医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

地域における外科教育の現状と課題:大分県におけるアンケート調査から

Current status and issues regarding surgical education in the region: a questionnaire survey in Oita prefecture in Japan

Yoshitake Ueda, Takahide Kawasaki, Masafumi Inomata & Norio Shiraishi 

BMC Medical Education volume 24, Article number: 449 (2024) 

bmcmededuc.biomedcentral.com

背景
地域外科医療における外科医の不足と高齢化は著しく、地域の若手外科医に対する外科教育の重要性は増すばかりである。しかし、地域外科教育に関する報告は極めて少ない。本研究は、地域外科医療における外科教育の現状と課題を明らかにし、地域における外科教育のあり方を検討することを目的とした。

調査方法
2つの質問紙調査を実施した。(1)「若手外科医の教育に関する意識調査」は外科医が勤務する施設に郵送で行った。(2)「若手外科医に対する外科教育の現状に関するアンケート調査」は、40歳未満の外科医と同施設の指導医を対象に、インターネットを介して実施した。

調査結果
調査(1)の回答者は175名であり、そのうち若手外科医の教育に関心がある外科医は131名(75%)、教育に積極的に参加している外科医は112名(64%)であった。若手外科医を教育するメンターの評価方法については、「わからない(51%)」という回答が最も多かった。調査(2)の回答者数は87名で、内訳は若手外科医27名(31%)、メンター60名(69%)であった。若手外科医の現状に対する満足度は、若手外科医と指導医の間に差はなかったが、都市部では37%の若手外科医が現状に不満を持っていたのに対し、地方では0%であった(p<0.05)。

考察
・教育に対する自信の欠如と評価システムの必要性
外科医は自らの教育に自信を持っておらず、教育方法の評価システムが必要であると感じています。特に、メンターの教育方法を評価するシステムが未確立であるため、自信を持って教育に取り組むことが困難であるとされています。

・地方部での外科医療の課題
地方部での外科医の不足と教育の質の向上が重要な課題とされています。地方部で働く若手外科医は、数は少ないが、手術の機会に満足していることが示されました。これは、限られたケースの中で質の高い教育が行われている可能性を示唆しています。

・地方部での働き手の育成
地方部での外科医の育成と維持には、実践的な教育と良好なメンターとの関係が不可欠です。また、地方部での満足度が高いことから、地方部特有の教育アプローチが有効である可能性があります。

結論
外科医は自らの教育に自信を持っていないが、地域の外科医療を担っている若手外科医の満足度は高かった。若手外科医が地域でより効果的な外科教育を受けるためには、外科教育の評価システムの開発が必要である。