキャリア決定を指導することが多かった。
5. 将来の教師としてのあり方を学ぶ
ピアティーチングが将来の教師としての役割をどのように個人に準備させるかを内省するものである。
主な側面
教えるスキル: ピア・ティーチングに参加することで、個々人は必要不可欠な指導スキルを身につけた。
教えることへの感謝:この経験は、医療専門職における教える役割への理解と認識を深めた。
将来への応用: 得られたスキルや洞察は、医療における教育者としての将来の役割にとって価値があると考えられた。


考察
主な発見: この研究は、ピアティーチングが、特に効果的な医療実践に不可欠なソフトスキルの開発において、広範な学習機会を提供することを強調している。
意義: これらの知見は、ピアティーチングが専門家としてのアイデンティティの育成に大きく寄与することから、ピアティーチングを医学教育の不可欠な一部とすべきことを示唆している。

限界
本研究は、サンプル数が少ないこと、地方の病院という特異な環境であることから、限界があった。インタビューにピアティーチャーを含めることで、さらなる洞察が得られた可能性がある。
結論
本研究は、ピアティーチングの隠れたカリキュラムを明らかにし、専門家としてのアイデンティティの発達を促し、医学教育の文化とシステムに貢献するピアティーチングの価値を実証した。医学教育におけるピアティーチングの多面的な影響を効果的に照らし出し、医療専門家に必要な技術的スキルと非技術的スキルの両方を開発する上でピアティーチングが果たす役割を強調している。