医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

臨床指導医は手続き的委託をどのように概念化するか。内視鏡トレーニングにおける業務委託の意思決定に関するインタビューに基づく研究

How Clinical Supervisors Conceptualize Procedural Entrustment: An Interview-Based Study of Entrustment Decision Making in Endoscopic Training
Jeyalingam, Thurarshen MD, MSc1; Brydges, Ryan PhD2; Ginsburg, Shiphra MD, PhD3; McCreath, Graham A.4; Walsh, Catharine M. MD, MEd, PhD5
Author Information
Academic Medicine: April 2022 - Volume 97 - Issue 4 - p 586-592
doi: 10.1097/ACM.0000000000004566

 

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目的 

委託は、コンピテンシーに基づく医学教育(CBME)における評価の中心である。これまで、臨床指導医が委託をどのように概念化しているか、委託を決定する際に考慮する要因を含めて、ほとんど研究されていない。本研究の目的は、消化器内視鏡をテストケースとして、処置の委託に関連する指導医の意思決定の特徴を明らかにすることであった。

方法 

構成主義的グラウンデッド・セオリーの手法を用い、米国とカナダの複数の専門分野(成人および小児消化器科、外科、家庭医学)の内視鏡検査指導医29名にインタビューを行った。2019年4月から11月にかけて実施した半構造化インタビューでは、指導医が手続き委託をどのように概念化し、委託の決定をどのように行い、どのような要因を考慮するのかに焦点を当てた。記録は定比較を用いて分析し、説明的な枠組みとテーマを生成した。

結果 

インタビュー記録の分析から、3つのテーマが明らかになった。(1)委託は様々な程度で発生し、時間の経過とともに変動する (2)委託の決定は手続き的および非手続き的な文脈の中で、あるいは文脈を超えて移行する (3a)持続的な静的要因(例:監督者の能力、組織文化、法的考察)は委託の決定に影響し、また (3b) 変動する動的要因(例:訓練生のスキル、患者の急性度、時間制限)は訓練遭遇ごとに変わる傾向がある。

委託の意思決定シーソー。

静的要因は、監督者の委託に関する基準枠(シーソーの支点の位置で表される)に影響を与えると認識された。次に、重要な動的要因が、このベースライン(シーソーに沿った様々な力の適用によって表される)に組み込まれ、最終的な委託の意思決定に至る。参加者は、内視鏡手術の委託を決定する際に、研修生、指導医、指導医と研修生の関係、患者、手技、環境に関する静的要因と動的要因を様々に総合していることを説明した。静的要因としては、指導医自身の能力、気質、研修生の学習に対する優先順位、施設や専門分野の文化、法的考察などが挙げられる。動的要因としては、研修生の研修レベル、専門的属性、技能、指導医の精神的負担、指導医と研修生の慣れ、手技の複雑さとリスク、チームの構成と質、時間の制約、患者の年齢、急性期、合併症、快適性、病態、安全性がある。

 

結論 

臨床指導医は、処置の委託を決定する過程で、静的な要因を背景に複数の動的要因を総合的に判断し、委託の可否を決定しているようである。委託の決定には時間的な変動があり、評価者は特定の研修生に関する決定を様々な環境に移す可能性がある。指導医がどのような要因で判断に影響を与えると認識しているかを理解することは、指導医の育成や、研修生の指導外診療に関する指導医の判断を集約しようとする能力委員会に役立つ可能性がある。CBMEプログラムを指導する者は、観察された静的要因を最適化することに投資し、これらの基礎的要因が研修生の学習と委託の達成を促進するように調整することが望ましいと思われる。