The Impact of Art in Medicine Training and Its Effectiveness on Professionalism and Interpersonal Skills: A Prospective Study.
Musri MC, Nehvi AI, Chacko SR, Eiger G, Moghbeli N.
Adv Med Educ Pract. 2025;16:493-500
https://doi.org/10.2147/AMEP.S462264

研究の背景と目的
この研究は、内科レジデント研修において芸術を活用することで専門性と対人コミュニケーションスキルを向上させる取り組みに焦点を当てています。米国の医学レジデント研修では、ACGME(卒後医学教育認定評議会)によって定められた6つのコアコンピテンシーが要求されています:
- 患者ケア
- 医学知識
- 診療に基づいた学習と改善
- システムに基づいた診療
- 専門性
- 対人関係/コミュニケーションスキル
特に最後の2つのコンピテンシーは、しばしば「ソフトスキル」と呼ばれ、レジデント研修において体系的に教えられることが少ない領域です。本研究では、この重要なギャップを埋めるために「Using Art for Professionalism and Communication Skills in Medical Education (UAPCMedEd)」というプログラムを開発・実施しました。
プログラムの詳細設計
UAPCMedEdは、以下の6つのセッションから構成される月1回の1時間バーチャルワークショップです:
前半3セッション(対人/コミュニケーションスキル向上)
- エラボレーションゲーム:芸術作品の一部分を見せ、参加者が観察内容を積み重ねて完全な描写を構築する
- 知覚テスト:作品を30秒だけ見せて詳細な観察と論理的な説明を促す
- 描写と描画ゲーム:ペアを組み、一方が作品を描写し、もう一方がその説明だけを頼りに描画する
後半3セッション(専門性向上)
- 10回×2エクササイズ:作品を30秒見た後、観察に関連する10の言葉やフレーズを考え、共有する(内在的バイアス低減と文化的感受性向上)
- ステップインサイドエクササイズ:作品に描かれた人物や物の視点から3つの質問に答える(専門的アイデンティティ形成の振り返り)
- 個人的反応ツアー:臨床実践の特定の課題と関連する芸術作品を選び、その関係性を説明する(医療実践に関する自己反省の強化)
評価方法
研究者たちは、以下の5つの質問からなるアンケートを用いて、ACGMEのコアコンピテンシーに対応する参加者の自己評価を測定しました:
- 新しい視点を考慮できるようになったか(多様な患者層への感受性と応答性)
- プログラムがリフレクションのための時間とツールを提供したか(思いやり、誠実さ、他者への敬意)
- より効果的にコミュニケーションできるようになったか(患者や医療専門家との効果的なコミュニケーション)
- 医療ケアからの一時的な休息になったか(思いやり、誠実さ、他者への敬意)
- 医療提供者としての役割と再びつながることができたか(思いやり、誠実さ、他者への敬意)
結果と参加者の反応
全32人の参加者(女性12名、男性20名;レジデント1年目15名、2年目8名、3年目9名)から得られた91の回答を分析した結果:
- 100%:新しい視点を考慮できるようになった
- 97%:リフレクションのための時間とツールを得られた
- 95%:医療ケアから一時的な休息になった
- 81%:より効果的にコミュニケーションできるようになった
- 74%:医療提供者としての役割と再びつながることができた
各セッションの平均参加者数は10名(全ボランティアの31%)で、これは一般的な正午のカンファレンスへの参加率と一致していました。
プログラムの具体的な活動例
一例として、Winslow Homerの「The Life Line」(1884年)という作品を使用したセッションでは、「死や死にゆくことについての研修経験に関連する芸術作品を見つけ、その作品との関連でその経験について振り返る」という課題が出されました。このような具体的な課題が、医療実践における個人的な反省と専門的な成長を促しました。
研究の限界と今後の展望
本研究には以下のような限界があります:
- 小規模なコホート(32名)と単一のレジデンシープログラムへの限定
- アンケートのパイロットテスト未実施
- アンケートの評価者内・評価者間信頼性の評価欠如
- リッカート尺度の不使用
- 対照群の欠如
- 長期的な効果の持続性の未評価
- 結果分析における交絡因子
しかし、この予備的な研究結果は、医学教育における芸術の役割に関する更なる客観的な研究を促すものであり、将来的には:
- より大規模なサンプルサイズでの研究
- 複数の専門分野・施設での実施
- これらのスキルを評価するための検証済みの方法の使用
- より長期的なフォローアップ
が望まれます。
研究の意義
この研究は、従来の「ハードスキル」(医学知識や診断技術)に加えて、「ソフトスキル」(専門性、コミュニケーション)の育成にも同等の時間と注意を割くことの重要性を強調しています。特にSARS-CoV-2パンデミック後のバーチャル環境での実施可能性を示した点も革新的です。
医療人文科学の教育は、自己反省、内省、観察スキルの能力を刺激し、若手医師の専門的アイデンティティ形成に貢献します。これにより、患者を単に生物学的な病理として見るのではなく、社会的決定要因を含む疾患の多面的な側面を考慮する総合的な視点の育成が期待されます。