Experiences of introducing planetary health topics to medical school curricula: A meta-ethnography.
Nash, E., Arfeen, Z., Chan, C., Gallivan, S., & Rashid, A. (2025).
Medical Teacher, 1–9. https://doi.org/10.1080/0142159X.2025.2497898
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/0142159X.2025.2497898?af=R#abstract
研究の背景と目的
この研究は、地球環境の悪化が人間の健康に対する前例のない脅威をもたらしている現状を踏まえ、将来の医師が気候変動や環境問題に対応できるよう、医学教育にプラネタリーヘルス(PH)を導入する取り組みを分析しています。PHは、人類の健康が地球の自然システムと相互依存関係にあるという認識に基づく概念で、気候変動、大気汚染、生物多様性の喪失などが健康に与える影響と、持続可能な医療実践の重要性を包含しています。
研究方法
この研究は、MEDLINE、ERIC、EMBASEの3つのデータベースを体系的に検索し、2010年以降に発表された英語の査読付き学術誌の論文から、医学部カリキュラムへのPH導入に関する質的研究を特定しました。抽出された14の研究は、CASP(質的研究のための批判的評価スキルプログラム)チェックリストで品質評価され、メタ民族誌の手法で分析されました。
分析結果の詳細
1. 既存の規範への挑戦
- 一部の医学教育者や専門家はPHの関連性に懐疑的でしたが、全体としては将来の医師にとって重要であるという認識が強く見られました
- PHに関する専門知識と関心は、上級教員よりも若手教員や学生に集中する傾向があり、これが従来の医学教育階層を平坦化する効果をもたらしていました
- 学生の提唱活動がPHの医学教育への統合を推進する重要な要因となっていました
- 教員の知識不足(エコリテラシーの欠如)がPH教育の障壁として頻繁に指摘され、教員開発の必要性が多くの論文で強調されていました
- 制度的支援、規制機関や学術機関からの影響も、PHを医学カリキュラムに含めるための重要な推進力でした
2. 道徳的側面の認識
- 医師は環境と健康の関係から生じる倫理的問題を考慮する責任があると論じられていました
- 複数の論文が学生の「気候不安」に対する懸念を報告しており、このトピックに関連した学生のメンタルヘルスへの配慮が重要視されていました
- 「グローバルに考え、ローカルに行動する」という倫理観が推進され、地域コミュニティでの具体的な行動が奨励されていました
- 地域社会を支援し、地域レベルで変化を実施することで、学生はPHの学びを直接適用でき、気候不安の緩和にも役立つとされていました
3. 革新と影響を与える熱意
- 9つの論文がPHを倫理やプロフェッショナリズムの領域と比較し、独立したモジュールではなくカリキュラム全体に統合すべきだと提案していました
- PHは医学のあらゆる側面に関連するとされ、医学部の全学年を通じて縦断的にカリキュラムに統合することが最も効果的な方法と考えられていました
- すでに過密なカリキュラムにPHを統合する難しさにもかかわらず、その実現に対する関心とコミットメントは強く見られました
- 講義、反転授業、eラーニング、少人数グループワークなど、様々な革新的アプローチが議論されていました
- PHを評価プロセスに含めることも繰り返しテーマとなっており、カリキュラム統合、評価、地域社会への参加に焦点を当てることで、学生が将来的にPHに関するポジティブな変化をもたらす準備が整うと期待されていました
考察と今後への示唆
- 従来の医学教育階層が逆転し、若手教員や学生がPHについての知識を多く持つという知識シフトが生じています
- PH教育には倫理的正義の概念が中心的に関連しています
- PHの教育的アプローチは、他の新しい科目領域と共通する要素(例:評価に含めることの重要性)もありますが、政治的、道徳的、感情的要素を含む独自の課題も存在します
- AMEEコンセンサス声明やGMCガイダンス(英国)などが医学部のカリキュラム改革に影響を与えています
将来の研究と実践への示唆
- 教員開発 - エンゲージメントと訓練のための教員開発が不可欠
- 機関のコミットメント強化 - 機関の支援、教育・学習アプローチ、評価を含むPHへのコミットメント向上
- 気候不安への対応 - 学生の気候不安を認識し、地域的な直接行動などを通じてこれを緩和する方法を検討
- PHの国際的導入 - 医学部カリキュラムと評価へのPHの国際的な導入が極めて重要