医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

日本の医学部における問題解決型学習に対する学生の認識:探索的逐次混合法による検討

Students’ perception of problem-based learning at a Japanese medical school: an exploratory sequential mixed method
Htain Lin-Aung1, Daisuke Masumoto1, Zayar Linn1, Yusuke Kobayakawa2, Satoshi Okamura1, Kosuke Kurihara1, Kunimasa Morio1, Yasura Tashiro1, Hiroyuki Sakurai1 and Hiroki Hori1

Int J Med Educ. 2022; 13:322-334; doi: 10.5116/ijme.6399.dee1

https://www.ijme.net/archive/13/students-perception-of-pbl/?ref=linkout

目的

本研究は、日本の医学生における PBL の認知度を評価することを目的とした。

方法

学生の視点から見たPBLの学習効果や課題を探索的逐次混合法により評価した。27名の学生と研修医を対象に、フォーカス・グループ・ディスカッションとテーマ別分析を行った。その後、アンケート調査を実施した。258名の学生のうち、119名(46.1%)から回答を得た。24の質問から得られた結果を残差分析で分析した。

結果

テーマ分析では、4つのディスカッショントピックから14のテーマが抽出された。フォーカス・グループ・ディスカッションの参加者は、PBLプログラムを講義よりも優れた学習方法であると評価していた。しかし、不慣れな仲間との積極的な議論や共同作業への消極性など、社会的相互作用の課題に関するキーワードも見られた。アンケート調査では、社会的相互作用のカテゴリーに属する6つの質問のうち5つの質問で肯定的な回答が有意に低い調整標準残差(ASR)を示した。コミュニケーション能力の向上(ASR = -3.303, n = 118, p < .001), グループ討論での責任感の向上(ASR = -2.078, n = 119, p < .001)。 結論として、PBLは、コミュニケーション能力の向上(ASR = -3.303, n = 119, p = .038)、グループ討議における責任感の強化(ASR = -3.006, n = 119, p = .003)、患者との共感(ASR = -2.449, n = 119, p = .014)および臨床実習の社会面の理解(ASR = -5.790, n = 119, p < .001) と、社会的な側面から評価されていることが明らかになった。

学生は、PBLが効果的な学習戦略であると評価した。自己学習能力、臨床推論能力に関する質問では、肯定的な回答が有意に高かった。しかし、批判的思考能力に関する質問では、肯定的な回答は有意に高くならなかった。本研究では、PBL体験の臨床実習への適用について、学生の間で賛否両論があることが示された。PBLチュートリアルは、自分の勉強の仕方を改善するために有益であった」という質問に対しては、反対する学生の方がかなり多かった。最も興味深いのは、PBLにおける社会的相互作用が肯定的に捉えられていないことである。PBLによって、コミュニケーションスキル、グループ討論における責任と説明責任、ソーシャルネットワークが向上したと同意した学生は、有意に少なかった。さらに、定性的調査では、一部の学生がグループワークに対して消極的な態度をとり、伝統的な学習スタイルを好んでいることが示された。

結論

PBLは日本の医学部臨床前カリキュラムにおいて効果的な学習戦略として認識されていた。しかし、一部の医学生は社会的相互作用に問題があり、グループワークに積極的に参加することが困難であった。さらに、受動的な学習アプローチで学習効果が低くても、講義を好む学生もいた。学生はPBLに概ね満足していたが、定性的調査では、チュータリング、ケースシナリオ、評価の質に不満があることがわかった。