医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。最近はyoutubeも

解剖学教育におけるバーチャル脱出ルーム: 2つの大学におけるケーススタディ

Aaron W. BegerSarah HannanRiya Patel, and Eva M. Sweeney

Advances in Physiology Education 0 0:0

https://journals.physiology.org/doi/abs/10.1152/advan.00248.2024?af=R

研究背景

方法論と設計

QUB(腹部解剖学VER):

  • プラットフォームGoogle Workspace(Google Slides/Forms)
  • 3Dモデル作成:Photogrammetry(後腹壁、肝臓)
  • シナリオ:消化器内科クリニックで3人の患者を診察
  • 評価方法:25項目のリッカート尺度調査、フォーカスグループ
  • 特殊な課題
    • Puzzel.orgでのジグソーパズル
    • 3Dモデルからの構造特定
    • 病理標本の360度写真
    • ChatGPTで作成したなぞなぞ
    • 医用画像の解釈

VCOM(上肢解剖学VER):

  • プラットフォームGoogle Workspace + Virtual Human Dissector(VHD
  • デザイン:解剖実習室の写真に10個の透明な形状を配置
  • 評価方法:14項目のリッカート尺度調査(既存の検証済みツール使用)
  • 特殊な課題
    • なぞなぞ(ChatGPT生成)
    • クロスワードパズル
    • 医用画像解釈
    • VHD 3D解剖モデルとの連携

参加者の詳細

QUB:

  • 招待69人(医学生57人、教職員12人)中9人参加(13%)
  • 4グループ(2〜3人)で実施
  • 2グループが35分以内に完了、平均43分

VCOM:

  • 解剖学インターン/チューター27人中8人参加(30%)
  • OMS-I(1年生)4人、OMS-II(2年生)4人
  • 1人のみ50分以内に完了

フィードバック分析の詳細

QUBの調査結果(n=9):

  1. 全体的な満足度(Cronbach's α=0.79):
    • 楽しい:4.89±0.33
    • 理解しやすい:4.22±0.44
    • チームワーク促進:4.89±0.33
    • コミュニケーション促進:4.44±0.53
    • グループ活動を楽しめた:5.0±0
  2. 3Dモデル(α=0.66):
    • 有用な教材:4.44±0.73
    • 画質は十分:4.33±0.71
    • 将来の復習に役立つ:4.67±0.5
    • ただし、操作性に課題:2.22±1.48
  3. 病理標本(α=0.60):
    • 画質は良い:4.44±0.73
    • 有用なリソース:4.11±0.60
    • 病理の特定に困難あり:4.00±1.22

VCOMの調査結果(n=8):

  1. 学習ツールとしての効果(α=0.61):
    • 新しい視点で考えられた:4.5±0.53
    • 効果的な復習方法:3.75±1.04
    • なぞなぞ/パズルは学習の妨げではない:1.88±0.35
  2. 将来の改善要望
    • チームベースを希望:3.88±1.13
    • 対面実施を希望:3.88±1.13
    • 通常講義は維持:2.5±1.07(置き換えるべきではない)

フォーカスグループの主要テーマ

QUBの3つの主要テーマ:

  1. 動機付けと楽しさ
    • 競争的な要素が動機付けになる
    • 早い段階での実施が特に効果的
    • 従来の講義/実習に変化をもたらす
    • 知識の定着ツールとして最適(教授法としてではなく)
  2. 3D仮想モデルの有用性
    • 復習ツールとして効果的
    • 遺体標本が基本だが補助として有用
    • 自宅からアクセス可能な利点
    • 操作方法の事前指導が必要
  3. 病理標本の価値の不確実性
    • 方向感覚を失いやすい
    • 単独では十分ではない
    • ラベルが必要
    • 健常との比較があると理解しやすい

実践的な考慮事項

AI(ChatGPT)の活用:

  • なぞなぞの生成に効果的
  • 情報の正確性を確認する必要あり
  • 倫理的な考慮が必要(偏見、プライバシー)

時間配分:

  • 多くの参加者が制限時間内に完了できず
  • パイロット実施で適切な時間設定が必要
  • 失敗による落胆を防ぐ

技術的課題:

  • 著作権保護のため、標本画像をGoogle Form外に保存
  • リモート実施では技術サポートが難しい
  • 費用のかかるソフトウェアは導入障壁となる

研究の限界

  1. サンプルサイズ:QUB(9人)、VCOM(8人)と小規模
  2. 選択バイアス:自発的参加者はゲーム好きの可能性
  3. 時間制約:カリキュラムへの完全な組み込みは困難
  4. 技術的要件:一部の学生に技術的難しさ

改善提案

  1. 報酬システム:成功チームへの賞品
  2. インタラクティブ要素:ホワイトボード機能の活用
  3. 事前指導:3Dモデルの操作方法
  4. ヒントシステム:個人が詰まった際の救済措置