医学教育つれづれ

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フォーカスグループを医学教育研究で活用する:AMEE Guide No. 91

Using focus groups in medical education research: AMEE Guide No. 91.

Stalmeijer, R. E., McNaughton, N., & Van Mook, W. N. K. A. (2014). 

Medical Teacher, 36(11), 923–939. https://doi.org/10.3109/0142159X.2014.917165

https://www.tandfonline.com/doi/10.3109/0142159X.2014.917165?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%20%200pubmed

フォーカスグループの定義

フォーカスグループは以下のように定義される:

「特定の課題を探索するために組織されたグループディスカッション...グループは何らかの集団的活動を含むという意味で焦点化されている...決定的に重要なのは、フォーカスグループは、グループ相互作用を研究データとして明示的に使用することによって、より広範なグループインタビューのカテゴリーから区別される」(Kitzinger 1994)

重要なのは、フォーカスグループと単なるグループインタビューとの違いである。グループインタビューでは研究者が「調査的」役割を採用し、質問し、グループダイナミクスをコントロールする。一方、フォーカスグループでは、研究者は周辺的な役割を取り、モデレーターまたはファシリテーターとして機能する。重要なのは参加者間の相互関係的ダイナミクスであり、研究者と被研究者の関係ではない。

なぜ・いつフォーカスグループを使うのか

使用する理由

フォーカスグループの主な目的は、異なる参加者の視点から情報を収集することである。深い対話的交流により、参加者が何を考え、感じているかだけでなく、意味が構築された状況の詳細を聞くことができる。

フォーカスグループは特に以下の目的に適している:

  • 探索的研究:十分に理解されていない、または定義が不明確なトピックの研究
  • 説明的研究:予備的データをさらに強化・確認する研究
  • 確認的ツール:他の研究ツールからの知見を検証する

使用すべきでない場合

以下の状況ではフォーカスグループは最適な方法ではない:

  • 参加者が大きなグループ内で共有したくないような、潜在的に機密性の高い個人情報を収集する研究
  • 参加者間に大きな権力格差が存在する研究環境

これらの場合は、1対1のインタビューが推奨される。

フォーカスグループの準備

サンプリング

効果的なサンプリングはフォーカスグループの成功の鍵である。質的サンプリングの目的は、代表的なサンプルを募集することではなく、研究対象となる集団や母集団内の多様性を反映することである。

主なサンプリング戦略:

  1. 理論的サンプリング:データ収集と分析を並行して行い、理論が展開するにつれて次に収集するデータを決定する帰納的・反復的戦略
  2. 目的的サンプリング:データ生成後に行う比較を見越して、選択された基準を使用する

グループ構成

同質的グループ

  • 利点:共有された背景や経験から生まれる親密さが、オープンなコミュニケーションとアイデア交換を促進する
  • 欠点:「集団思考」の可能性、アイデアの多様性の欠如

異質的グループ

  • 利点:多様な視点の導入により、議論を刺激し、新しい洞察を提供する
  • 欠点:権力の不均衡、異なる意見への敬意の欠如の可能性

グループの数とサイズ

  • グループ数:データ収集の唯一の情報源として使用する場合、最低4〜5のフォーカスグループが推奨される。重要なのは飽和(新しいテーマが出なくなる状態)に達することである
  • グループサイズ:最適なサイズは6〜10名。グループは多様な意見と視点を可能にするのに十分大きく、各個人が完全に参加し声を聞かれるのに十分小さくなければならない。最大8名が推奨される
  • セッション時間:1時間から1時間半が推奨される。2時間を超えないこと

質問の作成

Krueger & Casey(2009)は、質問ルート(questioning route)を準備することの重要性を強調し、以下のステップを提案している:

質問のカテゴリー

  1. 導入質問:全員が早期に話し始めるため。事実を尋ね、態度や意見は尋ねない
  2. イントロダクション質問:議論のトピックを紹介し、参加者とトピックとのつながりについて考え始めてもらう
  3. 移行質問:研究を推進する重要な質問へと会話を移行させる
  4. 重要な質問:研究を推進する2〜5の質問。十分な時間を確保する必要がある
  5. 終了質問:議論を締めくくる。「すべてを考慮して」質問、要約質問、最終質問(「見落としたことはありますか?」)

フォーカスグループの実施

モデレーターの役割

モデレーターの主な責任は、参加者間の議論とアイデア交換を促進することである。優れた対人スキル、傾聴力、非判断的態度、適応性を持つ必要がある。

モデレーターは以下を行う必要がある:

  • グループの目的を明確に説明する
  • 人々を安心させる
  • グループメンバー間の相互作用を促進する
  • 議論を促進し、違いを引き出す
  • 詳細を探り、必要に応じて会話を前進させる
  • 全員が参加し発言する機会を確保する
  • 個人的な意見を示すことを避ける

モデレータースタイル

  1. 指示的スタイル:調査する質問が多く焦点化されている場合に最適
  2. 非指示的スタイル:探索的研究、ブレインストーミング、研究領域の理解を広げ深める場合に適している

グループダイナミクスへの対処

  • 支配的・破壊的なメンバーへの対応:グループを一巡して意見を聞く、他のメンバーに意見を求める
  • 内気な・無言の参加者:直接参加を促す
  • 参加者がモデレーターにのみ答える状況:モデレーターが話し手の周囲に目を向けることで、他の参加者の関与を促す

データ分析

フォーカスグループは3つのレベルのデータを生成する:

  1. 個人についてのデータ
  2. グループディスカッションについてのデータ
  3. グループ相互作用についてのデータ

分析のアプローチ

  • 演繹的分析:トランスクリプトに対して、事前に決定されたテーマまたはコーディング構造を適用する
  • 帰納的分析:新たなテーマを見出し、データから生じる主要トピックの概念/定義/意味を明確化する

フォーカスグループ特有の分析のヒント

  1. トランスクリプトを超えて見る:観察データ、人口統計データ、非言語的コミュニケーションも含める
  2. 合意と不一致に注目する:グループ内でどの程度の合意または不一致が生じたか、視点がどのように生じたか修正されたかを特定する
  3. 沈黙もデータ:沈黙が生じた時点を分析し、その性質を理解する

研究の質と倫理

質的研究の質基準

優れた質的研究は以下の特性を持つべきである:

  1. 信頼性(Credibility):研究の知見が信頼でき、他者にとって信じられる程度。データ、方法、研究者のトライアンギュレーション、メンバーチェックなどで確保する
  2. 転用可能性(Transferability):知見が別の文脈に転用できる程度。詳細な記述(thick description)、サンプリング戦略の説明が必要
  3. 信頼可能性(Dependability):知見が生成された文脈と一致している程度。飽和に達するまでデータ収集を継続する
  4. 確認可能性(Confirmability):研究者がどのように決定や結論に至ったかの洞察を提供する。監査証跡、反省性(reflexivity)の提示が必要

倫理的配慮

研究参加者の利益を保護する一方で、他者の利益のための研究データの目的を損なわないようにする必要がある。特に以下に注意:

  • 潜在的に不安や苦痛を引き起こす可能性のあるトピック
  • 脆弱な参加者との作業
  • 機密性と匿名性の保護
  • 研究者の特性が参加者に与える影響

論文執筆

方法セクション

以下を記述する:

  1. 方法論とフォーカスグループの根拠:研究課題に対する方法論、デザイン、フォーカスグループの選択理由
  2. 詳細な記述:データがどこで、どのように、誰から収集されたか。サンプリング方法、グループ構成、参加者数、討論時間など
  3. 研究実施者:研究チームメンバー、モデレーター、オブザーバーの背景と特性。反省性(reflexivity)の提示
  4. 分析方法:使用したデータ分析手順、原則、関与者、理論の使用、メンバーチェックの程度

結果セクション

  • 引用の提示:逐語的引用により、分析中にパターンや構成が生じたデータへの洞察を提供する
  • 視覚的表現:必要に応じて、知見の視覚的描写を提示する(特にグラウンデッド・セオリーなど)

考察セクション

既に発表されている実証的・理論的研究との関連で結果を振り返る。転用可能性と確認可能性を示す。

まとめ

フォーカスグループは、その探索的・説明的な可能性を考えると、医学教育研究における適用可能性は広範である。厳密なフォーカスグループ研究を設計、実施、発表するためには、方法論的およびパラダイム的理解に従って、フォーカスグループを方法として選択する根拠を示せるようになることから始まる。

医学教育研究は成熟しており、もはや何をしたかを述べるだけでは研究基準を満たすのに十分ではない時代である。フォーカスグループ研究もその例外ではない。