医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

動物用抗菌薬カードゲームは獣医学生の抗菌薬選択スキルを向上させる

Veterinary antimicrobial card game improves antimicrobial selection skills in veterinary students

Jacob Wolf Ashton C. BergerAshton C. Berger1Elayne P. ColonElayne P. Colon2

www.frontiersin.org

研究の背景・目的

  • 研究テーマ: 獣医学生の抗菌薬選択スキル向上を目的としたカードゲームの教育効果
  • 対象: フロリダ大学獣医学部の3年生・4年生50名
  • 研究期間: 2025年(救急・集中治療ローテーション中の2週間)

研究方法

  1. 事前調査: 感染症・抗菌薬に関する快適度を5段階評価
  2. 従来の講義: 30-45分間の口頭による抗菌薬の基礎講義
  3. カードゲーム: 抗菌薬と感染症をマッチングするゲーム(30-45分)
  4. 事後調査: 同様の評価項目で効果測定

抗菌薬カードゲーム

ゲーム名:Empiric Small Animal Veterinary Card Game(Empiric社、ポートランドオレゴン州

ゲーム開発者・監修者

  • 獣医集中治療専門医
  • 人間の小児科医
  • 複数の専門医による内容検証(集中治療専門医、内科専門医、薬剤師、微生物学者)

ゲームルール

  1. 各学生が5枚の抗菌薬カードを手札として保持
  2. テーブル上に5枚の疾患カード(短いケース記述付き)を配置
  3. 各疾患カードには治療難易度に基づくポイントを設定
  4. 学生は順番に疾患の治療を試行
  5. 抗菌薬カードを選択し、カード裏面の正解を確認
  6. 正解の場合:ポイント獲得、使用カードを廃棄、新しいカードを補充
  7. 不正解の場合:カードを戻し、次の学生に順番移行
  8. ファシリテーターが必要に応じて解説や議論を促進

ゲーム内疾患(研究対象):

対照疾患(ゲーム外):

  • アクチノマイセス症(カードゲーム効果測定のための対照群)

主な結果

学習効果

  • 4つの感染症前立腺炎、子宮蓄膿症、ノカルジア症、ライム病)で抗菌薬処方の快適度が有意に向上
  • 対照群(アクチノマイセス症:ゲームに含まれていない)では改善なし
  • 正答率も多くの疾患で向上

学生の反応

  • 全学生がゲームを楽しいと評価
  • 全学生がまたプレイしたいと回答
  • 98%が認知的に挑戦的と評価
  • 96%が予測不可能な要素があると評価

研究の意義

教育的効果

  • アクティブラーニングの一形態として有効
  • 安全な環境での臨床判断練習が可能
  • 即座のフィードバック反復学習が可能
  • 従来の講義を補完する教育手法として効果的

獣医学教育への貢献

  • 抗菌薬耐性対策の観点から適切な処方教育が重要
  • ゲームベース学習の獣医学教育への応用可能性を示唆
  • 他の分野への応用も期待される

研究の限界

  • 男女比の偏り(女性92%、男性8%)
  • 長期的な知識保持の評価なし
  • 対照群なしの設計
  • 自由記述回答が少ない

結論

研究の主要な貢献

  1. 教育効果の実証:従来教育法との組み合わせによる相乗効果
  2. 学習者満足度:高い楽しさと継続意欲
  3. 特異性の証明:ゲーム内容に特化した学習効果
  4. 実用性:実際のカリキュラムでの実装可能性

獣医学教育への長期的影響

パラダイムシフトの促進

  • 受動的学習から能動的学習へ
  • 個別化教育の推進
  • 技術統合型教育の発展

専門職教育の質向上

  • 臨床判断能力の向上
  • 生涯学習習慣の形成
  • 職業的満足度の向上

社会的意義

公衆衛生への貢献

  • 適切な抗菌薬処方による耐性菌対策
  • 獣医療の質向上
  • 人畜共通感染症対策の強化

教育産業への影響

  • エドテック分野の発展
  • 新しい教育ビジネスモデル
  • 産学連携の促進