医学教育つれづれ

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医学教育におけるセミナー教授法と講義型学習の効果.無作為化比較試験のメタ分析

Effects of seminar teaching method versus lecture-based learning in medical education: A meta-analysis of randomized controlled trials
Huo Lin Zeng , Dong Xu Chen , Qian Li & Xing Yue Wang
Published online: 14 Aug 2020
Download citation https://doi.org/10.1080/0142159X.2020.1805100

 

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/0142159X.2020.1805100?af=R

 

目的

本レビューの目的は、医学生の教育におけるセミナー教授法 対 講義型学習(LBL: lecture-based learning)の効果をメタ分析によって探ることである。

セミナー教授法とは、教師の指導の下、学生が小グループに分かれて与えられた問題や課題について議論する教授法である。ゼミ教授法の基本的な目的は、学生が実践的な問題について議論し、さらには直面することで学習の目的を達成できるようにすることである

セミナー教授法のプロセスでは、学生が主体となって授業内容の下見を行い、授業前に課せられた質問に対するエビデンスや回答を見つけ、授業中に仲間と知識ポイントを共有する。教師と学生、あるいは学生間の多方向の相互作用を強調する。コースの下見や準備に従事することは、知識収集のための学生の能力を向上させるのに役立ち、アクティブラーニングは、下見やコースの準備に従事している間に改善されます。学生は、議論やコミュニケーションの中で、聞く、科学的な質問をする、根拠を持って議論する、協力するといった質の向上を図ることができ、知識点の完全習得と学習成績の向上という目的を達成するのに役立つ。

しかし、セミナー教授法には、学習負担が大きくなり、空き時間を取りすぎてしまうなどのデメリットもある。セミナー教授法は医学教育に広く用いられているが、システマティックレビューやメタアナリシスのような質の高いエビデンスはなく、セミナー教授法の方がLBLよりも優れていることを示唆するものはない。

 

方法

PubMed, Cochrane Library, EMBASE, MEDLINE, China National Knowledge Infrastructure, WanFang Data, China Science Periodical Database, Chinese BioMedicalに掲載されているデータや情報を、開始から2020年1月までの間に検索し、検討した。また,医学教育におけるセミナー教授法とLBLの効果を検討した無作為化比較試験(RCT)を対象とした。

 

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結果

合計16のRCTが含まれ,合計サンプルサイズは1122名の医学生であった.セミナー教授法は、知識スコア(SMD = 1.38、95%CI 0.92~1.84、p < 0.001)とスキルスコア(SMD = 1.46、95%CI 1.00~1.91、p < 0.001)を有意に改善し、セミナー教授法は、アクティブラーニング能力、学習興味、科学的イノベーション、自立思考能力、表現力・コミュニケーション能力、臨床思考能力、チームワーク、教師と学生の相互作用、教室の雰囲気などの教授効果を有意に改善した。

 

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結論

本研究では、セミナー教授法がLBLと比較して、より効果的な医学教育の方法であることを示した。その結果,セミナー教授法は知識点数や技能点数の向上だけでなく,能動的な学習能力,学生の協調性,教室の雰囲気,教師と学生の相互作用の向上にも効果があった.しかし、セミナー教授法は様々な教育面で大きな利点があるにもかかわらず、基本的な概念を教える点ではLBLに比べて目立った改善は見られなかった。セミナー教授法は、実践科目の知識スコアを有意に向上させたが、理論科目には実質的な効果は見られなかった。

 

ポイント

メタ解析の結果、医学生を対象とした講義型学習よりもセミナー教授法の方が得点向上に効果的であることが明らかになった。

セミナー教授法で教えた学生と講義型学習で教えた学生では、基本的な概念の教え方に違いはないようである。

実践科目におけるセミナー教授法の効果は、理論科目よりも優れていた。