医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

卒後医学教育におけるチームワーク:病棟回診とその先へ

Teaming in Graduate Medical Education: Ward Rounds and Beyond
Neela Nataraj, June Tome, and John T. Ratelle ratelle.john@mayo.eduView all authors and affiliations
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https://doi.org/10.1177/23821205231225588

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/23821205231225588

卒後医学教育(GME)におけるチームワークは、研修医、指導医、その他の医療従事者間の不連続性が典型的な臨床学習環境において、しばしば妨げられる。チーミングは、チームメンバーや目標が常に変化するダイナミックな環境におけるチームワークのための概念的アプローチである。チーミングは、プロジェクトマネジメントとチームリーダーシップの原則に基づいて構築されており、GMEにおけるチームワークの課題に対処するための魅力的な戦略を提供するものである。実際、チーミングは現在、医学教育卒後認定審議会の臨床学習環境レビュープログラムの要件となっている。しかし、多くの臨床医教育者や指導者は、チーミングや、それをどのようにGMEプログラムに組み込むかについてよく知らないかもしれない。この記事では、チームワークの崩壊がよく見られる病棟回診を改善するために、チーミングフレームワークをどのように適用できるか、具体的な例を挙げて説明する。この記事の目的は、GME指導者が、プログラムにおける患者ケアと教育を改善するためにチーミングを導入する新しい方法を学ぶ際に、教育し励ますことである。

 

病棟回診がうまくいかない主な要因

  1. 人員の不連続性: 病棟ラウンドでは、医師、看護師、その他の医療スタッフが頻繁に変わります。これにより、チームメンバー間の連携が困難になり、情報の伝達が不完全になりがちです。
  2. 時間の制約: 指導医や研修医は限られた時間の中で多くの患者を診なければならず、短い時間で効率的に情報を共有し、決定を下す必要があります。これは特に、緊急性の高いケアが必要な患者や複雑な症例で課題となります。
  3. 異なる専門知識と経験レベル: チームメンバーはそれぞれ異なるバックグラウンドを持っており、それぞれの視点や提案が有効なコミュニケーションなしには統合されにくいです。
  4. 心理的安全性の欠如: チームメンバーが意見を共有したり、疑問を提起したりすることに対して安心感を持てない場合、重要な情報が共有されず、最適な患者ケアにつながる機会が失われます。
  5. 病棟回診がうまくいくための戦略

  6. 1. 問題の範囲の設定(Scoping)

    • 目標の明確化: チームの目的やゴールを明確に設定し、全員が理解し合えるようにします。目標が不明確だと、チームの努力が分散し、非効率になります。
    • 必要なリソースの特定: 目標達成に必要なスキル、知識、その他のリソースを正確に把握し、不足している部分を事前に補う計画を立てます。

    2. 構造の設定(Structuring)

    • 役割と責任の割り当て: チームメンバーに明確な役割と責任を割り当てることで、各自が何をすべきかを理解し、重複や漏れを防ぎます。
    • コミュニケーションの枠組み: 効率的な情報交換と協力を促進するために、定期的なミーティングや報告のルーチンを設定します。

    3. タスクの分類(Sorting)

    • 優先順位の決定: チームの目標に対して最も影響力のある活動から優先して取り組み、リソースを効率的に配分します。
    • 依存関係の管理: タスク間の依存関係を把握し、適切な順序で作業を進めることで、遅延や停滞を防ぎます。

    注意すべきポイント

    • フレキシビリティの維持: 計画は重要ですが、予期せぬ変更や障害に対応するための柔軟性も保つ必要があります。状況の変化に応じて計画を調整する能力が、チームの成功には不可欠です。
    • 進捗のモニタリングと評価: 定期的にチームの進捗を確認し、必要に応じて計画を見直します。このプロセスでは、フィードバックを活用し、継続的な改善を図ります。
    • 技術とツールの適切な利用: プロジェクト管理ツールやコミュニケーションプラットフォームを活用して、タスクの管理とチーム内のコミュニケーションを効率化します。ただし、ツールの選定や導入は、チームメンバーのスキルやプロジェクトのニーズに合わせて行うことが重要です。

1. 目的の強調

  • 共有された目的の明確化: チームの目標と成功の定義を共有し、全員が同じ方向を向いていることを確認する必要があります。
  • モチベーションの促進: チームの目的に対するコミットメントを高めるために、その重要性と個々の貢献がどのように影響を与えるかを強調します。

2. 心理的安全性の構築

  • 安全なコミュニケーションの場の提供: チームメンバーが自分の意見や懸念を自由に表明できる環境を作ることが重要です。
  • 失敗への寛容性: 学習と成長のために、失敗を受け入れ、それから学ぶ文化を育成します。

3. 失敗の受容

  • 実験とリスクの取り組み: 新しいアイデアやアプローチを試す際には、必ずしも最初から成功するとは限らないことを理解し、失敗から学ぶ機会として捉えます。
  • 反省と改善: 失敗を経験した場合、何がうまくいかなかったのか、どう改善できるかをチームで共有し、次に活かします。

4. 紛争の活用

  • 多様性の価値の認識: チーム内の多様性(文化、専門知識、視点)を認識し、それをチームの強みとして利用します。
  • 建設的な議論の促進: 紛争を避けるのではなく、それを学習と成長の機会として活用する方法を学びます。異なる意見を尊重し、それらを統合する方法を探ります。

注意すべきポイント

  • コミュニケーションの透明性: 目的、期待、フィードバックを含め、全てのコミュニケーションは透明である必要があります。
  • 個々の貢献の認識: チームメンバーの貢献と成果を認識し、適切に評価することで、モチベーションを維持します。
  • 継続的な学習と適応: チームとしての経験から学び、常に改善を目指す柔軟な姿勢を保つことが重要です。