From AI Literacy to Leadership: Milestones for Faculty Development in Health Professions Education.
Khamis, N., Ungaretti, T., Tackett, S. et al.
Med.Sci.Educ. (2025). https://doi.org/10.1007/s40670-025-02438-0
背景と目的
AIが医療専門職教育に与える影響
- AIは教育、学習、評価、カリキュラムデザイン、プログラム評価、研究など、医療専門職教育のあらゆる領域を急速に変革している
- AIは教育の向上機会を提供する一方で、倫理的懸念やAIへの過度な依存による学習の妨げなどのリスクも導入している
- 医療専門職教育者には、AI能力開発と教員開発計画を導くための構造化されたフレームワークが不足していた
既存フレームワークの限界
- UNESCO AI Competency Framework for Teachers:一般教育者向けで、医療専門職教育に特化していない
- IACAI(国際AI諮問委員会)の推奨事項:医学教育向けだが、具体的な能力開発段階が不明確
- ACGME Clinician Educator Milestones:医療教育者向けだが、AI能力に特化していない
開発プロセス
研究チームはAIと人間の協働による3段階の構造化されたプロセスを採用:
使用したAIツール:ChatGPT4o、Claude 3.7 Sonnet、Consensus AI
FACETS フレームワークによる報告
研究では医学教育におけるAI革新のためのFACETSフレームワークに従ってAI使用を報告:
- F (Form of AI): 自然言語処理と機械学習(生成AIツール経由)
- A (AI Use Case): HPE教員向けAI能力マイルストーンフレームワークの開発
- C (Context): HPEのすべての段階での教員開発支援
- E (Education Focus): AI能力ベース教育、AI使用報告の透明性領域の導入
- T (Technology): ChatGPT 4.0、Claude 3.7 Sonnet、Consensus AI
- S (SAMR Model): 文献検索の促進、マイルストーン改良、クロスドメイン調整
6つの能力領域
- AI基礎とデータリテラシー - 基本的なAI概念、データリテラシー、HPEでのAIツール統合
- 倫理的AI使用 - バイアス軽減、プライバシー、セキュリティ、人間による監視
- AI支援教育活動 - 教育、学習、カリキュラム設計、研究、評価でのAI統合
- ウェルビーイングとバーンアウト予防のためのAI - 教育者と学習者の健康促進
- AIプラットフォームと成果物の評価・査定 - AIツールの体系的評価方法
- AI使用報告の透明性 - 構造化された文書化、説明責任、コンプライアンス
5つの発達レベル
I. AI基礎とデータリテラシー
レベル1(初心者):
- AI概念、能力、限界、HPEでの役割の基本理解
- データリテラシーとAIモデル訓練の基礎知識
レベル2(上級初心者):
- 学習者への基礎的AI概念の紹介
- 機関承認済みAIツールでの実験支援
- HPEでの応用と限界の強調
レベル3(有能):
- HPEへの責任あるAI統合の主要考慮事項説明
- 機関および規制ガイドラインとの整合性確保
レベル4(熟練):
レベル5(専門家):
II. 倫理的AI使用
レベル1(初心者):
- HPEでのAIの倫理的配慮の認識(バイアス、プライバシー、セキュリティ、公平アクセス)
レベル2(上級初心者):
- 機関政策への準拠と倫理的AIフレームワークの適用
- HPEでの安全で責任あるAI相互作用の確保
- 適切な人間による監視を伴うデータプライバシーとセキュリティの維持
レベル3(有能):
- 学習者と若手教員への責任あるAI採用指導
- バイアス軽減と公平アクセスを含む倫理的AI懸念への対処
レベル4(熟練):
- HPEでの法的、サイバーセキュリティ、倫理基準への準拠確保のための機関的AIガバナンス政策の共同開発
- 複雑な倫理的ジレンマと進化する規制環境への対応
レベル5(専門家):
- 倫理的AIガバナンスフレームワークとコンセンサス声明開発のグローバル活動リーダーシップ
- 多様な文脈での誤情報、ディープフェイク、AI主導の決定バイアスなど新興リスクへの適応
III. 教育活動でのAI支援
レベル1(初心者):
- HPEでのAI応用例の特定(適応学習プラットフォーム、AI支援教育設計ツール、シミュレーション訓練、AI主導評価技術)
レベル2(上級初心者):
- 教育、学習、評価、カリキュラムデザインでのAIツール適用
- 責任あるAI実験での学習者指導
- 認知的過依存のリスク認識
レベル3(有能):
レベル4(熟練):
- HPEでのAI使用に関する機関採用と教員開発のリーダーシップ
- 批判的思考、意思決定、問題解決を向上させながら人間の判断を保持する進化するAI応用の効果的管理
- 機関優先事項との整合
レベル5(専門家):
- AI強化HPEに関するグローバル活動のリーダーシップ
- 人間の推論、多職種協働、倫理的AI実装を優先する政策形成
- AI支援教育、学習、評価、カリキュラムデザインの国際ベストプラクティス開発
IV. ウェルビーイングとバーンアウト予防のためのAI
レベル1(初心者):
- 教育者/学習者ウェルビーイング監視・支援、ワークライフバランス促進、バーンアウト対策のためのAI応用認識(AI支援ワークロード最適化、ストレス追跡、バーンアウト予防ツール)
レベル2(上級初心者):
- 過度の監視とデータ誤用防止の倫理的セーフガードを維持しながら、学習者と教員のウェルビーイング向けAIツール統合機会の特定
レベル3(有能):
- 職場と臨床環境でのバーンアウト要因軽減のためのAI主導戦略実装
- 管理負担軽減、ワークフロー効率性向上、教員と研修生の精神的健康回復力支援
レベル4(熟練):
レベル5(専門家):
- AI主導ウェルビーイング戦略に関するグローバル活動のリーダーシップ
- バーンアウト軽減、持続可能なAI主導ウェルビーイング介入促進、多様な教育環境での教員・学習者精神的健康の複雑な課題への対処を行う倫理的フレームワークと政策の形成
V. AIプラットフォームと成果物の評価・査定
レベル1(初心者):
- HPEでのAI出力とプラットフォーム検証の重要性理解
レベル2(上級初心者):
レベル3(有能):
- HPEでの使用に向けたAIプラットフォーム(チャットボット、コース構築者等)と出力の批判的評価
- 機関政策、体系的HPEアプローチ、教育学的厳密性との整合性確保
レベル4(熟練):
- AIツールと出力の体系的評価のための機関プロトコル開発・実装
- 信頼性、妥当性、健全なHPE原則との整合性確保のための複雑な検証プロセス管理
レベル5(専門家):
VI. AI使用報告の透明性
レベル1(初心者):
- HPEでのAI応用使用時の透明性の重要性認識
レベル2(上級初心者):
- HPEでのAI説明責任のための構造化報告実践の適用開始
- 追跡可能性と倫理的含意の新たな認識
レベル3(有能):
- AI使用の定期的報告
- AI関連決定の透明でアクセス可能な文書化(AI生成コンテンツの出典と検証プロセスを含む)
レベル4(熟練):
- HPEでのAI透明性と説明責任に関する機関活動のリーダーシップ
- 体系的文書化、検証プロセス、機関政策・倫理基準への準拠確保
レベル5(専門家):
- 標準化されたAI報告のグローバルフレームワーク(FACETS等)の促進・推進
- AI強化HPEとヘルスケアでの説明責任、継続的改善、倫理・規制基準への機関準拠確保
考察
主要な達成点
- 実用的で柔軟なフレームワーク:グローバルな教育・医学教育におけるAI推奨事項とACGME臨床教育者マイルストーンの整合
- 多様な役割支援:教育、評価、研究、リーダーシップ役割でのAI能力開発支援
- エントラストメントモデルへの貢献:HPEでのAI使用に向けたエントラストメントモデル開発への潜在的支援
実装に関する重要な考慮事項
非線形的発達パス:
- マイルストーンは5レベルで構造化されているが、教員開発は線形パスに従うことは期待されない
- 教育者は異なるレベルで参入可能
- 大多数にとってレベル3(有能)が教育ニーズを満たす
- レベル4・5はリーダーシップ役割を支援
段階的実装:
将来の研究方向
拡張的フレームワーク開発:
- IACAI医学部・大学院医学教育統合フレームワークの基盤活用
- UNESCO学生向けAI能力フレームワークの活用
- 医学生・研修生向け類似マイルストーンベースフレームワークの開発
- 教育連続体全体での責任ある倫理的AI使用の整合支援
実証研究:
- フレームワークの有効性検証
- 異なる教育環境での適用可能性評価
- 長期的影響の評価
論文の意義と貢献
学術的貢献
- 初の包括的フレームワーク:医療専門職教育における教員AI能力開発のための最初の構造化された包括的フレームワーク
- 理論的統合:既存の確立された教育理論(Dreyfusモデル、ACGMEマイルストーン)とAI能力の統合
- 透明性の標準化:AI使用報告の透明性を独立した能力領域として確立
実践的含意
- 教員開発計画支援:機関が体系的なAI教員開発プログラムを設計するためのガイダンス提供
- 自己評価ツール:教員が自身のAI能力レベルを評価し、発達目標を設定するためのツール
- 政策開発支援:機関レベルでのAI統合政策とガバナンス構造開発の支援
社会的影響
- 患者ケア質向上:より良いAI能力を持つ医療専門職教育者による、最終的な患者ケア質向上への貢献
- 倫理的AI使用促進:医療専門職教育でのAIの責任ある倫理的使用の標準化
- 教育公平性:多様な教育環境でのAI利益への公平なアクセス促進