医学教育つれづれ

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エチオピアの医学教育におけるコンピテンシー基盤型カリキュラム導入の課題と戦略

Leveraging the Educational Climate: Addressing Challenges and Developing Strategies for Competency-Based Curricula in Ethiopian Health Science Colleges.

Tessema, Y. M., Fereja, T., Aseffa, A., & Mohammed, A. B. (2025). 

Journal of Medical Education and Curricular Development, 12. https://doi.org/10.1177/23821205251385827 (Original work published 2025)

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/23821205251385827?mi=ehikzz

研究の背景

エチオピアの医療系大学では、カナダの医学教育指針をベースにした新しい教育改革が2012年から2015年にかけて導入された。コンピテンシー基盤型カリキュラム(CBC)は、知識・技能・態度・価値観の応用を重視し、卒業生の労働市場への準備を強化することを目的としている。しかし、COVID-19、紛争、気候変動という三重の危機により、その実施には大きな困難が生じている。

研究方法

本研究は、アディスアベバ大学とハワサ大学の2つの公立大学で実施された質的研究である。医学、助産学、看護学放射線技術学科から、学部長、学科長、モジュールコーディネーター、教員を含む36名(男性20名、女性16名)が参加した。現象学的理論に基づき、2023年11月から2024年1月にかけて半構造化インタビューが行われた。

主要な課題

1. トレーニング関連の課題

  • CBC実施のための適切なトレーニングが不足している
  • カリキュラムが急速に導入され、教員が準備する時間が不十分であった
  • カリキュラム開発プロセスに教員が関与していなかった

ある参加者は「CBCを実施するための適切なトレーニングの欠如が、私たちが直面している最大の問題だと思う」と述べている。また別の参加者は「カリキュラム草案の準備について、私も同僚も何も情報を得ていなかった」と語っている。

2. 管理運営上の課題

  • 新しいカリキュラムについての教員へのオリエンテーションが不十分
  • 事前の意識啓発や能力開発プログラムがなかった
  • カリキュラムに関連性のない内容が含まれていた
  • モジュール内でコースが断片化されていた
  • 異なる学科から同時に複数の教員を必要とする
  • 大学組織内でのコミュニケーションギャップ

「学科長は新しいカリキュラムについて私たちに知らせなかった」「新しいカリキュラムについて何の事前知識もなく、学科長は新しく開発されたカリキュラムに基づいて教えるよう指示した」といった声が聞かれた。

3. 資源関連の課題

  • 多様な専門性を持つ教員の需要増加に対する人的資源の不足
  • 実習用教材などの物的資源の不足
  • 大人数のクラスサイズによる学生対教員比率の問題

「追加のスタッフ雇用なしには、CBC カリキュラムを乗り越えることは難しい。従来のカリキュラムよりも多くの人的資源を必要とするからだ」という指摘がなされている。また「スキルラボ教材の準備なしには、カリキュラムを実施することは困難であった。医療科学教育は適切な技能を習得するために様々なスキルラボ教材を必要とするからだ」との声もあった。

4. モチベーション関連の課題

  • 一部の教員がCBCの受け入れに抵抗を示していた
  • 従来のカリキュラムの方が効果的だと考える教員がいた
  • 変化に対する抵抗と動機付けの欠如

「一部の教員は変化を受け入れることに頑固である」「従来の学習方法から新しいアプローチへ移行する教員の動機づけの欠如が、カリキュラム実施に影響を与える要因の一つである」という課題が指摘された。

克服のための戦略

1. 継続的な現職研修

学科長、モジュールコーディネーター、教員に対する継続的な現職研修を通じて、CBCの全体像と実施方法についての理解を深める。セミナー、ワークショップ、関連する能力開発イニシアチブを通じた研修が重要である。

2. インフラ整備

実演教材、教員用・学生用ガイドマニュアル、適切な教室スペースの提供が必要である。特にスキルラボや実演ラボへの投資は、学生の実践的学習経験をサポートするために不可欠である。

3. 経験共有と協働

異なる学科、モジュールコーディネーター、教員間での経験共有により、CBC実施中に直面する課題に対処する。協働的な取り組みとオープンなコミュニケーションが効果的な解決策を見出すための重要な戦略である。

4. 意識啓発と能力構築

実施者の能力を構築するための意識啓発とブリーフィングが不可欠である。ワークショップ、セミナー、トレーニングセッションを通じた継続的な意識啓発により、CBCの根拠とその利点を説明する。

5. 上級管理職の協力と支援

CBCの効果的な実施には、大学内外の上級管理職の協力と支援が必要である。CBCは多大な人的、物的、財政的資源を必要とするため、上級管理職が医療科学部門の特定のニーズを理解することが重要である。

結論と提言

本研究は、エチオピアの医療科学大学におけるCBC実施の課題として、能力開発、管理サポート、教員のモチベーション、資源の利用可能性のギャップを明らかにした。特に学科長、モジュールコーディネーター、教員への不十分なトレーニングが中心的な障壁として浮上し、地域の状況に合わせた継続的な専門能力開発の緊急な必要性が強調された。

今後、エチオピアの医療科学大学は、持続的な能力構築、資源配分の強化、リーダーシップの関与を優先すべきである。これらの措置により、医療セクターの進化するニーズに対応できる有能な医療専門職を輩出し、国内でのより効果的で持続可能な教育改革を推進することができる。