医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

医学部在学中の異なる学年におけるグループワークのピア評価と学業成績:両者はどのように関連しているのか?

Peer evaluations of group work in different years of medical school and academic achievement: how are they related?

Zayar Linn, Yasura Tashiro, Kunimasa Morio & Hiroki Hori 
BMC Medical Education volume 22, Article number: 102 (2022) 

bmcmededuc.biomedcentral.com

 

背景

医療チームで必要とされる能力を育成するために、コミュニケーション能力やチームワーク能力のトレーニングは、医学教育において重要である。このような研修では、少人数による共同学習が一つの方法として活用されており、グループ学習活動の効果を高めるためには、相互評価が有効であることが示唆されている。三重大学医学部では、1学年における教養教育の読書会と臨床実習前の問題解決型学習(PBL)からなるグループワークを、事前学習の程度、グループ討議への貢献度、協力的態度の3領域を含む同一のピア評価システムで実施した。本研究は、グループワーク時の行動と医学生の学力との関係を明らかにするために実施された。

*読書会におけるグループワーク
三重大学では、医学部生を含む1年生全員が、ジェネリックスキルを身につけるための教養教育の「読書会」に参加した。様々な仲間とコミュニケーションをとるために、少なくとも2校以上の学生メンバーで小グループを編成した。医学部生は、教育学部生と一緒に小グループを作り、各小グループは、医学部生2名以上、教育学部生2名以上の計4〜6名で構成された。各グループは、15回のセッションでレビューする書籍についてグループディスカッションを行った。前半のセッションでは、各グループの学生がレビューする書籍を選択した。その際、レビューする書籍の標準的なガイドラインが学生に示された。対象となるのは、自然科学、社会科学、文学、歴史に関する知識を提供する書籍である。最終回には、これらの議論や意見をもとに、各自が書評レポートを作成した。この報告書は教師に提出され、グループのメンバーにも配布された。

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研究方法

3学年連続の医学生コホート(n=340)のデータを用い,臨床前学年の読書会グループワーク,PBLセッションの相互評価得点およびペーパーテストの得点を分析した。相関は Spearman の相関係数で解析し,それぞれの得点は Wilcoxon 符号順位検定で比較した.

 

結果

グループワークにおける各領域の評価得点とペーパーテストの得点には、有意な相関が認められた。また,事前学習の程度は,3領域間で最も強い相関を示した(読書会とPBL間でrs = 0.355, p < 0.001; 書評会とペーパーテスト得点間でrs = 0.338, p < 0.001; PBLとペーパーテスト得点間でrs = 0.551, p < 0.001).また、各領域の相互評価得点は、PBLにおいて有意に高いことがわかった。

 

結論

今回の縦断的研究により、医学教育における2つの異なる学年でのグループワーク行動得点の関係が明らかになった。また、それらの行動得点と学業成績の関係も本研究で明らかになった。初期学年のグループワーク行動でも、その後の臨床前の学年の学力とある程度の関係があることがわかった。どの医学部にとっても、学業成績は目標であり、チームワークやコミュニケーション能力は重要な能力である。さらに、学生の学習意欲が成績や学業成績に大きな影響を与えることが示唆されている。学習活動の重要性を認識することで、学習意欲を高めることができるかもしれない。本研究の結果から、チームワーク研修と相互評価の重要性が浮き彫りになった。学生の相互評価の点数を注意深く観察することで、教師は相互評価が平均以下の生徒に対して適切な支援を行うことができる。そうすれば、その学生はチームワークと学業成績を向上させることができるだろう。私たちの知る限り、一般教育や医学教育における小集団学習の相互評価に関する縦断的研究についての情報は限られています。本研究は、医学教育カリキュラムの異なる年度におけるチームワークトレーニングに有用な情報を提供すると思われる。