Promoting the joy in academic medicine: A scoping review.
Rashid, M., Firth, N., Dennett, L., John, I., Nguyen, J., & Forgie, S. (2025).
Medical Teacher, 1–11. https://doi.org/10.1080/0142159X.2025.2519640
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/0142159X.2025.2519640?af=R

研究背景と問題意識
現状の課題
- 多くの職場で仕事における喜びの喪失が報告されており、倦怠感と苦痛を伴っている
- 長時間労働は脳卒中や心疾患のリスクを高めるだけでなく、学術医師の場合は医療提供、管理業務、学術業務という追加的なタスクがこれらの影響を悪化させている
- その結果、燃え尽き症候群や無関心状態に陥りやすい
新しいアプローチ
- 従来の欠陥ベースアプローチ(燃え尽き症候群率や無関心レベルの検討)から脱却
- 強みベースアプローチとして「喜び」の促進に焦点を当てる
- 喜びは満足感とは異なる感情で、内面から生まれ、目的と意味を体現する
- 職場での喜びは回復力と全体的な幸福感の構築に寄与
喜びがもたらす効果
- 職場で喜びを経験する人は生産性が高く、創造性が3倍高い
- 喜びのある環境は生産性の高い同僚を引きつけ、維持する
- ポジティブな体験と感情は個人の成長と職場での幸福感を促進
- 逆に、喜びが促進されない職場はストレス、欠勤の増加、生産性の低下を招く
研究方法
- 7つのデータベースを検索
- 査読済み研究、書籍、書籍の章、会議抄録、論文を対象
- 研究デザインや国による制限なし
- 4,649件の文献から最終的に25件を選択
主要な結果
25件の研究が1997年から2023年の間に発表され、そのうち22件が米国、2件が英国、1件がカナダで実施されました。
3つの主要テーマ
テーマ1:職場改善のための包括的アプローチ(96%の研究で言及)
1.1 職場の柔軟性向上
具体的施策:
- 柔軟なスケジュール管理の導入
- 業務における自律性の拡大
- 時間管理に対する裁量権の付与
効果:
- 時間的自律性を持つ医師ほど高い喜びレベルを報告
- 自律性の欠如は喜びの減少と直結
1.2 管理負担の軽減
主要課題:
- 電子健康記録(EHR)や電子医療記録(EMR)の文書化作業
- 医師が1日2時間以上をEMR文書化に費やしている現状
- 非効率な管理システム
解決策:
1.3 関係性の構築
職場内の関係:
- 同僚との強固な関係が職場の幸福感に不可欠
- ピアサポートが職業満足度と成功の重要な要因
- チームワークと尊敬の共有感覚
家族・私生活:
- 家族が喜びの主要な源泉
- 配偶者や家族からのサポートが医師の幸福感に重要
- ワークライフバランスの維持
1.4 ウェルネス指標の実装
測定の重要性:
- ウェルネス測定により問題への認識と解決へのコミットメントを示す
- スタッフの幸福度に関するデータの定期収集
- 現行介入の改善や新規介入実施のための洞察提供
継続的評価:
- 介入の有効性と継続性を確保するための定期評価
- データドリブンな改善アプローチ
テーマ2:エビデンスに基づくフレームワークと組織的介入(44%の研究で提示)
2.1 PERMAモデル(Seligman)
5つの構成要素:
- Positive emotion(ポジティブ感情)
- Engagement(エンゲージメント)
- Relationships(関係性)
- Meaning(意味)
- Achievement(達成)
実施例:
- 放射線科での教員開発ワークショップ
- 参加者の98%がワークショップを有用と評価
- 96%が同僚関係の強化を報告
- 96%が職場で喜びを促進するための要素を最低1つ取り入れると回答
2.2 医療改善研究所(IHI)フレームワーク
9つの側面:
4つの重要行動:
- 医師が重要と考えることについて質問
- 職場で喜びを体験する際の障害について問い合わせ
- 組織のあらゆるレベルで喜びを共同責任とする
- 実施されたプログラムの効果を評価
2.3 Swensen-Shanafeltフレームワーク
6つのアクション:
- 人間のニーズを満たすシステムの組織化
- 参加型管理スキルを持つリーダーの育成
- コミュニティ感覚の醸成
- フラストレーションと非効率性の源泉の排除
- 予防可能な患者害の軽減
- 個人のウェルネスの強化
目的:
- 個人の社会的ニーズの充足
- 回復力を減少させる要因の軽減
- 全体的な職場環境の改善
2.4 プログラム実施の成功要因
リーダーシップサポート:
- すべての効果的プログラムでリーダーシップまたは組織による確立・支援が必要
- トップダウンのコミットメントが成功の鍵
保護された時間:
- 同僚関係と喜びを高める活動のための専用時間の確保
- スタッフの幸福感に対するポジティブな影響を実証
テーマ3:リーダーシップの重要な役割(60%の研究で言及)
3.1 サポートとメンターシップ
重要性:
- リーダーシップからのサポートがキャリアの喜びと成功に不可欠
- メンターの存在が成功したキャリアに重要
- 女性の場合、卒業後のメンター不足により「剥奪感」を経験
具体的支援:
3.2 参加型管理
アプローチ:
- 同僚からの職場改善提案の積極的な求取
- フィードバックの収集と意思決定への関与
- 自律性とポジティブ感の向上による全体的幸福感の促進
具体例:Listen-Act-Doモデル(Mayo Clinic)
- Listen(聞く): スタッフの意見と提案を積極的に収集
- Act(行動): 提案された変更を実際に実施
- Do(実行): 継続的な改善活動の実行
実例:乳房放射線科医の事例
- 月単位ではなく年単位でのスケジュール計画を提案
- 実施後、意思決定に参加できた医師の喜びが向上
3.3 参加型管理コンピテンシー
効果測定:
- リーダーシップコンピテンシーの1ポイント向上ごとに
- 職場環境の認識改善
- 個人の回復力向上
- スタッフエンゲージメントの向上
3.4 現場重視のアプローチ:Gemba歩行
概念:
- 「Gemba」= 実際に作業が行われている場所
- リーダーが現場を訪問し、環境を観察
- 同僚との直接対話
- 職場改善のための意見と提案の収集
効果:
- 現場の実情把握
- スタッフとの信頼関係構築
- 実践的な改善策の発見
3.5 コミュニティと同僚関係の促進
10件の研究で言及された戦略:
- コミュニティ感覚の醸成
- スタッフ間の同僚関係促進
- チームビルディング活動
- 共食(commensality)- 一緒に食事をする機会の創出
- 趣味、スポーツ、芸術活動の共有スペース提供
- 地域貢献のためのボランティア活動
実践への示唆
学術医師への推奨事項
- エネルギーと意味をもたらす要因の認識と増幅
- 同僚に喜びをもたらす要素の特定
- 喜び重視文化への移行
- 個人レベルでの喜び体験の理解
学術医療リーダーへの推奨事項
- プログラム設計と実装:
- 柔軟性と自律性の向上
- 管理負担の軽減
- 職場での関係性への投資
- つながりのサポート
- ウェルネス測定
- 推奨フレームワークの活用:
- PERMAモデル
- IHI Framework for Improving Joy in Work
- リーダーシップトレーニング:
- 喜び促進介入の実装能力
- プレゼンス、目的、ポジティブ感でのロールモデリング
- 幸福感の評価と報酬
- 安全で包括的な環境の創造
組織レベルでの推奨事項
- 物理的・社会的環境の構築:
- チームの同一場所配置
- 非公式な交流のためのスペース
- コラボレーション促進
- 職場での喜び感の自然な醸成
- 測定と評価システム:
- ウェルネス指標の定期測定
- 介入効果の継続的評価
- データドリブンな改善アプローチ
結論
学術医療機関において喜びを促進するには: