医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

頭頸部フラップ採取手術のビデオ記録におけるGoProとデジタルカメラの比較分析:手術教育のための革新的で効率的な方法

Comparative analysis of GoPro and digital cameras in head and neck flap harvesting surgery video documentation: an innovative and efficient method for surgical education

Xin-Yue Huang, Zhe Shao, Nian-Nian Zhong, Yuan-Hao Wen, Tian-Fu Wu, Bing Liu, Si-Rui Ma & Lin-Lin Bu 

BMC Medical Education volume 24, Article number: 531 (2024)

bmcmededuc.biomedcentral.com

背景
頭頸部再建手術における革新的な手術ビデオ録画技術は、特に手術手技の急増により熟練した外科医が必要とされる中低所得国において、緊急に必要とされている。この需要は、COVID-19の流行によって著しく高まっており、医学教育における手術ビデオの重要な役割を浮き彫りにしている。われわれは、手術室での手術ビデオを低経済コストで録画し、患者ケアの向上に貢献する、簡単で質の高いアプローチを明らかにすることを目的とした。

方法
GoProまたは2種類のデジタルカメラを使用し、6回の頭頸部フラップ採取手術を録画した。録画されたビデオとその後の編集作業からデータを抽出した。参加者の何人かにインタビューを行った。

結果
解像度を4K、フレーム数を30fpsに設定した両カメラとも、満足のいく結果が得られた。GoProは外科医の頭部に装着され、外科医と同期して動くため、追加のアシスタントを必要とせず、手術のユニークな一人称視点を提供する。費用対効果に優れ効率的ではあるが、接写に不可欠なズーム機能が欠けている。対照的に、デジタルカメラは、時折位置を変える必要があるものの、その優れた画質とズーム機能により、より細かい解剖学的詳細を捉えることができる。

カメラ性能の比較:

GoPro: 頭に装着することで安定した映像を提供し、助手が不要。コスト効果が高く、効率的。ただし、ズーム機能が欠けており、近接映像の撮影には不向き。
デジタルカメラ: ズーム機能により詳細な解剖学的映像を提供。助手による再配置が必要だが、高品質の映像を撮影可能。

教育効果:

GoProとデジタルカメラの併用: 両者の利点を組み合わせることで、教育効果が向上する可能性がある。
アンケート結果: 学生はどちらのカメラシステムからも教育的利益を得られると回答。

技術的な問題と解決策:

光の過剰露出: GoProの自動露出設定が原因で手術部位が過度に明るくなる問題があり、露出を固定することで対処。

焦点の安定性: デジタルカメラの自動サーボフォーカスが不安定だったため、手動フォーカスで固定することで解決。

映像の質:

鮮明度の違い: デジタルカメラは詳細な映像を提供し、GoProは広い視野をカバー。

 

考察

手術教育への応用:

遠隔教育: リアルタイムでのビデオストリーミングを通じて、遠隔地からの教育やコンサルティングが可能。
手技の可視化: 映像を通じて手技の詳細を学ぶことができ、教育効果が高い。

技術の選択:

GoPro: 個人用録画に適しており、操作が容易でコストも低い。
デジタルカメラ: 高品質の映像を提供するが、助手が必要であり、手術チームの集中を妨げる可能性がある。

統合アプローチ:

両システムの統合: GoProとデジタルカメラの併用が、包括的かつ高品質な映像を提供するために有効である。

研究の限界:

サンプルサイズの制約: シングルセンターでの研究であり、サンプルサイズが小さいため、結果の一般化には限界がある。
将来の研究: 多中心研究や他の手術分野への応用、コスト効果の分析が求められる。

結論
これら2つのシステムを融合させることで、手術ビデオ撮影の分野を大きく前進させることができる。この技術革新は、テクニカル・コミュニケーションを強化し、ビデオベースの医学教育を強化し、世界的な専門外科医不足に対処する可能性がある。