医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

研修医のバーンアウトに及ぼすストレス対処能力と労働時間の影響

Effect of stress coping ability and working hours on burnout among residents

Saori Kijima, Kazuya Tomihara & Masami Tagawa
BMC Medical Education volume 20, Article number: 219 (2020)

 

bmcmededuc.biomedcentral.com

 

背景
研修医のバーンアウトは、訓練の中断、さらにはプログラムからの離脱につながる。米国では2013年に労働時間規制が実施されたにもかかわらず、バーンアウト率の高さが依然として深刻な問題となっています。そこで本研究では、日本人のバーンアウト、研修状況、関連因子、特にストレス対処能力を分析し、プログラムや労働環境のガイドライン作成のエビデンスベースとなるような研究を行った。

 

調査方法

本研究の対象としたのは、37の教育病院を無作為に抽出し、これらの病院の研修医プログラムの3ヶ月目から15ヶ月目までの全研修医であった。本研究では、研修医のバーンアウト率、関連因子、相互作用を、日本語版Maslach Burnout Inventory(MBI)とSOC(Sense of Coherence)スケール、研修環境、性別、年齢を問う項目からなる自己記入式質問紙の回答データを用いて分析した。

 

結果

全体では、平均労働時間が週63.3時間であった18の教育病院の研修医97名(3ヶ月目62名、15ヶ月目35名)のうち、48名(49.5%)がバーンアウトと判定され、そのうち3ヶ月目が33名(53.2%)、15カ月目の15名(42.9%)がバーンアウトと判定された。ロジスティック回帰分析では、労働時間とSOCスケール(SOC10)の10項目がバーンアウトの有意な要因であることが示された。二元分散分析の結果、3ヶ月目と15ヶ月目のMBI-情動的疲弊スコアとSOC10は、それぞれ労働時間が有意な変数であることが明らかになった。また、MBI-cynicismとprofessional efficacyについては、3ヶ月目、15ヶ月目ともにSOC10が有意な変数であった。また、SOC10が高い群(SOC10>45)では、長時間労働下での自己効力が高いことが示された。

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結論

本研究では、日本人の49.5%が燃え尽き症候群と判定され、労働時間がバーンアウトと有意に関連していた。しかし、本研究では週平均63.3時間の労働者は、米国の週平均80時間の労働者と同様に高いバーンアウト頻度を示しており、労働時間規制だけではバーンアウトを減らすのに十分ではない可能性があることが示唆された。

その結果、個人のストレス対処能力と労働時間がバーンアウトの重要な要因であることがわかった。また、ストレス対処能力が高い研修医ほど、より多くの勤務経験を積むことで、より個人的な有効性を示しており、SOC尺度は適切な訓練環境を育成するための貴重なツールとなり得ることが示唆された。

本研究で分析された日本人の半数は、研修3ヶ月目に感情的に抑制され、バーンアウト本研究で分析された日本人の半数は、研修3ヶ月目に感情的に抑制され、燃え尽き症候群と判定された。既報のように、SOCで評価された労働時間とストレス対処能力は、いずれもバーンアウトの独立した影響因子であった。また、ストレス対処能力が高い研修医は長時間労働でも仕事への興味や熱意を維持し、専門的な能力を獲得しているのに対し、ストレス対処能力が低い研修医は同じ労働条件でもバーンアウトを起こしやすいことがわかった。このように、個人のストレス対処能力は、適切な訓練環境を育成するための貴重な情報となる可能性がある。と判定された。