医学教育つれづれ

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Team-Based Learning(TBL)を用いた大規模多職種連携教育の実践

Engaging Students in Large-Scale Interprofessional Learning Activities: Team-Based Learning (TBL) as a Pedagogical Solution.

van Diggele C, Clarke AJ, Burgess A. 

The Clinical Teacher. 2025;23:e70284. https://doi.org/10.1111/tct.70284

https://asmepublications.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/tct.70284?af=R

背景と目的

多職種連携教育(Interprofessional Education: IPE)は、医療専門職学生が協働的なチーム環境で患者中心のケアを提供するための準備として重要である。しかし、大規模なIPEの実施には課題が多い。本研究では、Team-Based Learning(TBL)を教授法として活用し、「医療におけるエラーの理解と学習」をテーマとした大規模IPE活動を開発、実施、評価することを目的とした。

方法

対象と設定

2023年、シドニー大学において薬学(145名)、看護学(158名)、歯学(109名)、口腔保健(46名)、医学(311名)の計769名の上級学年学生が参加した。学生は必修科目の一部として、9回の2時間セッション(4日間に分散、対面8回とオンライン1回)のいずれかに割り当てられた。

チーム編成

各チームは4~6名で構成され、3~5の異なる職種を含むよう事前に配置された。各セッションには約11チームが参加した。

TBLセッションの構成

標準的なTBLの原則に従い、以下の要素で構成された:

事前学習(1.5~2時間)

  • 患者安全とgraded assertiveness(段階的主張)に関する必修教材の読解と動画視聴

個人準備確認テスト(iRAT)(15分)

  • 8問の多肢選択問題

チーム準備確認テスト(tRAT)(15分)

  • 同じ8問をチームで討議して解答

フィードバックと概念の明確化(15分)

臨床問題解決活動(75分)

  • 薬剤処方・投与に関する入院患者のシナリオを用いた演習
  • コミュニケーション、チームワーク、監督、職場文化におけるエラーを含む

まとめ(5分)

  • 重要なポイントの総括

ファシリテーター

37名の臨床家・教員(医学11名、薬学10名、看護学9名、歯学3名、口腔保健3名、健康科学1名)が参加し、各セッションには最低5名のファシリテーターが配置された。全員が1時間のオンライン研修を受講し、詳細なガイドラインが提供された。

評価方法

セッション直後に16項目の5段階リッカート尺度と3つの自由記述質問からなる質問紙調査を実施した。量的データは記述統計で、質的データは主題分析で解析された。

シナリオの概要

テーマ: 入院患者への薬剤処方と投与に関する事例

含まれていた要素:

  • 薬剤の処方ミス
  • 薬剤投与のエラー
  • コミュニケーションエラー
  • チームワークの問題
  • 監督(supervision)の不備
  • 職場文化に関する課題

シナリオの特徴

このシナリオは主に病院での薬物療法プロセスを中心に構成されていたことが読み取れる。そのため、医師(処方)、薬剤師(処方監査・調剤)、看護師(投与・モニタリング)の役割が明確に組み込まれていたと考えられる。

結果

出席率

752名/769名(98%)が出席した。

質問紙調査(回答率15%、112/752名)

主要な結果として:

  • 「異なる医療専門職の多様な視点がチームメンバーに尊重された」:91%が同意
  • 「チームメンバーは互いに意見表明を奨励した」:86%が同意
  • 「他の医療学生との共同学習により概念理解が深まった」:79%が同意
  • 「このTBLによって患者安全の理解が深まった」:81%が同意

質的データの主題

最も優れた特徴

  • TBLの構造とプロセス
  • 多職種グループディスカッション
  • 関連性のある臨床シナリオでの協働経験
  • ファシリテーターからの即時フィードバック

新たに学んだ知識・技能

  • 医療におけるエラー発生の理解と認識の向上
  • Graded assertiveness(段階的主張)のフレームワークとツールの習得
  • 患者安全プロトコルへの意識向上
  • 多職種連携の重要性の理解
  • 異なる医療専門職の役割の認識

改善提案

  • すべての職種に関連性のあるシナリオの必要性(特に歯学・口腔保健学生から)
  • セッション時間の短縮
  • 個人テストとチームテストの繰り返しの削減
  • チーム内の職種分布の均等化

考察

本研究は、TBLが大規模IPEの教授法として有効であることを示した。学生は小グループと大グループでの多職種間学習に積極的に参加し、臨床シナリオでの協働、即時フィードバック、患者安全と各職種の役割への理解深化を高く評価した。

しかし、いくつかの課題も明らかになった。第一に、一部の学生(特に歯学・口腔保健)がシナリオの職種への関連性が低いと感じた。第二に、チーム内の職種分布が不均等である場合があった。第三に、セッション時間や繰り返しテストに関する懸念が示された。

今後の改善点

  • 各セッションに含める職種数の最適化を検討し、すべての参加職種に関連性の高いシナリオを設計する
  • より多くの歯学・口腔保健のファシリテーターを確保する
  • セッション構成の効率化を図る

結論

本研究は、TBLフレームワークを用いた多職種連携学習の拡張可能で効果的なモデルを提供した。医学、看護学、薬学、歯学、口腔保健の学生にとって、患者安全問題の理解と認識を深める有用なアプローチとして評価された。今後は、各TBLセッションに含める職種数を減らし、使用する臨床シナリオの文脈的関連性を高めることを検討すべきである。

大規模IPEの実施において、TBLは学生の積極的参加を促し、多職種連携スキルの発達を支援する有効な教育戦略であることが示された。