医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

学部医学教育におけるピアティーチング: 学生教師にとっての学習成果とは?系統的レビュー

Peer Teaching in Undergraduate Medical Education: What are the Learning Outputs for the Student-Teachers? A Systematic Review
      
Authors Tanveer MA , Mildestvedt T, Skjærseth IG , Arntzen HH, Kenne E , Bonnevier A, Stenfors T , Kvernenes M

www.dovepress.com

はじめに

医学教育の質を向上させるために、ピアティーチング(学生が仲間の教育者としての役割を担うこと)が教育介入として頻繁に用いられている。ピア・ティーチングが学習者や教員にもたらす利点については文献で詳しく述べられているが、学生-教員間の学習成果についてはあまり注目されていない。このシステマティックレビューでは、過去10年間(2012年~2022年)の医学部学部生が学生教師として活動した際の学習成果に焦点を当てる。

目的

我々の目的は、学生教師がピア・ティーチングからどのような学習成果を得ているかを記述し、その成果を評価するためにどのような研究方法が用いられているかをマッピングすることである。我々は、ピアティーチャーであることに関連する、意図的・非意図的なあらゆるタイプの学習経験を含む広義の学習成果を定義した。

方法

4つの電子データベースで文献検索を行った。タイトル、抄録、全文を8人の独立した査読者がスクリーニングし、事前に定義された適格基準に基づいて選択した。学生教師が正式な役割を担い、構造化されたピアティーチング介入について記述されていない論文は除外した。収録された論文から、医学部生として学生ティーチャーになることの学習成果に関する情報を抽出した。

結果

668のタイトル候補から100がフルテキストとして入手され、精査、グループ討議、更新検索、MERSQIスコア(平均スコア10/18)による質評価を経て45が選択された。ほとんどの論文が、混合法を用いた学習成果を報告している(67%)。学生教師は、教科固有の学習(62%)、教育学的知識と技能(49%)、個人的アウトプット(31%)、一般的技能(38%)の向上を報告した。ほとんどの論文が、自己報告データを用いてアウトプットを報告している(91%)。

考察

この包括的レビューでは、2012年から2022年までに発表された、学部医学教育における学生ティーチャーの役割に関する45の研究を調査した。その結果、知識の定着、スキルの向上、リーダーシップ、コミュニケーション能力、自信の向上など、さまざまな領域で学生講師の学習成果が向上していることがわかった。しかし、試験結果などの外部データを用いてこれらの学習成果を文書化した研究は6件のみであり、ピアティーチングプログラムが学生教員の試験成績を向上させることを示唆する証拠は限られている。

レビューの結果、CanMEDSフレームワークの学問的知識に関連する分野では、学生教師は非教師である学生よりも自己評価が高い傾向にあることがわかった。しかし、学生教師は、学生教師として参加していない学生と比較して、必ずしも最終試験の成績が良いわけではなく、ピアティーチングの効果よりもむしろ採用バイアスが、観察された学問的知識を説明する可能性を示唆している。

さらに、学生教師として参加することで、同僚を認め、サポートする文化が促進されることも分かった。また、リーダーシップ、コミュニケーション、フィードバック、コラボレーションといった専門的スキルの向上も見られた。一方、学生教師であることのマイナス面として、権威の欠如や、必要なスキルが不足しているために同僚に教える際に不快感を感じることなどが浮き彫りになった。

結論

リーダーシップと教育スキルを高めるために、医学部は学生指導を奨励すべきであることを示唆している。今後の研究では、すべての医師としての役割における学生の能力を評価し、学生指導を成功させる要因を理解するための包括的なアプローチを検討すべきである。