医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

日本の研修医を対象としたプロフェッショナリズム・MEX:パイロット・スタディ

Professionalism Mini-Evaluation Exercise for medical residents in Japan: a pilot study
Yusuke Tsugawa, Yasuharu Tokuda, Sadayoshi Ohbu, Tomoya Okubo, Richard Cruess, Sylvia Cruess, Sachiko Ohde, Sadamu Okada, Noriaki Hayashida, Tsuguya Fukui,
First published: 16 September 2009 https://doi.org/10.1111/j.1365-2923.2009.03437.xCitations: 28

 

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/j.1365-2923.2009.03437.x

 

背景

研修医の医療専門性を評価することは非常に重要である。Professionalism Mini-Evaluation Exercise(P-MEX)は,カナダで開発され,信頼性テストを経て検証されたプロフェッショナリズムを評価するツールである。本研究に先立ち,P-MEXの日本語版は検証されていなかった。

方法

我々は、P-MEXを日本で使用できるように修正し、日本の教育病院の医療研修医を対象にテストを行った。研修医1人に対して8人の評価者がP-MEXフォームを記入した。23名のシニアレジデントに対して184枚のP-MEXフォームを作成した。P-MEXの構成概念の妥当性は,構造方程式モデリングによる確認的因子分析によって分析された。P-MEXの信頼性は、一般性理論と意思決定研究を用いて検証した。評価を実施し,住民にフィードバックを行った後,評価に対する住民の認識についてアンケート調査を行った。

結果

結果は,内容的妥当性と構成的妥当性を示した。確認的因子分析の結果,因子負荷量は0.58から0.96であり,1項目(P12:患者や同僚と適切な境界を保つ)を除いて,良好な構成概念の妥当性が示された。構造方程式モデルでは,日本で開発された新しい項目をP-MEXに加えることで,十分な因子妥当性が得られることが示された。決定論的研究では、カナダで検証された8つのフォームよりもわずかに多い10の評価で十分に狭い信頼区間が得られた。ほとんどの住民は,評価項目が妥当で適切であり,評価結果が自己評価と一致し,評価によってモチベーションが高まったと述べた。

結論

今回の研究では,日本人研修医のプロフェッショナリズムを評価するためのP-MEXの十分な信頼性と妥当性が示された。さらに,日本で開発された新項目を加えることで,十分な因子妥当性が得られた。

 

P-MEXのオリジナル項目

医師と患者の関係スキル
  P1 患者の話を積極的に聞いた
  P2 患者を一人の人間として関心を示した
  P3 患者への敬意を示した
  P4 患者のニーズを認識し、それに応える
  P5 患者のニーズを満たすために不都合を受け入れた
  P6 患者のケアの継続性を確保した
  P7 患者またはその家族を代表して主張した
 P12 患者および同僚との適切な境界線を維持した
省察
  P8 自らの限界を認識している
  P9 誤りや不作為を認める
 P10 フィードバックを求めた
 P11 フィードバックを受け入れる
 P13 困難な状況においても冷静さを保つことができた
タイムマネジメントスキル
 P15 時間を守る
 P16 信頼できる方法でタスクを完了した
 P18 患者または同僚に対応できた
専門家間の関係構築スキル
 P12 患者や同僚との適切な境界線を守る
 P14 適切な身だしなみを保つ
 P17 自分の知識やスキルの不足に対処した
 P19 同僚に対する敬意を示した
 P20 軽蔑的な言葉を避ける
 P21 必要に応じて同僚を支援した
 P22 患者の守秘義務を守る
 P23 医療資源を適切に利用した
 P24 システムの規則および手順を尊重した

 

聖路加国際病院で開発された新項目(日本)

J1 問題解決のために適切な分析と意思決定のスキルを使用した
J2 上司への報告、連絡、相談を行った
J3 リーダーシップを発揮した
J4 強い責任感を持っていた
J5 学習意欲があった
J6 意見の違いを尊重した
J7 臨床上の問題を解決するために文献(エビデンス)を利用した
J8 必要に応じて専門家に適切に相談していた
J9 他者との連携がスムーズだった
J10 優れた医学的知識と技術を持っていた
J11 看護師や医療従事者との協調性があった
J12 患者管理能力が高かった
J13 医学的に患者をよく管理していた
J14 インフォームド・コンセントを適切に得ていた
J15 部下のミスに対する責任を負う姿勢があった
J16 危機管理能力があった