医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。最近はyoutubeも

医学教育の北極星としての「繁栄」の促進

Advancing flourishing as the north star of medical education: A call for personal and professional development as key to becoming physicians
Cheryl A. Maurana,Jeffery D. Fritz,Alicia A. Witten,Sarah E. Williams &Kimara A. Ellefson
Received 27 Sep 2024, Accepted 01 Oct 2024, Published online: 31 Oct 2024
Cite this article https://doi.org/10.1080/0142159X.2024.2412791

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/0142159X.2024.2412791?af=R#abstract

過去15年以上にわたり、医学教育、ひいては健康科学教育の変革を求める声は、学習者の主観的経験や学習環境に関する問題を取り上げてきた。 人文科学との関わりを深めること、専門家としてのアイデンティティ形成の強化、リーダーシップの開発、そして意味や目的、帰属意識を高めるためのシステム改革などである。 しかし、医学教育において進行中の多くの取り組みや改革は、特に意味、目的、帰属意識を高めることに焦点を当てたものについては、その望ましい成果を十分に達成するまでには至っていない。 われわれは、医学教育の変革を求める声は、人間的繁栄の促進に焦点を当てることで統一され、導かれることを提案する。 手短に言えば、私たちは人間の栄 養とは、「存在すること、そして行動すること、自分の可能性を実現し、他者 が同じように行動することを助けるという全体性」の状態に到達することを 可能にする願望的な目標であると定義している。 私たちは、医学生、研修医、そして教授陣のために、栄える医学教育の旅の意味を共有する

 

  1. 医学教育の現状と課題
  • 従来の医学教育は、「知ること(knowing)」と「できること(doing)」に重点を置いてきた
  • しかし「なること(becoming)」の側面が十分に扱われていない
  • 多くの医学生や研修医が不安、うつ、バーンアウト、モラルインジャリーに直面している
  • 意味、目的、帰属意識の向上を目指す取り組みが不十分
  1. フレームワークの詳細説明 KNNフレームワーク(Kern National Network for Flourishing in Medicine)の特徴:

A) Character(品性)の要素:

  • 道徳的特性
  • 市民としての特性
  • 知的能力
  • 実践的パフォーマンス
  • これらは時間をかけて形成され、行動や実践に現れる

B) Caring(ケア)の構成要素:

  • 注意深さ(attentiveness)
  • 責任感(responsibility)
  • 能力(competency)
  • 反応性(responsiveness)
  • 参加意識/市民性(engagement/citizenship)
  • 個人と集団の成長・発展・繁栄を支援する姿勢

C) Practical Wisdom(実践的知恵):

  • 特定の状況における適切な判断
  • 個々の患者に合わせた対応
  • 経験を通じて培われる判断力
  1. 教育段階別の具体的アプローチ

医学生に対して:

  • 人文科学との統合的な学習
  • 価値観と臨床知識の統合
  • 支援的な専門家コミュニティの形成
  • 構造化されたメンタリングプログラム

研修医・フェローに対して:

  • 仕事量管理だけでなく、全人的な成長支援
  • プロフェッショナリズムの深い理解
  • 複雑な倫理的状況への対応能力育成
  • 実践的な意思決定スキルの向上

教員開発において:

  1. 実装における重要ポイント

組織的アプローチ:

  • 共通言語と理解の確立
  • 持続的な文化変革への取り組み
  • 柔軟性と自律性の確保
  • フィードバックシステムの構築

期待される成果:

  • 医療者としての全人的成長
  • バーンアウト予防
  • 患者ケアの質向上
  • 教育環境の改善
  • 医療文化の変革
  1. 今後の課題
  • フレームワークの効果測定
  • ベストプラクティスの開発
  • 継続的なフィードバックと改善
  • 組織文化の変革手法の確立
  • 長期的な影響の評価

 

ポイント

  • カリキュラムデザインに栄えるフレームワークを用いることで、医学教育のすべての段階において、学生の学習、発達、経験に一貫性と連続性を持たせることができる。

  • 人格、思いやり、実践的な知恵を教えるための統合的なアプローチは、繁栄に根ざしており、あらゆるレベルの学習者が同時に知識を習得し、実践的なスキルを身につけ、専門家としてのアイデンティティを培うことを可能にする。

  • Flourishingを中心としたアプローチは、医学生からレジデントまでの各教育段階に特有のプレッシャーに対応する環境を作り出すことができる。

  • ファカルティ・ディベロップメントの中でFlourishingを優先させることは、あらゆる領域の教授陣がフラワリシングを中心とした教育環境のカリキュラムを形成する上で重要な役割を果たすため、非常に貴重であることが証明できる。

  • ベストプラクティスを開発するためには、人間開花に導かれた医学教育を経験した人々から学び、話を聞くことが不可欠である。