医学教育つれづれ

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学生を患者として:医療専門職教育におけるピアシミュレーションの系統的レビュー

Students as patients: A systematic review of peer simulation in health care professional education

Narelle Dalwood, Kelly-Ann Bowles, Cylie Williams, Prue Morgan, Shane Pritchard, Felicity Blackstock

First published: 08 January 2020 https://doi.org/10.1111/medu.14058

https://asmepublications.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/medu.14058

ピアシミュレーションとは

ピアシミュレーションとは、学生が患者役を演じるための訓練を受け、同級生のために患者役を担うシミュレーション教育手法である。従来の役割演技とは異なり、構造化された準備、正確な患者描写、リアリズム、役柄の維持などの枠組みが提供される点が特徴である。

研究方法

本系統的レビューでは、2019年5月8日までに7つのデータベースを検索し、医療職学生を対象としたピアシミュレーションに関する研究を収集した。最終的に12研究(参加者総数1,385名)が包含基準を満たした。研究の質はMERSQI(Medical Education Research Study Quality Instrument)およびCASP(Critical Appraisal Skills Programme)を用いて評価された。

主要な知見

コミュニケーション能力への効果

ピアシミュレーションは、コミュニケーション能力の発達に肯定的な影響を与えることが示された。2つのランダム化比較試験のメタアナリシスでは、ピアシミュレーション群と模擬患者群の間で、全体的なコミュニケーション能力に有意差は認められなかった。つまり、ピアシミュレーションはSPを用いた学習と同等の効果があると言える。

患者共感性の発達

特筆すべきは、患者共感性の発達においてピアシミュレーションが優れた効果を示したことである。あるランダム化比較試験では、ピアシミュレーション群がSP群と比較して有意に高い患者共感性の発達を示した。患者役を演じることで、学生は「患者の立場に立つ」体験を通じて、患者の視点や感情をより深く理解できるようになると考えられる。

自己効力感と自信

ピアシミュレーションは、学生のコミュニケーションや実践スキルに対する自己効力感を、SP群と同等に向上させることが示された。理学療法学生は、患者との関係構築、評価、教育提供、臨床実習への準備などの能力において、有意な自己効力感の向上を報告した(P < 0.037)。

学生の認識

学生は、ピアシミュレーションを他の学習形態と同等以上に価値があると認識していた。多くの観察研究で、学生はピアシミュレーションを有用で情報豊富な学習機会、効果的な学習戦略と評価した。また、リアリズムについても肯定的な評価が得られ、ある研究では92.3%の学生が「シナリオは実際の臨床場面に似ている」と回答した。

質的分析からの知見

質的評価から、2つの主要なテーマが抽出された。第一に、ピアシミュレーションは将来の実践に関連するスキルの学習を促進する。第二に、患者役を演じた学生は患者体験への洞察を得る。学生は次のように述べている:

「患者役を演じることは、病態がどのように現れるかを真に理解するための貴重な体験でもある」

「[医療者役の]彼が、私が無責任で妊娠してしまったと思い込むことに、実際に罪悪感と動揺を覚えた。そして私はただ役を演じているだけなのに!実際にその状況にいたら、どれほどの気持ちになるか想像するしかない」

デザイン特性と費用対効果

本レビューでは、ピアシミュレーションの効果的なデザイン特性を明確に特定できなかった。研究間で、役割準備のための訓練、SBE体験のデザイン、個別の患者相互作用の時間(10分から2時間)、総活動時間(30分から36時間)など、多様なアプローチが見られた。

費用に関しては、1997年の1研究のみが財務情報を提供しており、SPプログラムが学生1人あたり25米ドル(総額2,500米ドル)であったのに対し、ピアシミュレーションは学生1人あたり5米ドル(総額500米ドル)であったと報告している。別の研究では、ピアシミュレーションによるコミュニケーション訓練の即時コストは、SPを用いた学習よりも53.6%低いことが示された。

限界と今後の課題

本レビューにはいくつかの限界がある。ピアシミュレーションの定義が文献中で明確でないこと、研究の異質性が高く結果の統合が困難であること、研究の質にばらつきがあること、報告の一貫性に欠けることなどである。多くの研究が独自に開発したアウトカム測定を使用し、心理測定学的特性について言及していないため、結果の信頼性と妥当性が低下している可能性がある。

今後の研究では、役割描写の訓練要件の確立、学生と非学生SPのアウトカム比較、より広範な学習アウトカムに対する影響の調査が必要である。特に、学生が効果的に患者役を演じる能力と、共感性発達への影響については、さらなる検証が求められる。

結論

ピアシミュレーションは、SBE実施における認識されている障壁に対処する、効果的で好評な医療職学生の臨床スキル訓練方法である。ピア教育と同様に、役割を入れ替えることで、学習者に独自の利益をもたらす可能性がある。ピアシミュレーションが学生のコミュニケーション、自信、自己効力感、そして特に患者共感性に与える肯定的な影響は、この学習アプローチのさらなる研究を促進すべきである。

資源が豊富な状況では、SPを用いた学習が望ましい訓練方法かもしれない。しかし、資源が限られている場合や、患者共感性の発達が重要な焦点である場合には、ピアシミュレーションが検討されるべきである。学生に患者役の訓練を行うことで、学習体験を拡大し、広く適用し、頻繁に繰り返すことが可能になる。