医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

地方大学の医学生における初期臨床研修病院選択に関する意思決定.単施設横断研究

Willingness to Select Initial Clinical Training Hospitals Among Medical Students at a Rural University in Japan: A Single-Center Cross-Sectional Study

    
Authors Yamashita S , Tago M , Tokushima M, Emura S, Yamashita SI

Received 16 May 2022

Accepted for publication 31 August 2022

Published 19 September 2022 Volume 2022:13 Pages 1081—1089

DOI https://doi.org/10.2147/AMEP.S374852

 

https://www.dovepress.com/willingness-to-select-initial-clinical-training-hospitals-among-medica-peer-reviewed-fulltext-article-AMEP

 

目的

2060年には多くの国が高齢化社会となる。超高齢社会である日本は、貴重な参考となる可能性がある。日本では2004年以降、研修医や大学病院勤務医の数が半減し、地方では深刻な医師不足に陥っている。本研究では、医学生が初期研修先として大学病院を選択する要因と、地域病院のみを選択する要因を明らかにした。

方法

この単施設横断研究は、2021年2月から3月にかけて、日本の典型的な地方都市で実施された。データ収集は、4人の研究者によるナラティブレビューとディスカッションから作成した質問票を用いて行った。参加者を大学病院を選択した人と地域病院のみを選択した人に分け、ロジスティック回帰分析を行った。

調査項目は、年齢、性別、両親の職業、入学前からの佐賀県内の親戚・知人・友人の有無、配偶者の有無、高校からの推薦入学、地域枠入学、留年経験、現在の大学の学年、出身地、将来の診療科などである。その他、初期臨床研修希望地、初期臨床研修希望病院、初期臨床研修病院選択理由、大学生活満足度、座学・実習満足度(1~4年生)、病院研修満足度(5・6年生)、病院研修中に出会ったロールモデルとなる医師(5・6年生)、学習意欲などの質問項目がある。

結果

アンケートに回答した学生300名(回答率46.4%)のうち、291名が研究への参加に同意した。このとき,93名の学生は初期研修先を決めていなかったため,除外した。分析対象者198名のうち、113名(57.1%)が大学病院を選択した。学生の選択に影響を与えた有意な要因は、地域病院群では「給与や福利厚生が良い」(オッズ比[OR]2.6、95%信頼区間[CI]: 1.3-5.2 )、大学病院群では「5・6年生で病院実習を始める前に医療現場で働く医師と接触したい」(OR 0.4, 95% CI: 0.2- 0.8 )と「初期研修は佐賀県が良い」(OR 0.2, 95% CI: 0.1- 0.4 )が挙げられ、これらの要因は学生たちの選択に大きく影響していることが明らかとなった。

結論

大学病院は,研修医を確保するために,良い給与や福利厚生を提供することが可能である.また,卒業後に医学部のある県で働くことを誓約した学生を優先的に入学させることや,病院での研修開始前にやる気のある学生と上級医との接触を容易にすることも有効な手段である.