医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

シミュレーションセンターにおける臨床前学生の臨床技能およびコミュニケーション技能の学習経験に関する質的研究

A Qualitative Study on the Experiences of Preclinical Students in Learning Clinical and Communication Skills at a Simulation Centre

Published: 07 September 2023
Chong Pek Sam, Joann Lalita Nathan, Jacintha Anita Aroksamy, Nithia Ramasamy, Norul Hidayah Binti Mamat & Vishna Devi Nadarajah 

link.springer.com

 

はじめに
シミュレーションセンター(SC)とその学習リソースは、現在では医学教育の一環として定着している。SCでは、医学生は提供されたリソースを用いて理論と実践を組み合わせ、知識とスキルの両方を習得する。本研究の目的は、Kolbの経験学習サイクルに基づき、医学生が臨床スキルとコミュニケーションスキルを学ぶためにSCの学習リソースをどのように利用しているかを調査することである。これは、「臨床前医学生の臨床スキルとコミュニケーションスキルの学習をサポートするために、SCリソースはどのように有用であるか」という研究質問に基づいている。本研究の結果は、臨床前段階の医学生のためのSCデザインとリソースのさらなる強化のためのケースを作ることができる。

研究方法
マレーシアの医学部で2019年12月から2020年にかけて、SCでの学習経験を持つ臨床前医学生20名を対象とした質的研究を実施した。Kolbの学習サイクルに基づき、半構造化面接質問を作成した。データはBraun and Clarkeの主題分析の6段階を用いて主題分析した。

結果
臨床前医学生のSCでの経験に基づいて3つの主要なテーマが同定された。それらは、「本物の臨床経験への準備」、「学習とサポートのための複数のリソースへのアクセス」、「学習と改善の機会」であった。

臨床前医学生がSCの学習リソースを活用した経験から、3つの主要なテーマが浮かび上がった:

本物の臨床経験への準備

学生は、SCが現実的な臨床経験を提供し、実際の臨床実習に備えることができると感じた。

・物理的およびマルチメディア教材の利用可能性

 学生はマネキン、消耗品、ビデオなどがコミュニケーションや臨床スキルの学習に有益であると感じた。

・資料の現実性

学生は、標準化患者(SP)を使用することで、より本格的な経験ができることを評価したが、実際の患者を希望する学生もいた。

・患者中心のケア

学生は、共感や非判断といったソフトスキルを教育セッションで応用することを学び、患者をモノではなく人間として扱うことを強調した。

学習とサポートのための複数のリソースへのアクセスのしやすさ:

学生はSC内の様々なリソースに自由にアクセスできることを評価し、学習効果を高めた。

心理的サポート

学生は、ピア、ピアチューター、アカデミックスタッフからのサポートが貴重であると感じた。ピアチューターは年齢が近いため、自分たちのことをよく理解してくれていると感じた。

・自己学習リソース

SCのリソースは自主的な学習に有益であり、学生は自由に練習できることや、指導ビデオを利用できることを高く評価した。

学習と改善の機会:

SCは、学生が繰り返し練習し、リアルタイムでフィードバックを受けることを可能にし、スキルを向上させた。
学生は、グループセッションで教わったスキルを理解するためには、SCでの実践的な練習が不可欠であると感じていた。
また、ファシリテーターや仲間からのリアルタイムのフィードバックは、上達に欠かせないものであった。

 

結論
SCのリソースは、臨床前医学生の臨床およびコミュニケーションスキルの習得を支援する上で重要かつ積極的な役割を担っている。SCのリソースは、患者中心のケアアプローチと自己主導的な学習機会を備えた本格的な臨床経験への準備を整えた。ピア、ピアチューター、学識経験者からの社会的支援は、臨床前学生の学習と向上を支援するSCの重要な発見であり資源である。