医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

シミュレーションを用いた臨床実習における学生の成績とカルテ記載の質の相関性について

Correlation of student performance on clerkship with quality of medical chart documentation in a simulation setting
Nobuyasu Komasawa , Fumio Terasaki, Takashi Nakano, Ryo Kawata
Published: March 15, 2021https://doi.org/10.1371/journal.pone.0248569

 

journals.plos.org

 

・どんな研究

カルテの記載はOSCEの代替要素の一つになり得ることを示す研究

 

・先行研究との違い

臨床実習終了後の学生のカルテ作成スキルを包括的に評価できる試験はわずかしかない。さらに,これまでにカルテ記載能力と臨床実習の成績との相関関係を調べた研究はない。

 

・理論・技術のキモ

カルテ記載にあたり、ビデオ視聴をさせたこと

 

・有効性の効果判定

インフォームドコンセント、蘇生、画像診断の3つの場面のビデオ視聴を行い、指示された内容のカルテ記載を行った。そのチェックリストの評価と、各診療科の指導医が行う、Mini-CEXとDOPSに基づいた学生の臨床技能を評価の相関を検討した。

OSCEの構成要素については、インフォームド・コンセントの取得と蘇生がCCの成績と有意な相関を示し(それぞれP<0.001)、画像診断は有意ではないがわずかに正の相関を示した(P = 0.107)。OSCEのすべてのスコアを合わせると、統計的に有意な相関が見られた(P<0.001)。

 

・議論

患者への病歴聴取とカルテの記録は必須のスキルであり,正確な記録と評価により,医学生は臨床実習中に適切な診断と治療に必要な情報を収集できる

COVID-19のようなパンデミック時の総括的な評価には有効であると考えられる。

 

・次に向けて

将来のパフォーマンスに関する有効な尺度との相関を評価すること

CCにおける様々な評価項目の相関性を評価すること

チェックリストの一般性を検証し、複数の評価者が評価を行うこと

電子カルテによる記録のシナリオ

 

 

概要

背景

カルテ作成はクリニカル・クラークシップ(CC)で習得すべき必須のスキルである。しかし、OSCEの構成要素としてのカルテ作成シミュレーションの有用性については、十分に評価されていない。本研究では、いくつかの臨床シミュレーション環境でカルテ作成をOSCEの一部として実施し、CCの成績との相関を評価した。

方法

救急部でのインフォームドコンセントの取得、心肺蘇生、画像診断などの臨床場面を映像・画像で作成し、OSCEの一環として医学生のカルテ記載能力を評価した。評価はオリジナルのチェックリスト(0~10点)を用いて行いました。また、5年生の2019年にCCを実施し、6年生の2020年にPost-CC OSCEを受験した医学生120名を対象に、カルテ記載OSCEのスコアとCCのパフォーマンスの相関を分析した。

結果について

OSCEのコンポーネントのうち、インフォームドコンセントの取得と蘇生のスコアは、CCのパフォーマンスと有意な相関を示した(それぞれP<0.001)。一方、画像診断のスコアは、CCの成績と有意ではないが、わずかに正の相関を示した(P = 0.107)。OSCEの全体的なスコアは、CCのパフォーマンスと有意な相関を示した(P<0.001)。

結論

我々は、シミュレーション環境におけるCCのパフォーマンスとカルテの文書化の質の相関分析を行った。この結果は、OSCEの代替要素としてカルテの作成が可能であることを示唆している。